ヤマハ マジェスタは、1995年の初代登場から2014年の生産終了まで、約20年間にわたってビッグスクーター市場をリードしてきた看板モデルです。中古市場では複数の世代が流通しており、各世代ごとに異なるエンジンスペック、装備、走行性能を備えています。
2代目(2000~2006年)はビッグスクーターブームの中心モデルとして人気が高く、中古流通量が豊富です。軽快な走りと大容量のメットインスペースが特徴で、街乗りから通勤まで幅広い用途に対応しています。このモデルはカスタムパーツの種類も豊富で、オーナーのニーズに応じた個性的なカスタムが施されたモデルも多く見られます。
3代目(2007~2011年)は、強化された排ガス規制への対応のためにFI化(フューエルインジェクション化)され、新設計エンジンを搭載した世代です。メッキシリンダーやアルミ鍛造ピストンなど、エンジン内部の部品を強化することで耐久性と信頼性を向上させています。
最終型の4代目(2012~2014年)は、電子制御トランスミッションのYCC-AT(ヤマハ チップ コントロール オートマティック トランスミッション)を搭載したビッグスクーターの完成形です。このモデルはモードセレクター機能により、ノーマルモード、エコモード、アシストモード(スポーティー走行用)の3つの走行モードから選択でき、走行状況に応じて最適なエンジン制御を実現しています。また、フロントライトにプロジェクター式を採用し、より洗練されたフロントマスクが特徴です。
各世代を比較する際は、単にスペックだけでなく、自分の乗り方に合った装備や機能が搭載されているかを確認することが重要です。日常的に大荷物を運ぶ必要がある場合は積載容量が大きい世代を、スポーティーな走行を重視する場合は最新世代の制御技術を活用することをお勧めします。
中古マジェスティを選ぶ際に最も重要な判断材料となるのが、エンジンスペックです。ビッグスクーターの場合、250ccクラスでの最高出力は通常18~22PS程度の範囲に収まっていますが、マジェスティの場合は世代によってやや異なります。
3代目以前のマジェスティの最高出力は20PS前後でしたが、4代目(最終型)では19PSとやや低下しました。これは単なるスペック低下ではなく、ヤマハが「街中での走行性能を優先し、低中速域での扱いやすさを重視した」という設計思想に基づいています。4代目モデルはエンジンのボア×ストロークが68×68.6mmというロングストロークエンジンの設計により、低中速域での力強いトルク特性を実現しており、実走行では十分な加速感が得られます。
最大トルク値も確認が必要です。マジェスティの場合、最大トルクは2.0kgm~2.2kgm程度が標準的です。タンデムライド(二人乗り)や大量の積載を予定している場合は、最大トルク2.0kgm以上のモデルを選ぶことが望ましいです。低中速域でのトルク特性が優れているモデルは、信号待ちからの加速や、荷物を積んだ状態での走行でも余裕を感じることができます。
燃費性能も年間の維持費に大きく影響するため、確認が必要です。マジェスティの燃費は、2代目~3代目モデルで概ね38~39km/Lの実績があり、これは同クラスのビッグスクーターの中でも平均的な水準です。4代目では同等かやや改善された燃費が実現されているため、ガソリン代を抑えたい場合の参考になります。
実際の購入を検討する際は、カタログスペックだけでなく、実オーナーの評価やレビュー情報も参考にすることで、より正確な走行性能判断ができます。
ビッグスクーターを選ぶ理由の一つが、標準装備されている大容量のラゲッジスペースです。マジェスティは、このラゲッジ容量において、同クラスの競合他車を上回る設計が施されています。
2代目~3代目モデルでは、シート下のラゲッジスペースに十分な容量が確保されており、フルフェイスヘルメット2個分の積載が可能です。3代目ではメットインスペースの容量がさらに最適化され、日常の買い物や仕事用の荷物を快適に運べる設計になっています。
