カーボンニュートラル取り組み事例|企業・自治体・製造業の活動

カーボンニュートラルの実現に向けて、国内外の企業や自治体、製造業ではどのような具体的な取り組みが進められているのでしょうか?トヨタやパナソニック、日産などの事例から再生可能エネルギー導入、サプライチェーン全体の削減、革新技術の開発まで、実践的な活動内容を詳しく解説します。あなたの会社でも始められる脱炭素化への第一歩とは?

カーボンニュートラル取り組み事例

この記事でわかること
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製造業の脱炭素化

工場のCO2ゼロチャレンジや高効率設備導入、カーボンリサイクル技術の実装事例

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自動車メーカーの先進事例

EV開発、水素活用、ライフサイクル全体でのCO2削減に向けた取り組み

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サプライチェーン全体の削減

企業間協力による再生可能エネルギー活用やScope3削減の実践方法

カーボンニュートラル取り組み|国内自動車メーカーの実践例


BCG カーボンニュートラル経営戦略 (日経ムック)
国内自動車メーカーは、カーボンニュートラル実現に向けて製造から製品使用まで包括的な取り組みを展開しています。トヨタ自動車は「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、ライフサイクル全体でのCO2削減を推進しており、素材調達から廃棄までの温室効果ガス排出量を2030年までに30%削減(2019年比)する目標を設定しています。工場では高効率設備の導入や廃熱利用により電力消費を抑え、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを積極的に採用することで、工場からのCO2排出量をゼロに近づけています。

 

日産自動車は早期からEV開発に注力し、量産型EVのリーフやSUVモデルのアリア、軽EVのサクラなど多様な電動車両を市場に投入しています。日産独自のパワートレインであるe-POWERは「電気自動車のまったく新しいかたち」をコンセプトとし、ノートやセレナ、キックスに搭載され、走行時のCO2排出削減に貢献しています。

 

本田技研工業は2040年までにグローバルでEVとFCEVの販売を100%にする目標を掲げており、先進的なメガキャスト生産技術を取り入れたHonda 0シリーズの開発を進めています。株式会社SUBARUでは、製品使用・素材部品・輸送・廃棄・製造の5つの領域でカーボンニュートラル推進会議を毎月開催し、トヨタと共同開発したEVのSOLTERRAを販売するとともに、2028年末までに合計8車種のバッテリーEVを投入する計画です。

 

トヨタ環境チャレンジ2050の詳細(MIRAIT ONE公式サイト)
国内自動車メーカーの気候変動対策と具体的な数値目標について解説されています。

 

車のカーボンニュートラル|メーカーの取り組み詳細
日産、ホンダ、SUBARUなど各社の電動化戦略と技術開発の最新情報が紹介されています。

 

カーボンニュートラル取り組み|製造業における脱炭素化戦略

製造業では、エネルギー起源CO2が産業部門全体の約40%を占めており、脱炭素化は喫緊の課題となっています。製造工程における脱炭素化には、高効率ボイラーやヒートポンプなどの省エネ機器への更新、IoT技術を活用した最適なエネルギーマネジメントシステムの導入が不可欠です。排出したCO2をエネルギーや素材として再利用する「カーボンリサイクル」技術の開発と実装も、製造業における重要な取り組みとして注目されています。

 

日本製鉄は「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、大型電炉での高級鋼製造、高炉水素還元、100%水素直接還元プロセスといった革新技術を用いて、2030年にCO2総排出量30%削減(2013年比)を目指しています。製鉄プロセスは大量のエネルギーを消費するため、カーボンニュートラル実現には巨額の投資と技術革新が必要となり、国家間競争も激化しています。

 

パナソニックホールディングスは「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、世界中の250の工場から排出される約220万トンのCO2削減に取り組んでおり、すでに4拠点6工場でCO2ゼロ工場を実現しています。水素型燃料電池や太陽電池などクリーンエネルギーの拡大、IoT搭載冷蔵庫や熱を有効活用するエアコンなど省エネ商品の開発により、2050年に向けて現在の世界のCO2総排出量の約1%(≒3億トン)の削減インパクトを目指しています。

 

製造業の脱炭素化|省エネ設備導入のポイント
ボイラーやヒートポンプなど高効率設備の選定方法とカーボンリサイクル技術の概要を解説しています。

 

カーボンニュートラル企業事例10選
セブン&アイ、東芝、パナソニックなど日本を代表する企業の具体的な削減目標と実施内容が紹介されています。

 

カーボンニュートラル取り組み|サプライチェーン全体でのCO2削減活動

企業の温室効果ガス排出量の大部分は、原材料調達や物流、製品使用など自社以外の活動(Scope3)から発生しているため、サプライチェーン全体での削減が重要です。セブン&アイグループとNTTグループは、店舗での再生可能エネルギー活用に向けて共同で取り組み、9,000店舗以上に太陽光発電パネルを設置し、遠隔地の再生可能エネルギー発電所から店舗へ送電する仕組みを導入することで、年間約7万トンのCO2排出量削減を達成(2022年度実績)しています。

 

食料品製造業では、Scope3削減のために製造工程や配送におけるCO2削減を推進しており、パッケージフィルムサイズの縮小や製品出荷の段ボールをFSC認証紙に切り替えるなど、原材料調達から物流、流通を担うステークホルダーと共同で取り組んでいます。スナック菓子やシリアル食品を製造するメーカーでは、高効率機器や再生可能エネルギー導入により自社からの温室効果ガスを抑え、原材料と製品の輸送効率化や容器包装の軽量・小型化によってScope3削減を目指しています。

