RABを信頼しすぎると、バンパー修理で数十万円の出費になることがあります。
スバルの後退時ブレーキアシスト(RAB=Reverse Automatic Braking)は、アイサイトの機能の一つとして、バック時の衝突事故を防ぐために開発されたシステムです。仕組みの核心は、リアバンパーの内側に取り付けられた4つのソナーセンサーにあります。
ソナーセンサーは超音波を使って後方の障害物との距離を計測し、車がバックしている際にリアルタイムで情報を処理し続けます。障害物との距離が縮まるにつれて、4段階の警告表示と警報音によってドライバーへの注意喚起が段階的に行われます。これは単純に「ブレーキがかかる」だけではありません。
まず第1段階として、障害物との距離が一定値を下回るとナビのマルチファンクションディスプレイに表示が現れ、断続的な警報音が鳴ります。距離が縮まるにつれ音の間隔が短くなり、4段階目に到達した時点でエンジン出力を抑制しながら自動ブレーキが介入します。つまり、二段構えの安全対策です。
それでも車が障害物に向かって後退し続け、衝突の危険が回避できないとシステムが判断した場合、エンジン出力の低下とブレーキングが同時に行われ、停止状態を維持します。RABが機能する基本フローが原則です。
SUBARU公式FAQ:後退時ブレーキアシスト(RAB)の基本的な仕組みについて(スバル公式サイト)
なお、自動ブレーキが作動して後退できない状況(踏切からの緊急脱出など)では、アクセルを踏み続けることでRABをキャンセルすることが可能です。また設定メニューからソナー警報音や自動ブレーキのON・OFFを個別に切り替えることもできます。緊急時の操作手順は覚えておく価値があります。
SUBARU公式FAQ:RAB自動ブレーキが作動して後退できない場合の対処法(スバル公式サイト)
RABが搭載されているのは、アイサイトver.3以降のモデルが基本となります。アイサイトver.3は2014年に初代レヴォーグとともにデビューし、後退時ブレーキアシストはこのタイミングで初めてアイサイトのラインナップに加わりました。重要なポイントです。
現在(2026年3月時点)のスバル主要車種における搭載状況は以下の通りです。
| 車種 | 搭載アイサイト | RAB |
|---|---|---|
| インプレッサ | 新世代アイサイト(3眼) | ✅ 標準装備 |
| クロストレック | 新世代アイサイト(3眼) | ✅ 標準装備 |
| フォレスター | 新世代アイサイト(2眼) | ✅ 標準装備 |
| レヴォーグ | アイサイトX(3眼) | ✅ 標準装備 |
| レイバック | アイサイトX(3眼) | ✅ 標準装備 |
| レガシィアウトバック | アイサイトX(3眼) | ✅ 標準装備 |
| WRX S4 | アイサイトX(3眼) | ✅ 標準装備 |
| SUBARU BRZ | アイサイトver.3(2眼) | ✅ 標準装備(MT一部制限あり) |
特筆すべきは、アイサイトver.3が搭載されたインプレッサ(GT型)では2017年のフルモデルチェンジ時から全グレードにRABが標準装備となり、バックの安全装備としての普及が一気に加速したことです。いいことですね。
また、現行の「新世代アイサイト」と「アイサイトX」搭載車は、ステレオカメラに加えてバンパー四隅にレーダーセンサーを備えており、360度のセンシング能力を持ちます。これにより旧バージョンと比較して車体側方への認識精度が向上し、RABとの連携もより精度が高まっています。
中古車でスバルを検討している場合は、年式に注意が必要です。概ね2015年式以降であればアイサイトver.3が搭載されていてRABが使用可能なケースが多いですが、2014年以前の車種ではver.2のみの搭載となり、RABは非搭載です。年式が条件です。
ガリバー:アイサイト搭載車種一覧とバージョンごとの機能の違い(ガリバー公式)
車好きの方の中には「RABがあれば駐車で失敗しない」と思っている方もいるかもしれません。しかし実際には、RABには苦手なシーンがいくつかあり、それを知らずに過信すると思わぬ出費につながる可能性があります。これは使えそうな情報です。
まず、ソナーセンサーの特性上、横方向から近づいてくる物体の検知は非常に苦手です。例えば、駐車場でバックしている最中に車道から自転車や歩行者が横切ってきた場合、ソナーの検知エリアは基本的に車体の真後ろの扇形範囲内に限定されているため、横からの接近は間に合わないケースがあります。
次に、ソナーの設置高さより極端に低い障害物や、非常に細い障害物(例えば細い支柱や自転車のタイヤ部分など)は、ソナーの超音波が回り込んでしまい正確に検知できないことがあります。イメージとしては、懐中電灯の光が直線にしか届かないのと似た原理です。
