クイックデリバリー後継車の現状と未来

宅配業界で長年活躍したクイックデリバリーの後継車について、現在の状況と将来の展望を詳しく解説。EVトラックの登場で宅配車両はどう変わるのでしょうか?

クイックデリバリー後継車の現状と展望

クイックデリバリー後継車の現状
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生産終了の背景

2016年に生産終了したクイックデリバリーは、車両価格の高さとクール宅急便の普及により役割を終えました

EV後継車の登場

ドイツ製EVトラックや日野デュトロZ EVなど、電動化された新世代の宅配車両が実証実験中

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環境対応の重要性

2050年CO2排出実質ゼロ目標により、宅配業界全体でEV化が加速しています

クイックデリバリー生産終了の真相

1982年にトヨタが開発したクイックデリバリーは、ヤマト運輸の要望により誕生した宅配専用車両でした。運転席から荷室へのウォークスルーが可能で、車内で立って作業できる高い天井高が特徴的でした。しかし、2016年に34年間の歴史に幕を下ろしました。

 

生産終了の主な理由は以下の通りです。

  • 車両価格の高さ:通常のトラックやバンと比較して製造コストが高く、経済性で劣っていました
  • クール宅急便の普及:1988年から始まったクール宅急便により、車内に冷凍・冷蔵庫を設置する必要が生じました
  • 積載性の問題:冷凍・冷蔵庫が荷室の右半分を占めるため、大型荷物の積載が困難になりました
  • 宅配方法の多様化:都市部では台車や自転車を活用した集配が増え、クイックデリバリーの優位性が薄れました

クイックデリバリーは1985年と1999年にモデルチェンジを行い、特に1999年のフルモデルチェンジでは、平面のみで構成されていた車体にカーブがつき、やさしい印象に変化しました。エンジンを前置きとしたセミボンネットタイプとし、室内のウォークスルーと乗降性をさらに向上させていました。

 

クイックデリバリー後継車としてのEVトラック

クイックデリバリーの直接的な後継車は存在しませんが、現在ヤマト運輸では革新的なEVトラックの実証実験を行っています。

 

ドイツ製ストリートスクーターEV
2021年から一都三県で稼働を開始したドイツ製のEVトラックは、世界最大の国際物流グループであるドイツポストDHL傘下のストリートスクーターが開発しました。

 

主な仕様。

  • 全長4700mm、全幅1830mm、全高2250mm
  • 普通免許で運転可能(中型免許不要)
  • 1回の充電で約150km走行可能
  • シート高を乗用車並みに設定し、1日200回以上の乗り降りに配慮
  • キーレスエントリーをプロ仕様にバージョンアップ

日野デュトロZ EV
ヤマト運輸では2021年から日野の電気自動車「デュトロZ EV」の実証実験もスタートさせています。このEVトラックは、EVの利点を生かして前後のウォークスルーを実現している点が注目されます。

 

デュトロZ EVの特徴。

  • 床面地上高:約400mm(クイックデリバリーは約800mm)
  • 全高:約2.3m(クイックデリバリーは約2.6m)
  • 前後ウォークスルー機能を搭載
  • 機械的部品の削減によりメンテナンス性向上

クイックデリバリー後継車の技術革新

現代の宅配車両は、クイックデリバリー時代とは大きく異なる技術革新を遂げています。

 

冷凍・冷蔵機能の進化
現在の2トンクラストラックでは、仕切りを可動させて冷凍・冷蔵スペースのレイアウトを変更できる仕様が登場しています。これにより、クイックデリバリーで課題となっていた積載性の問題が解決されました。

 

安全性の向上
最新の宅配車両には以下の安全機能が標準装備されています。

  • 死角を補助するモニターシステム
  • 衝突回避支援システム
  • バックカメラとサイドカメラ
  • LED照明による視認性向上

環境性能の飛躍的向上
EVトラックの導入により、以下の環境メリットが実現されています。

  • CO2排出量の大幅削減
  • 騒音の低減(早朝・深夜配送への対応)
  • エネルギー効率の向上
  • メンテナンス頻度の削減

クイックデリバリー後継車の市場動向

宅配業界全体でEV化が加速する中、各メーカーが独自の後継車開発を進めています。

 

他社の取り組み
過去にクイックデリバリーに対抗して各社が開発したウォークスルーバンは短命に終わりましたが、現在は異なるアプローチが取られています。

  • いすゞ:アメリカ市場で「リーチ」を販売(日本未展開)
  • 日産:小型EVトラックの開発を推進
  • 三菱ふそう:eCanter等の電動商用車を展開

市場の変化
宅配業界の構造変化により、求められる車両性能も変化しています。

  • ラストワンマイル配送:小型・軽量化のニーズ
  • 都市部配送:静粛性と環境性能の重視
  • 効率化:自動化・IoT連携機能の搭載
  • 多様化:冷凍・冷蔵・常温の混載対応

クイックデリバリー後継車の未来予想図

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、宅配車両の進化は加速しています。

 

自動運転技術の統合
将来の後継車には以下の自動運転機能が搭載される可能性があります。

  • レベル4自動運転による無人配送
  • AI による最適ルート選択
  • 自動駐車・自動充電システム
  • ドローンとの連携配送

新素材・新技術の活用
次世代の宅配車両では革新的な技術が導入される見込みです。

  • 軽量化素材:カーボンファイバーやアルミニウム合金の活用
  • 太陽光発電:車体一体型ソーラーパネルによる航続距離延長
  • ワイヤレス充電:走行中充電技術の実用化
  • モジュラー設計:用途に応じた荷室カスタマイズ

配送システムの革新
単なる車両の進化を超えて、配送システム全体の変革が予想されます。

  • マイクロハブ:都市部の小型配送拠点との連携
  • 共同配送:複数事業者による効率的な配送網
  • リアルタイム最適化:AIによる動的ルート変更
  • 顧客連携:スマートフォンアプリとの直接連携

クイックデリバリーが築いた「現場の声を反映した車両開発」という理念は、これらの未来の後継車にも確実に受け継がれています。技術の進歩により、より効率的で環境に優しい宅配システムが実現されることでしょう。

 

宅配業界の変革期において、クイックデリバリーの後継車は単なる輸送手段を超えて、持続可能な物流システムの中核を担う存在となっています。EVトラックの普及により、静かで環境に優しい配送が実現され、都市部の生活環境改善にも貢献しています。

 

今後も技術革新は続き、私たちの生活をより便利で快適にする宅配車両の進化に注目が集まります。クイックデリバリーが残したレガシーは、新しい時代の配送車両に確実に引き継がれ、さらなる発展を遂げていくことでしょう。