リニアトロニック ロックアップ機構と燃費効率のメリット

スバルのリニアトロニックCVTに搭載されているロックアップ機構は、燃費向上と走行性能を両立させる重要な技術です。トルクコンバーターを直結することでエンジンのパワーを効率的に伝達し、ダイレクトな運転感覚を実現します。この独自の仕組みは、どのような場面で活躍しているのでしょうか?

リニアトロニック ロックアップ

この記事のポイント
⚙️
ロックアップ機構の基本

トルクコンバーターを直結してエンジンパワーを効率的に伝達し、燃費を大幅改善する技術

🚗
リニアトロニックの特徴

スバル独自のチェーン式CVTで、幅広いロックアップ領域と滑らかな変速を実現

💡
運転への影響

約40km/h以上で作動し、MTのようなダイレクトな走行感覚と低燃費を両立

リニアトロニック ロックアップ機構の仕組み

リニアトロニックのロックアップ機構は、トルクコンバーター内部に設置されたロックアップクラッチによって、エンジンとトランスミッションを機械的に直結する装置です。通常、CVTではトルクコンバーターを介してATF(オートマチックトランスミッションフルード)によって動力が伝達されますが、この方式では油圧を介した伝達ロスが発生します。
参考)【今さら聞けない】ATのロックアップ機構って何?

ロックアップ作動時には、油圧制御によってロックアップピストンがトルクコンバーターのカバーに押し付けられ、ポンプインペラとタービンランナが一体化して回転します。これにより、エンジンからの動力を100%トランスミッションへ伝えることが可能になります。
参考)令和6年3月実施2級ガソリン問題18:前進4段のロックアップ…

ATのロックアップ機構の仕組みについて詳しく解説
スバルのリニアトロニックは、ロックアップしたままCVTで変速できる点が大きな強みとなっており、加速・減速時でもロックアップ状態を維持した制御が多く実施されています。これは、チェーン式CVTの特性を活かした高度な制御技術の結果です。
参考)https://ameblo.jp/mitsunori-maeda/entry-12792107884.html

リニアトロニック ロックアップのメリットと燃費効果

ロックアップ機構の最大のメリットは、燃費の向上と動力伝達効率の改善です。トルクコンバーターを介さずエンジンとトランスミッションを直結することで、油圧による伝達ロスを大幅に削減できます。一般的な4速ATでは約40km/h以上でロックアップが作動しますが、リニアトロニックでは幅広い速度域でロックアップを実施します。
参考)燃費改善の立役者!ロックアップ機構の仕組み - クルマの大辞…

燃費面では以下のような効果があります。

  • 高速巡航時の伝達効率向上により、燃費が10~15%改善
  • エンジンの最高効率ポイントを活かした運転が可能
  • アイドリング時の無駄な動力損失を削減

また、ロックアップによりアクセル操作に対するレスポンスが向上し、マニュアル車のようなダイレクトな運転感覚を楽しめます。エンジン回転数と車速が同期するため、ドライバーは車の状態を直感的に把握しやすくなります。
参考)【今さら聞けない】ATのロックアップ機構って何?(WEB C…

リニアトロニック ロックアップクラッチの構造

ロックアップクラッチは、トルクコンバーター内部のタービンランナのハブにスプライン結合されたロックアップピストンで構成されています。このピストンがカバー側に油圧で押し付けられることで、エンジン側の回転を直接トランスミッション側に伝達します。
参考)令和7年10月実施2級ガソリン問題19:前進4段のロックアッ…

重要な構成部品として、ダンパースプリングがロックアップピストンに組み込まれています。このダンパースプリングは、エンジンからのトルク変動を吸収・緩和する役割を持ち、ロックアップ作動時の振動や騒音を抑制します。
参考)ロックアップダンパーとは何? わかりやすく解説 Weblio…

リニアトロニックでは、ロックアップソレノイドバルブがONになると、ロックアップコントロールバルブが作動し、トルクコンバーター内のA室の油圧がオイルパンへ流れます。同時にB室のトルクコンバーター供給圧によりロックアップピストンがカバーに押し付けられ、締結が完了します。​
ロックアップ機構の詳細な構造図と解説
スバル独自の制御技術により、スリップロックアップ制御も実装されており、約30km/h程度の低速域でもロックアップ作動が可能になっています。​

