ジュネーブ条約(正式名称:道路交通に関する条約)は、1949年に締結された国際条約で、加盟国間で運転免許の相互承認と車両の一時的な国境を越えた移動を可能にする取り決めです。この条約により、世界193か国が加盟しており、そのうち日本とはアメリカ・カナダ・イギリス・韓国・シンガポールをはじめとする112の国と特別行政区が締結しています。
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この条約の最大の利点は、海外旅行や国際的なモータースポーツイベントに参加する際、自分の車やバイクを現地で登録する必要なく、一時的に走行できることです。通常であれば関税の支払いや車検、現地でのナンバー取得などが必要になりますが、ジュネーブ条約締結国の間ではこれらの手続きが免除され、一時的な利用が認められています。
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日本は1964年(昭和39年)にこの条約に加入しており、以来、条約に基づく国際運転免許証や国際ナンバープレートの発行を行っています。このシステムは外国旅行者や短期間滞在者の利便性を図る観点から設けられた例外規定であり、本来は運転する国の免許を取得して運転するのが原則です。
参考)国外運転免許証の申請手続 - 埼玉県警察
ジュネーブ条約では、車両のナンバープレートについて明確な規定が設けられています。条約では、登録国外へ車両を持ち出す場合には、ナンバープレートをアルファベットとアラビア数字で表示しなければならないことが定められているため、日本の「ひらがな」が含まれた通常のナンバープレートでは国際走行ができません。
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そのため、海外で日本車を運転する際には「国際ナンバープレート」の取得が必須となります。国際ナンバープレートは、既に取得している日本のナンバープレートをもとに国際基準に合わせて作成されるため、地名、分類ナンバー、ひらがな、一連指定番号の4つの情報が記載される点は同じですが、表記方法が大きく異なります。
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具体的には、一連指定番号の数字の間の「ハイフン」がなくなるほか、地名とひらがなについてはローマ字での表記に変更されます。例えば、地名が「品川」であれば「TKS」(Tokyo Shinagawa)、「大阪」であれば「OSO」(Osaka Osaka)というように、都道府県名と管轄の陸運支局などの地名を組み合わせた、あらかじめ決められたルールに沿ってローマ字表記に読み替えられます。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/24707040/
ジュネーブ条約加盟国で日本のナンバープレートを装着した車両を走行させるためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。まず第一に、輸入した本人が使用することが絶対条件となっており、他人への譲渡や貸し出しは認められていません。
参考)自動車カルネのご案内
次に、輸入の許可を受けた日から1年以内であることが必要です。この期間制限は、国際運転免許制度が外国旅行者や短期間滞在者の利便を図る観点から設けられている例外規定であるためで、長期滞在者は現地での免許取得が求められます。
さらに、登録国が発行する登録証書を車両に備え付けていることも必須条件です。登録証書とは英文で書かれた車検証のことで、海外で車検証を確認される際のために必要となります。この登録証書の発行料金は無料ですが、発行手続きには平日の日中に運輸支局を訪れる必要があります。
加えて、車両が日本で登録されており、車検が切れていないことも重要な条件となります。車検が渡航中に切れる予定がある場合は、事前に更新しておく必要があり、日本の免許証の有効期限が切れた場合も国際運転免許証は無効となります。
参考)国外免許証 - 山口県警察本部 - 山口県ホームページ
ジュネーブ条約に加盟していない国へ日本車を持ち込む場合、手続きは大きく異なります。条約に加盟していない国では、日本で自動車やバイクを登録していても、その国のナンバープレートを取得する必要があります。
参考)自動車カルネとは?申請・通関方法などを徹底解説!