また、スバル公式FAQでも明記されているように、踏切の遮断機を障害物として誤認識し、RABが不意に作動するケースも報告されています。特に踏切でのバックが必要な場面では、RABをあらかじめOFFにするか、アクセルを踏み続けてキャンセルする必要があります。
さらに注意すべき点として、EyeSight警告表示灯が点灯・点滅している状態ではRABも機能しません。つまり、システム自体に異常が生じているときは後退時の自動ブレーキも期待できないということです。RABだけに注意すれば大丈夫ではありません。
加えて、RABのソナーセンサーはカメラではなく超音波センサーであるため、大雨や雪などの悪天候でも基本的には動作しますが、センサー表面に泥や雪が付着すると検知精度が著しく低下します。雨の日のバックは要注意ということですね。定期的なセンサー面の清掃も、RABの性能を維持するうえで重要なメンテナンスの一つです。
SUBARU公式FAQ:踏切での誤作動についての注意事項(スバル公式サイト)
RABには「ソナー警報音」と「自動(被害軽減)ブレーキ」の2つの機能があり、それぞれ独立してON・OFFを設定できます。この2つが別々に設定できることを知らないスバルオーナーは意外と多いです。
フォレスター(SK型Fタイプ)の場合、操作の流れは以下の通りです。
レヴォーグ(VN型Eタイプ)では、センターインフォメーションディスプレイの「設定」→「車両」→「後退時ブレーキアシスト(RAB)」と進むことで同様の設定ができます。タップ操作で完結できるので直感的です。
また、セレクトレバーを「R」に入れた状態でも、マルチファンクションディスプレイに表示されるRAB画面からアイコンをタップしてON/OFFを切り替えることが可能です(車種による)。
ここで注意したいのは、フォレスター(SK型Fタイプ)ではエンジンを始動するたびに「ソナー警報音」が自動的にONに戻るという仕様になっている点です。「前回OFFにしたのに、また鳴っている」という経験をした方もいるかもしれませんが、これは設計上の仕様です。一方、自動(被害軽減)ブレーキの設定はエンジンOFF時に保存されます。この違いだけ覚えておけばOKです。
設定の内容は車種・年式によって大きく異なるため、詳細は各車種の取扱説明書を確認することを強くおすすめします。スバル公式サイトでは取扱説明書のPDF版も無料でダウンロードできるので、手元に紙の説明書がなくても確認することができます。
SUBARU公式FAQ:RABのソナー警報音・自動ブレーキのON/OFF切替方法(スバル公式サイト)
RABはあくまでも「ドライバーの補助」であり、完全な事故防止を保証するシステムではありません。スバル公式も「過信は禁物」と明言しています。この前提を忘れると、RABが作動しなかった際のバンパー損傷修理費用(部位によっては5〜30万円以上かかることも)という形でリアルなダメージを受ける可能性があります。痛いですね。
そこでRABと組み合わせて活用したい機能・知識をいくつか紹介します。
まず、スバルのアイサイトセイフティプラスに含まれる「マルチビューモニター」の活用です。これはリアカメラ映像に加え、サイドやフロントのカメラ映像を組み合わせ、俯瞰視点(バードビュー)で車の周囲を確認できる機能です。ソナーが苦手な「横から近づく障害物」の視認性を大幅に補完してくれます。特に狭い立体駐車場や住宅街での縦列駐車では、モニターとRABを組み合わせることで事故リスクを格段に下げられます。
次に、バック駐車の基本である「バックをゆっくり行う」ことの重要性も忘れてはいけません。RABの自動ブレーキは速度が高いほど停止距離が長くなります。駐車場での後退速度は歩行者の速足程度(時速5〜7km程度)に抑えることが、システムの能力を最大限に発揮させる条件です。
また、ソナーセンサーの精度を維持するためには、リアバンパー周辺の清潔さを保つことが重要です。洗車の際にリアバンパー部分のソナー周辺もきちんと拭き取る習慣をつけることをおすすめします。汚れが蓄積するとソナーの反射精度が落ち、RABの早期警告が届かなくなることもあります。RABの清掃は必須です。
アイサイト診断はスバルディーラーで受けることができ、RABのソナーセンサーの動作確認も含まれます。定期点検のタイミングでアイサイト診断(多くのディーラーで無料実施)を依頼しておくと、システム全体の健全性を確認でき、万が一の異常にも早期に気づくことができます。
グーネット:スバルの後退時自動ブレーキシステム(RAB)の効果と仕組みを解説(グーネット)