2020年4月下旬に東京都内で初めて目撃されたカムリ覆面パトカーは、従来の覆面パトカーの常識を覆す革新的な車両です。ベースグレードには最上位の「WS」を採用し、ボディカラーはオプション選択となるプラチナホワイトパールマイカを基調としています。
最も特徴的なのは、TRD(Toyota Racing Development)製のエアロパーツを全面的に装備している点です。フロントスポイラー、サイドスカート、トランクスポイラーなどのフルエアロ仕様となっており、まさに「スポーツカー」のような外観を呈しています。
パワートレインには2.5リッター直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載し、最高出力は221馬力を発生します。これは従来の覆面パトカーと比較して圧倒的な動力性能を誇り、高速追跡時の性能向上に大きく貢献しています。
一般のカムリWSとの最も確実な見分け方は、リア部分のマフラー配置にあります。通常のWSグレードでは左右2本ずつ計4本出しのマフラーが装備されていますが、覆面仕様では左側2本出しのみとなっています。右側のマフラー部分は空洞となっており、ここにサイレン用のスピーカーが設置されているのです。
屋根部分にも特徴的な装備があります。本来フィンアンテナが設置される位置には、黒色のユーロアンテナに偽装した無線アンテナが装備されています。また、屋根中央部には四角い蓋があり、ここから反転式警光灯が展開される仕組みになっています。
フロントグリル内部には前面警光灯が内蔵されており、緊急時にはここから赤色灯が点灯します。さらに、リアトレイ部分にはパトサインと呼ばれるLED表示板が設置されており、「STOP」や「POLICE」などの文字を表示することが可能です。
この特別なカムリ覆面パトカーは、東京都の独自予算により警視庁にのみ導入されています。現在確認されている配備台数は7台で、主に交通機動隊に配属されています。
導入の背景には、東京オリンピック開催に向けた治安対策の強化があります。特に、来日する外国人観光客や都内在住の外国人ドライバーの増加を見据え、パトサインには英語表示機能も搭載されています。これにより、言語の壁を越えた効果的な交通取締りが可能となっています。
また、従来の覆面パトカーでは対応が困難だった高性能車両による違反行為に対しても、このカムリの高い動力性能により適切な対応が可能となりました。ハイブリッドシステムの採用により、環境性能と追跡性能を両立させている点も評価されています。
SNS上では全国各地でカムリ覆面パトカーの目撃情報が相次いで報告されています。特に東京都内では頻繁に目撃されており、首都高速道路や環状線での活動が確認されています。
興味深いことに、一般的な白・黒・シルバーのボディカラー以外にも、ブルーのカムリ覆面パトカーの存在が確認されています。山形県寒河江市で撮影されたこのブルーの個体は、機動捜査隊に配備されているものと推測されており、交通取締り以外の用途にも活用されていることが伺えます。
パトカーマニアの間では、「TRD仕様のカムリには警戒してしまう」という声も聞かれ、その存在感の大きさが窺えます。一方で、「カッコ良すぎて覆面とバレそう」という指摘もあり、従来の「目立たない」という覆面パトカーの概念を覆す存在となっています。
このTRD仕様カムリ覆面パトカーの運用には、いくつかの課題も指摘されています。最も大きな問題は、あまりにもスポーティな外観のため、かえって目立ってしまうという点です。覆面パトカーの本来の目的である「一般車両に紛れ込む」という機能が、このカッコ良すぎる外観により損なわれる可能性があります。
また、1台あたり約960万円という高額な導入費用も課題の一つです。従来の覆面パトカーと比較して2倍以上のコストがかかるため、全国展開には予算面での制約が予想されます。
しかし、その一方で技術的な優位性は明確です。ハイブリッドシステムによる静粛性は、隠密性を重視する覆面パトカーにとって大きなメリットとなります。また、高い燃費性能により、長時間の張り込みや追跡任務においてもコスト効率が向上します。
今後は、このカムリ覆面パトカーの運用実績を踏まえ、他の都道府県警察への導入拡大が検討される可能性があります。特に、高速道路での高速違反取締りや、スポーツカーによる暴走行為への対応において、その真価が発揮されることが期待されています。
さらに、パトサインの英語表示機能は、今後全国的に普及していく可能性が高く、国際化が進む日本の交通環境において重要な役割を果たすことが予想されます。
このように、カムリTRD仕様覆面パトカーは、従来の覆面パトカーの概念を大きく変える革新的な存在として、今後の警察車両の発展に大きな影響を与えることが期待されています。