具体的には、陸運支局に車両を持ち込み、日本のナンバープレートではなく現地のナンバープレートを登録する必要があります。この場合、関税の支払い、現地での車検手続き、そして現地のナンバー取得という、通常の輸入車両と同様の手続きを踏まなければなりません。
日本国内では、ジュネーブ条約締結外の国から一時輸入された車に対して、特別な「T」ナンバーが交付されることがあります。このTナンバーは、本国から持ち込んだ個人所有車を示すアルファベット表記のナンバープレートで、駐留軍人軍属私有車両等に付けられるものです。
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また、ひらがな部分にアルファベットが記載されているナンバープレートは、主に沖縄県や神奈川県などの米軍基地が多く存在する地域でよく見られ、「Y」は日本国内で調達された個人所有車、「E」は非課税車両、「A」はオートバイ・軽自動車を示しています。
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自動車カルネ(正式名称:AIT/FIA Carnet de Passages en Douane)は、ジュネーブ条約の枠組みの中で非常に重要な役割を果たす書類です。カルネは自家用自動車(自動二輪を含む)の一時輸入の通関手続きを簡素化する書類で、これによって一時輸入された自動車は、その国に登録する必要なく日本登録のまま外国を走行することができます。
参考)【自動車カルネを考える】AIT/FIA Carnet de …
カルネの有効期間は1年間で、使用後はJAF(日本自動車連盟)へ返却する必要があります。カルネを利用できる条件としては、車両が日本で登録されており車検が切れていないこと、必ず日本へ持ち帰ること、カルネ名義人本人が海外へ渡航すること、滞在国への持込期間がその国が定めた期限を越えないことなどが挙げられます。
カルネが特に有効なのは、外国を何カ国にもわたって旅行する場合や、ラリーなど海外のモータースポーツ競技会に参加する場合です。実際、公道を走るモータースポーツで一時的に海外にクルマを持ち込む際には、この制度が活用されています。
参考)海外のナンバープレート!それっていいの? href="https://nakano-auto.co.jp/concept/useful/785/" target="_blank">https://nakano-auto.co.jp/concept/useful/785/amp;#8211; 株…
一方で、カルネが利用できない場合もあります。1カ国に1年以上滞在する場合、駐在等の仕事で海外へ行く場合、外国に住民登録を移す場合、現地で車両を売却する予定の場合、本人が現地に行かない場合などは、カルネを利用することができません。
国際ナンバープレートを取得するには、まず登録証書の交付を受ける必要があります。登録証書の取得には、渡航する人のパスポート、有効な車検証(126cc〜250ccの場合は軽自動車届出済証)、2ヶ国以上渡航する場合は旅程表が必要です。原付の場合は標識交付済証と使用する人のパスポートが必要となります。
手続きは、車両が登録されている地域の運輸支局で行います。東京運輸支局の場合、午前中9時半頃に到着して約2時間程度かかるのが一般的です。登録証書の発行料金は無料ですが、国際ナンバープレートの製作費は、バイクの場合は2,600円、軽自動車は5,700円(1組2枚)、普通車は7,800円(1組2枚)となっています。
登録証書交付申請書の記入が必要ですが、担当者が丁寧に書き方を説明してくれるため、初めての人でも安心して手続きを進めることができます。登録までには1時間程度かかるため、待ち時間を考慮した方が良いでしょう。
国際ナンバープレートの製作は、小松自動車工業株式会社へ依頼する方法もあります。電話(03-3474-0211)で注文書をFAXまたは郵送してもらい、登録証書のコピーと共にFAX(03-3474-0436)または郵送し、指定の口座へ振り込むか現金書留で支払います。入金から1週間〜10日程度で宅急便にて着払いで受け取ることができます。
参考)https://ameblo.jp/irako123/entry-12463932896.html
また、国識別記号のJマークも別途必要となります。JAFの窓口で購入するか、郵送で依頼することができ、2枚1組で520円です。郵送の場合は、代金520円+返信用切手代82円の計602円を同封し、「Jマーク2枚希望」と記載して発送します。
逆に、海外のナンバープレートを日本国内で装着する場合のルールについても理解しておくことが重要です。海外のナンバープレートは、道路運送車両法において定められている自動車登録番号標としての効力を持たないため、日本国内で装着しても無効となります。しかし、車に貼り付けられたステッカーと同じようなものとみなされるため、装着すること自体に違法性はありません。