 

セコムは「セコムグループ カーボンゼロ2045」を策定し、2030年度までに2018年度比で45%削減、サプライチェーン全体において2050年までに排出ゼロを目指しており、省エネ機器の導入や電気自動車・電気バイクの導入に注力しています。味の素グループはサプライチェーン全体で2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを掲げ、国際的なイニシアチブであるRE100へ参画し、電力の100%再生可能エネルギー化を推進しています。

 

サプライチェーン排出量削減の企業事例
Scope1、2、3の具体的な削減方法と、食品製造業やメーカーの実践例が詳しく紹介されています。

 

カーボンニュートラル協創事例6選
セブン&アイ×NTTなど複数企業での協力による再生可能エネルギー活用の成功事例を解説しています。

 

カーボンニュートラル取り組み|海外企業の先進的な削減施策

海外企業は野心的な目標を掲げ、カーボンニュートラル実現に向けて先進的な取り組みを展開しています。Intelは2040年までに世界の事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1および2)を実質ゼロにすると発表し、2030年の中間目標として再生可能エネルギーによる電力使用率100%、省エネルギーに3億ドルの投資を設定しています。過去10年間で75%もの温室効果ガスの累積排出量削減を達成しており、今後はサプライヤーとの連携強化や化学物質・資源の効率化など、バリューチェーンの上流と下流(スコープ3)を含む削減に重点を置いています。

 

Amazonは2019年に「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を表明し、2040年までにカーボンニュートラル達成、2025年までに自社事業において100%再生可能エネルギー使用を宣言しています。2020年には世界で最も多く再生可能エネルギーを購入する企業となり、2021年には再生可能エネルギーの使用率が85%に達し、配送の電動化や効率化などにも積極的に取り組んでいます。

 

IKEAは2030年までに温室効果ガス排出量を半減させ、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると表明しており、カーボンオフセットを利用せず、バリューチェーンや消費者、サプライヤーにおける根本原因に対処する方針です。環境フットプリント全体の半分以上を占める素材、特に木材のフットプリント削減に注力し、2030年までに再生可能素材やリサイクル素材の使用率100%を目標としており、2021年度は23カ国の店舗で再生可能電力の使用率100%を達成しています。

 

テスラはModel S、Model 3、Model X、Model Yなど複数のEVモデルを市場に投入し、世界中でのEV普及を促進するとともに、太陽光発電システム「ソーラールーフ」や蓄電システム「パワーウォール」を提供し、クリーンエネルギーの利用を支援しています。効率的な製造プロセスを持つ大規模工場「ギガファクトリー」を世界各地に建設し、再生可能エネルギーを活用して稼働させることで、脱炭素社会の実現に向けたリーダーシップを発揮しています。

 

海外企業のカーボンニュートラル戦略(Intel、Amazon、IKEA)
Intel、Amazon、IKEAの具体的な目標年次と削減施策の詳細が解説されています。

 

自動車業界の脱炭素戦略|テスラ、BMWの事例
テスラのEV戦略とエネルギー製品、BMWのNeue Klasse戦略について詳しく紹介されています。

 

カーボンニュートラル取り組み|自治体による地域循環型プロジェクト

地方自治体もカーボンニュートラル実現に向けて、地域特性を活かした独自のプロジェクトを展開しています。京都府亀岡市は2008年に府内の大学、生産者と協働で「亀岡カーボンマイナスプロジェクト」を発足し、生物由来の有機物からできたバイオ炭を使った農業を推進しています。バイオ炭は大気中のCO2を構成する炭素を土壌に閉じ込めることができるため、大気中のCO2総量削減につながり、このバイオ炭を使った田畑で栽培した作物を「クルベジ®」とブランド化して販売することで、農業における「ネガティブエミッション技術」として注目されています。

 

佐賀県佐賀市のゴミ焼却場では、日本で初めてCCUS(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留)技術を導入し、廃棄物発電施設にCO2を分離して回収する設備を設置しています。回収したCO2は微細藻類の育成に役立つため藻類培養業者に販売され、化粧品などに活用されており、大気中へのCO2放出を防ぐとともに資源として有効活用する先駆的な取り組みとなっています。

 

北海道札幌市は持続可能な都市「環境首都・SAPP‿RO」を将来像として設定し、環境保全の取り組みの一環としてZEH(ゼロ・エネルギー住宅)やZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を推進しています。省エネ対策の実施や再生可能エネルギーの活用で光熱費を削減できる住宅や、エネルギー消費量を削減し不動産価値の向上につながる建物の建設を支援するため、設計費の上乗せ相当分について60万〜300万円の支援助成金を提供しています。

 

自動車を利用するドライバーにとっても、こうした自治体の取り組みは重要です。地域の再生可能エネルギー施設から供給される電力でEVを充電することや、カーボンニュートラルを実現した地域で生産された農産物を購入することで、間接的にCO2削減に貢献できます。

 

自治体のカーボンニュートラル取り組み事例(亀岡市、佐賀市、札幌市)
バイオ炭農業、CCUS技術、ZEH・ZEB推進など自治体独自の先進的プロジェクトが紹介されています。

カーボンニュートラル (日経文庫)