1982年にトヨタが開発したクイックデリバリーは、ヤマト運輸の要望により誕生した宅配専用車両でした。運転席から荷室へのウォークスルーが可能で、車内で立って作業できる高い天井高が特徴的でした。しかし、2016年に34年間の歴史に幕を下ろしました。
生産終了の主な理由は以下の通りです。
クイックデリバリーは1985年と1999年にモデルチェンジを行い、特に1999年のフルモデルチェンジでは、平面のみで構成されていた車体にカーブがつき、やさしい印象に変化しました。エンジンを前置きとしたセミボンネットタイプとし、室内のウォークスルーと乗降性をさらに向上させていました。
クイックデリバリーの直接的な後継車は存在しませんが、現在ヤマト運輸では革新的なEVトラックの実証実験を行っています。
ドイツ製ストリートスクーターEV
2021年から一都三県で稼働を開始したドイツ製のEVトラックは、世界最大の国際物流グループであるドイツポストDHL傘下のストリートスクーターが開発しました。
主な仕様。
日野デュトロZ EV
ヤマト運輸では2021年から日野の電気自動車「デュトロZ EV」の実証実験もスタートさせています。このEVトラックは、EVの利点を生かして前後のウォークスルーを実現している点が注目されます。
デュトロZ EVの特徴。
現代の宅配車両は、クイックデリバリー時代とは大きく異なる技術革新を遂げています。
冷凍・冷蔵機能の進化
現在の2トンクラストラックでは、仕切りを可動させて冷凍・冷蔵スペースのレイアウトを変更できる仕様が登場しています。これにより、クイックデリバリーで課題となっていた積載性の問題が解決されました。
安全性の向上
最新の宅配車両には以下の安全機能が標準装備されています。
環境性能の飛躍的向上
EVトラックの導入により、以下の環境メリットが実現されています。
宅配業界全体でEV化が加速する中、各メーカーが独自の後継車開発を進めています。
他社の取り組み
過去にクイックデリバリーに対抗して各社が開発したウォークスルーバンは短命に終わりましたが、現在は異なるアプローチが取られています。
市場の変化
宅配業界の構造変化により、求められる車両性能も変化しています。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、宅配車両の進化は加速しています。
自動運転技術の統合
将来の後継車には以下の自動運転機能が搭載される可能性があります。
新素材・新技術の活用
次世代の宅配車両では革新的な技術が導入される見込みです。
配送システムの革新
単なる車両の進化を超えて、配送システム全体の変革が予想されます。
クイックデリバリーが築いた「現場の声を反映した車両開発」という理念は、これらの未来の後継車にも確実に受け継がれています。技術の進歩により、より効率的で環境に優しい宅配システムが実現されることでしょう。
宅配業界の変革期において、クイックデリバリーの後継車は単なる輸送手段を超えて、持続可能な物流システムの中核を担う存在となっています。EVトラックの普及により、静かで環境に優しい配送が実現され、都市部の生活環境改善にも貢献しています。
今後も技術革新は続き、私たちの生活をより便利で快適にする宅配車両の進化に注目が集まります。クイックデリバリーが残したレガシーは、新しい時代の配送車両に確実に引き継がれ、さらなる発展を遂げていくことでしょう。