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日本で走らせる車には、国内で有効なナンバープレートを適切に装着しなければならないという大原則があります。道路運送車両法第98条によると、ナンバープレートを偽造、変造、自作したり他の車のものを取り付けたりすることは禁じられており、違反した場合は厳しく取り締まられます。
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海外のナンバープレートを装着する場合は、当該自動車に対して発行された日本のナンバープレートをその上からしっかり取り付ける必要があります。日本の正規のナンバープレートを道路交通法に定められた位置や角度でしっかり固定して表示してあれば、原則的には問題ありませんが、日本のナンバープレートに被ってしまうなど、上に付けてしまう(被覆する)と、法令違反になってしまうので注意が必要です。
輸入車オーナーの中には、そのモデルの生産国のナンバープレートをあえて装着するカスタムを楽しむ人もいますが、日本のナンバープレートが見える箇所と角度にしっかり固定する必要があり、ナンバープレートを折り曲げて見えにくくしてしまうのも取り締まりの対象になることがあります。
後ろ側のナンバープレートの場合、普通車には「封印」が付いているため、これを一度外し、新しい封印を付ける手続きが必要になります。この手続きは陸運局での対応が必要となるため、前側より手間がかかります。
日韓両国はジュネーブ条約を締結しているため、特定条件下で相手国ナンバーでの走行が可能となっています。日本と韓国の間では、協定により最大14日間、韓国ナンバーのまま日本国内を走行することができ、逆に日本のナンバープレートを装着した車両で韓国を走行することも可能です。
参考)韓国ナンバー日本走行の条件と手続き完全ガイド
韓国との間では、関釜フェリーを利用して韓国から日本へ、日本から韓国へ車両を直接輸送することができます。この利便性により、日本からマイカーを持ち込んで韓国旅行をすることが可能で、実際に1ヵ月間かけて韓国全国一周をした事例も報告されています。
参考)【マイカーで韓国旅行!】日本の車をそのまま韓国に持ち込んで旅…
韓国ナンバーの車両が日本国内を走行できる法的根拠は、「道路交通に関する条約の実施に伴う道路運送車両法の特例等に関する法律」に基づいています。日本と韓国は共にジュネーブ条約(道路交通に関する条約)を締結しているため、「国際運転免許証」を取得すれば韓国で車やバイクを運転できます。
ただし、ジュネーブ条約加盟国で国際運転免許証を取得している場合でも、日本国内で自家用車を運転することは可能ですが、業務用トラックに乗務することはできません。国際免許証だけでは「営業ナンバー(緑ナンバー)」の車両を運転して業務に従事することは認められていないため、特定技能で働くためには日本国内で有効な運転免許証を取得する必要があります。
参考)ジュネーブ条約加盟国の国際免許保持者は日本でトラック運転でき…
ジュネーブ条約に基づく国際ナンバープレートと登録証書には、重要な期限の制限があります。国際運転免許証の有効期間は発給の日から1年間で、この期間を過ぎると効力を失います。日本国内で外国の国際運転免許証を使用する場合は、「国際運転免許証の有効期間(発給日から1年間)」と「日本に上陸した日から1年間」のいずれか短い期間で運転することができます。
参考)国際運転免許証により日本国内で運転できる期間href="https://www.police.pref.chiba.jp/menkyoka/licence_foreign_International.html" target="_blank">https://www.police.pref.chiba.jp/menkyoka/licence_foreign_International.htmlamp;nbsp;
日本の免許証の有効期限が切れた場合や日本の免許証が取り消された時は、発給の日から1年以内でも国際運転免許証は無効となります。渡航中に日本の免許証の有効期限が切れる場合は、事前に更新しておく必要があります。
自動車カルネの有効期間も1年間で、定められた期間内に再輸出しなければなりません。カルネの使用後はJAFへ返却する必要があり、この手続きを怠ると次回の取得に影響が出る可能性があります。
登録申請の受け付け時間は支局によって異なりますが、東京運輸支局の場合は平日の午前8:45〜11:45、午後13:00〜16:00となっており、土・日・祝日は休みです。そのため、平日の日中に時間を確保する必要があり、午前中に申請すれば半休で対応できる可能性があります。
また、滞在国への持込期間がその国が定めた期限を越えないことも重要な注意点です。各国によって一時輸入の期間制限が異なる場合があるため、訪問予定の国の規定を事前に確認することが推奨されます。