車の航続可能距離とは、一度の燃料補給や充電で走行できる最大距離のことです。この指標は車選びにおいて極めて重要な要素となっており、特に電気自動車の普及に伴い注目度が高まっています。
航続可能距離は車種によって大きく異なり、電気自動車では平均200km~500km程度、ガソリン車では600km~800km程度が一般的です。しかし、最新の技術革新により、これらの数値は年々向上しており、一部の車種では1,000kmを超える航続距離を実現しています。
興味深いことに、「航続距離」という用語自体が議論の対象となっています。本来は船舶や航空機に使われる用語でしたが、電気自動車の普及とともに自動車業界でも一般的に使用されるようになりました。国土交通省では電気自動車について「一充電走行距離」という正式な用語を使用していますが、メディアや一般消費者には「航続距離」の方が浸透しています。
車の航続可能距離は複数の要因によって決定されます。最も重要な要因はバッテリー容量(電気自動車の場合)と燃料タンク容量(ガソリン車の場合)です。
電気自動車においては、バッテリー容量が航続距離に直接影響します。例えば、日産リーフには40kWhと60kWhの2つのバッテリー容量があり、航続距離はそれぞれ322kmと450kmとなっています。しかし、バッテリー容量が大きくなるほど車両価格も高くなるため、約120万円の価格差が生じています。
ガソリン車やハイブリッド車では、燃料タンク容量と燃費性能の組み合わせが航続距離を決定します。トヨタ ハリアー ハイブリッドは55Lの燃料タンクと22.3km/Lの燃費により、1,226.5kmという驚異的な航続距離を実現しています。
その他の影響因子として、以下が挙げられます。
多くのドライバーが経験するのが、カタログに記載された航続距離と実際の走行可能距離の差です。この差は特に電気自動車で顕著に現れます。
実際の調査によると、電気自動車の実際の航続距離はカタログ値の約6割程度になることが多いとされています。例えば、フィアット500eの場合、カタログスペックから計算される航続距離は約384kmですが、実際のメーター表示では約230km程度となることがあります。
この差が生じる理由は以下の通りです。
重要なのは、この差を理解した上で車選びを行うことです。実際の使用では、カタログ値の7~8割程度を目安として考えることが現実的です。
車の航続可能距離は車種選択において重要な判断材料となります。以下に主要な車種の航続距離を比較してみましょう。
電気自動車の航続距離比較表
車種 | 航続距離(WLTCモード) | バッテリー容量 |
---|---|---|
レクサス UX300e | 512km | 72.8kWh |
スバル ソルテラ | 487~567km | 71.4kWh |
日産 アリア | 470km | 66kWh |
日産 リーフe+ | 450km | 60kWh |
日産 リーフ | 322km | 40kWh |
ホンダ Honda e | 259km | 35.5kWh |
日産 サクラ | 180km | 20kWh |
ハイブリッド車の航続距離比較
車種選択の際は、以下の点を考慮することが重要です。
日常使用パターンの分析
予算との兼ね合い
航続距離が長い車種ほど高価になる傾向があります。40kWh以上のバッテリーを搭載した電気自動車であれば、日常使用において「電欠」の心配をあまりせずに済むとされています。
自動車業界では航続距離の向上に向けた技術革新が続いています。特に注目すべきはリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池の普及です。この技術により、従来よりも安価で大容量のバッテリーを搭載した電気自動車の登場が期待されています。
次世代バッテリー技術の展望
商用車分野での進展
2023年度内にスズキ、ダイハツ、トヨタの3社が共同開発した電気商用軽バン(航続距離200km程度)が発売され、2024年春にはホンダからも同様の車種が発売される予定です。これにより、商用車分野でも電気自動車の選択肢が大幅に拡大します。
充電インフラの整備
航続距離の向上と並行して、充電インフラの整備も進んでいます。急速充電器の普及により、長距離移動時の不安も徐々に解消されつつあります。
自動運転技術との融合
将来的には、自動運転技術と組み合わせることで、最適なルート選択や効率的な運転により、実際の航続距離をさらに向上させることが期待されています。
これらの技術革新により、電気自動車の航続距離は今後さらに向上し、ガソリン車との差も縮まっていくと予想されます。消費者にとっては、より多様な選択肢の中から自分のライフスタイルに最適な車を選べる時代が到来しつつあります。
車の航続可能距離は、単なる数値以上の意味を持ちます。それは私たちの移動の自由度を決定し、環境への配慮と利便性のバランスを取る重要な指標なのです。技術の進歩とともに、この数値はさらに向上し、私たちのカーライフをより豊かにしてくれることでしょう。