黒バイと白バイは、どちらも警察が使用するバイクですが、その役割と特徴には大きな違いがあります。白バイは日中の交通取り締まりが主な活動であり、速度違反や無免許運転など一般的な交通違反の取り締まりを担当します。一方、黒バイは夜間に暴走族対策専用として活動する点が最大の違いです。
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黒バイは覆面車両であるため、車体の色が黒で統一されており、乗車する警察官も黒色のウェアを着用しています。白バイ隊員が白色ヘルメットに全身青色の制服、白色の帯革(ベルト)、白色グローブなど明るい色のものを着用しているのに対し、黒バイの隊員は黒色ヘルメットに全身黒色ウェア、黒色グローブという出で立ちで、目立たない色をしています。
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白バイのヘルメットには警察のマークである旭日章が付いていますが、黒バイのヘルメットには付いていません。これは黒バイが覆面車両であるため、一見して警察であることが分からないように敢えて付けていないと考えられます。ただし、安全性を考慮して隊員には夜光チョッキの着用が義務付けられており、車のライトをしっかり点灯させていれば、ドライバーからは比較的見えやすくなっています。
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黒バイは、2002年4月に和歌山県警が夜間の暴走族や危険運転をする車の取り締まりを目的として、全国で初めて導入しました。暴走族の集会が行われるなど、暴走族問題が深刻だった和歌山県では、黒バイを導入した翌月のゴールデンウィーク期間中に58人の暴走族構成員を検挙し、これは前年実績の約2倍という成果をあげました。
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黒バイは通常のパトカーよりも機動力が高く、暴走族の検挙率の高さから、現在では和歌山県警以外にも青森県警、警視庁、宮城県警、栃木県警などが黒バイを採用しています。和歌山県警では通称「黒豹隊」と呼ばれる部隊が黒バイを運用しており、夜間の取り締まりや警戒活動を続けています。
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市民からの「暴走族がうるさい」という通報は、黒バイ導入後に昨年の43件から18件へと大幅に減少し、実際の活動回数も減少していることが確認されています。新たに導入した黒バイの効果は絶大で、普通のバイクと思って油断していたら検挙されるケースも実際にあったと報告されています。
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黒バイには白バイにはない、夜間取り締まりに特化した特殊装備が搭載されています。まず、黒バイの前方には、違反走行中の車の追跡をする際の証拠記録用に、夜間や雨の日でも撮影ができる高性能のビデオカメラとスチールカメラが装備されています。これらは超小型の全天候型高性能カメラで、撮影された映像や画像をもとに後日の検挙対応を行います。
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特に注目すべき装備は「採証液発射装置アトラス」です。この装置は、防犯カラーボールに充填されているのと同じ特殊な染料液を飛ばすことができ、追跡の対象に対してマーキング(印を付ける)する役割があります。液体の飛距離は15~20mほどあり、一緒に活動する覆面車両には、小さなライフル銃のような着色球発射機(アメリカのペイントボールガン相当)も搭載されています。
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さらに、ハンドル上部には木製の警棒が取り付けられており、専用のマウントにマジックテープで着けられているため、有事には速やかに使用できるように配慮されています。ヘルメットは通常のオープンフェイスではなく、顎の部分から開閉するフルフェイスを着用し、無線用のマイク・スピーカは通常と同様に装備されています。
黒バイを操る隊員には、白バイ隊員以上に高度な運転技術が求められます。夜間は日中と比較してはるかに視界が悪くなり、日中の取り締まりと比べて危険性が高いため、県警の中でも白バイ経験者など特に運転技術に優れた警察官が勤務に当たっています。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/24252082/
黒豹隊のメンバーは、白バイ勤務などの後、さらに特殊な訓練を積み、運転技術が特に優れた警察官たちで構成されています。捜査上の秘密でチームの人数は公表されていませんが、隊長の覆面パトカーと3台の黒バイで取り締まりを行い、覆面パトカーに乗る隊長が全ての指示を行うという連携体制がとられています。
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黒豹隊の取り締まりでは、黒バイが覆面パトカーの後ろについてパトロールをしつつ、車やバイクなどの暴走行為を発見すれば前に出て追跡をおこなうというスタイルをとっています。場合によっては、より機動性の高い「銀虎」と呼ばれる銀色の中型バイク(250cc)を連携して使用し、街中の暴走車両を追いつめることもあります。
黒バイに使用されるバイクの車種は白バイと基本的に同じで、ホンダVFR800やホンダCB1300といった大型バイクが使われています。和歌山県警の黒豹隊や栃木県警ではホンダVFR800P、警視庁ではスズキGSF1200Pをベースとした物を使用し、塗色を黒色にしているのが特徴です。
白バイと黒豹隊の黒バイを比較してみると、見た目は白色と黒色で全く違うように見えますが、バイクの基本的な形状は同じです。黒バイも白バイと同様、バイクの左右と後部に赤色ランプが付いているほか、取り締まりで使う書類や停止合図灯などを収納するためのボックスを装着しています。
黒バイも白バイと同様、ヘルメットに小型のドライブレコーダーを搭載していたり、エアバッグ式のプロテクターを着用しているものとみられ、色は違っていても白バイとの共通点は多くあります。排気量が800cc~1,300ccであるため、白バイ・黒バイに乗る警察官は大型自動二輪免許を保持しています。
黒バイは限られた県のみで稼働しているため、ほかの県で見ることは難しい状況です。現在黒バイが配置されているのは、和歌山県警、青森県警、警視庁、宮城県警、栃木県警などです。黒バイは主に夜間に活動しているため、なかなか目にすることはありませんが、年の初めに県警で行われる「年頭視閲式」で見ることができます。
和歌山県警の黒豹隊に関しては、主に夜間、和歌山県内で走行しており、SNS上では「年頭視閲式、黒豹隊目当てで行ってきた」という声や「やっぱりカッコイイ。黒バイを見ることができて大満足」といったバイク好きユーザーからの声が多く寄せられています。
黒バイは全身を黒一色で統一しており、この黒色の塗装は夜間の道路を走行する際の目立たなさを狙ったものです。白バイであれば遠くからでも警察車両とわかりますが、黒バイは道路を闊歩する一般のバイクと見まごうばかりで、まさに「神出鬼没」と形容されるように、黒バイは夜の闇に溶け込むように走り抜けていきます。