リニアトロニック ロックアップの作動条件とタイミング

ロックアップクラッチが作動するには、複数の条件を満たす必要があります。一般的なロックアップ作動条件は以下の通りです:
参考)https://www.eobdcode.com/ja/%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%83%AB/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AE%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF%E3%82%92%E7%B0%A1%E5%8D%98%E3%81%AB%E8%AA%AC%E6%98%8E/

主要な作動条件

スバルのリニアトロニックでは、アイサイトによる定速走行時に、加速・減速でもロックアップしたまま制御することが多くなっています。これは、アイサイトが緩やかな制御を行うことで、ロックアップを維持した状態での速度調整が可能になるためです。​
一方、パドルシフトで下段ギアに入れた直後は、一旦ロックアップが解除され、エンジン回転が上昇します。その後、速度が安定すると再びロックアップされ、速度とエンジン回転が同期します。​
冬季など低温時には、CVTフルードが適温に達するまでロックアップが作動せず、エンジンが空ぶかし状態でズルズルと直結しない感覚が続きます。​

リニアトロニック特有のロックアップ制御の優位性

スバルのリニアトロニックが他のCVTと異なる最大の特徴は、ロックアップしたまま変速できる制御技術にあります。通常のCVTでは加減速時にロックアップを解除する必要がありますが、リニアトロニックではロックアップ状態を維持したまま滑らかに変速比を変更できます。​
この技術により、以下のような優位性が生まれます。
📊 走行性能での優位性

項目 リニアトロニック 一般的なCVT
ロックアップ領域 広範囲(低速~高速) 限定的(主に高速域)​
変速時の効率 ロックアップ維持可能​ 解除が必要
燃費効率

高効率(MT並み)
参考)「速さ」だけじゃなくて「燃費」でも「MT車」が劣る時代に! …

やや低下
運転フィーリング ダイレクト感が強い​ やや曖昧

スバルは1987年のジャスティECVTでCVTを世界初実用化して以来、30年以上の開発期間を経てリニアトロニックを完成させました。金属チェーンの採用により、従来の金属ベルト式より滑りによる損失を抑え、スバルの高出力水平対向エンジンから350Nm(約35kgm)もの動力を効率よく伝達できます。
参考)スバルのリニアトロニックCVT|構造・仕組みを説明。欠点や評…

スバルのリニアトロニックCVTの構造と仕組みの詳細解説
特に、スポーツリニアトロニックではCVTらしさを感じさせない制御が実現されており、ロックアップ制御の精密さがその要因となっています。オイルプレッシャーユニットがプーリーの挟み込み油圧とロックアップ油圧を統括的に管理し、最適な制御を実現しています。
参考)スポーツリニアトロニックの深部に迫る : 中津スバルの濃いス…

リニアトロニック ロックアップの故障と対策

ロックアップ機構の故障は、CVT全体のトラブルにつながる重要な問題です。主な故障症状として、セレクトショックの増大、警告灯の点灯、フェールセーフモードへの移行などが挙げられます。
参考)ニッサン セレナ(C25)CVT故障 - 増高自動車工業有限…

🔧 主な故障原因

故障診断では、診断機を使用してロックアップソレノイドの動作状態を確認します。正常な場合、指示信号に対してリニアにソレノイドが反応しますが、CVTフルードが劣化すると適切な応答が得られません。​
修理にはトルクコンバーターごとの交換が必要となり、トランスミッションをエンジンから分離する大掛かりな作業が必要です。工賃も含めると高額になるため、定期的なCVTフルード交換による予防が重要です。
参考)https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000608487/SortID=23284338/

CVTフルード交換時には、交換後に診断機でCVTフルードの劣化度をリセットする必要があります。これにより、ECUが新油の状態を正しく認識し、適切なロックアップ制御が可能になります。​
油温が低い時だけで多少のショックがある程度であれば、そのまま乗り続けた方が賢明という整備士の意見もあります。ロックアップクラッチの制御が正常になると、シャープな変速フィーリングに改善されます。​