最終型の4代目マジェスティでは、最大の特長として60Lの大容量ラゲッジスペースが確保されています。さらに革新的な「オープンシート」機構が採用され、フロントシートとリアシートがそれぞれ分割して開閉できるようになっています。この設計により、シート下のスペースにアクセスしやすく、日常使いで非常に便利です。フルフェイスヘルメット2個、グローブ、ワイヤーロック、レインギアなど、ライダーが必要とする用品をまとめて収納できる容量が確保されています。
さらに、4代目では標準装備としてフロントポケットに12VDCジャックが搭載されており、スマートフォンやカーナビなどの電装品を充電しながら使用できます。これはツーリングや長距離通勤をする際に非常に便利な機能です。
積載性を重視する場合は、4代目モデルの優れたユーティリティに注目する価値があります。
中古マジェスティの購入を検討する際、多くのユーザーが年間維持費を計算します。250ccバイクの年間維持費は一般的に8~13万円程度とされていますが、マジェスティの場合は、いくつかの節約ポイントがあります。
まず、軽自動車税(バイク税)について、250cc以下のバイクは年間3,600円という固定税率が適用されます。これは軽自動車同様の税制優遇措置であり、他の排気量より優位にあります。
ガソリン代は運転方法で大きく変わります。マジェスティの場合、定地走行テスト値で38.0km/Lが公表されていますが、実走行では登坂路やストップアンドゴーの多い市街地走行で燃費が低下します。一方、高速道路での定速走行では、より高い燃費が実現される可能性があります。月間500km程度の通勤利用であれば、月間ガソリン代は5,000~7,000円で収まり、年間でも6~8万円程度に抑えられます。
自賠責保険は契約期間によって料金が変わり、1年契約より3年契約の方が月額単価が安くなります。3年分をまとめて加入することで、若干の節約効果が期待できます。
さらに、中古マジェスティは新車との価格差が大きいため、減価償却がほぼ完了しており、購入後の価値下落が緩やかです。これは乗り換え時の売却価格にも反映されやすく、実質的な乗車費用を低く抑える効果があります。
意外と知られていないテクニックとして、バイク用品店で定期的に実施されるメンテナンスキャンペーンやシーズンセール時に消耗品を購入しておくことで、日常的なメンテナンス費用を削減できます。
最終型4代目マジェスティは、ビッグスクーター史上の完成形として評価されており、走行性能と乗り心地の両立が実現されています。
高速走行時の安定性は特に優秀で、直進安定性が高く、横風に対する抵抗が少ないという特徴があります。小型ながら効果的なスクリーンが装備されており、高速走行時の風圧をライダーの頭部から下へ逃がし、体の前での風の巻き込みを防止するデザインになっています。これにより、長距離走行時の疲労が軽減されます。
ワインディング走行時の性能も注目に値します。電子制御変速システムYCC-ATの「アシストモード」に切り替えることで、エンジンのパワーバンドを有効に活用した加速が実現されます。一見地味なスペック(19PS)の4代目マジェスティでも、コーナー出口での加速力は十分であり、多くのライダーが「スペック以上の走行性能」と評価しています。
足回りの設計は、乗り心地を重視した調整がなされています。フロントサスペンションは正立フォークにより、しっとりとした接地感が得られ、リヤサスペンションのモノクロスユニットは段差通過時の突き上げ感を最小限に抑えています。ライダーに伝わる振動の「角」が丸められたようなマイルドな乗り心地が特徴です。
これらの特性は、中古車市場での人気の理由であり、購入後の満足度にも直結する重要な要素です。試乗する機会があれば、これらの点を実際に確認することで、中古購入の判断がより確実になります。
中古マジェスティの選択は、ビッグスクーターの完成形を手頃な価格で手に入れる機会です。世代別の特徴を理解し、自分のライフスタイルに合ったモデルを選ぶことで、長期間にわたって快適なバイクライフが実現できるでしょう。
参考:ビッグスクーター選びの基準となるエンジンスペック比較
250ccのビッグスクーターを中古で購入するときの選び方|グーバイク
参考:4代目マジェスティの詳細走行レビューと実装機能解説
ビッグスクーターの完成形!最終型の4代目マジェスティをインプレ|モトメガネ