2023年3月に「エンジンブレーキ」というキーワードがTwitterでトレンド入りし、大きな話題となりました。発端は「エンジンブレーキをうざいと思う人がいる」というブログ記事のスクリーンショットが投稿されたことでした。この投稿には1.3万もの「いいね」が付き、500近くのコメントが寄せられるなど、激しい論争に発展しました。
参考)https://news.livedoor.com/topics/detail/23954210/
さらに「エンジンブレーキで減速したら、迷惑運転で警察に通報された」という衝撃的なツイートまで登場し、"エンブレ論争"はさらにヒートアップしていきました。このような投稿がきっかけとなり、「車間距離」などの関連キーワードも次々とトレンド入りする事態となりました。
参考)「エンジンブレーキ」SNSで突如のトレンド入り「ブレーキラン…
AT車に乗るドライバーの中には、MT車のエンジンブレーキを「合図なしでの減速」だと感じる人が多いことが指摘されています。特に車間距離を詰める癖があるドライバーは、急に車間が詰まったと感じて危険に思うケースが多いようです。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/23954210/
エンジンブレーキが問題視される最大の理由は、ブレーキランプが点灯しないという点です。フットブレーキを踏めばブレーキランプが点灯して後続車に減速を知らせることができますが、エンジンブレーキではブレーキペダルを踏まないため、ランプによる合図がありません。
参考)ネット上の根強い「エンジンブレーキうざい」理論とは!? 実は…
このため、後続車からは「ブレーキランプが点灯していないのに減速し始めた」ように見え、急に車間が詰まったように感じられるのです。特に漫然と運転している場合、ランプの合図なく急に車間距離が近づき、思わぬ追突事故を起こしてしまう可能性があります。
ただし、最近のハイブリッド車や電気自動車では、回生ブレーキの効果が大きいBレンジ使用時にはブレーキランプを点灯させるシステムが採用されています。これは明らかに減速効果が得られる場合、後続車に自車が減速状態にあることを知らせるためです。一方、Dレンジでのアクセルオフ程度の緩やかな減速では、後続車が目視での距離判断で十分対応可能という判断から、ブレーキランプは点灯しない設計となっています。
参考)エンジンブレーキ作動時にブレーキランプは点灯するのか?
エンジンブレーキ論争の核心は、実は車間距離の問題に集約されます。Twitter上では「エンジンブレーキは必要」「うざいと言うのがおかしい」という意見も多く寄せられており、その中で最も多かったのが「適切な車間距離が必要」という指摘でした。
道路交通法では、先行車との車間距離を十分に確保することが義務付けられています。時速40kmで走行している場合、危険を察知してブレーキを踏み、完全に停止するまでには22mもの距離が必要です。これは「停止距離」と呼ばれ、必要な車間距離の基準となる重要な指標です。
参考)走行中の適切な車間距離は?
「急減速したあいつが悪い」と責任を押し付けたところで、裁判所は「追突側も回避可能だった」と判断される可能性があります。実際の裁判例でも、高速道路でのエンジンブレーキによる減速で追突事故が発生したケースにおいて、追突した後続車にも過失が認定されています。車間距離を適切に保つことが、何か不用意なことが発生した時の安全確保につながり、心の余裕にもつながるのです。
参考)高速道路での車線変更・急ブレーキによる追突事故の過失割合|交…
安全で効率的な運転のためには、エンジンブレーキとフットブレーキを状況に応じて使い分けることが重要です。エンジンブレーキは緩やかな減速に適しており、強くブレーキをかける場面ではフットブレーキが力を発揮します。
参考)エンジンブレーキの仕組みとは?使うメリットやフットブレーキ・…
エンジンブレーキを使うべき場面としては、以下が挙げられます。
一方、フットブレーキを使うべき場面は次の通りです。
教習所では、エンジンブレーキとフットブレーキを併用して安全に走行することの重要性が教えられています。特に長い下り坂では、フットブレーキを使い続けるとブレーキが発熱してフェード現象やベーパーロック現象を起こし、ブレーキの減速効果を失ってしまう恐れがあるため、エンジンブレーキの活用が必須となります。
参考)在校生Q&A 『エンジンブレーキって何ですか?』
エンジンブレーキをうざいと感じる人がいる一方で、教習所で習う基本的な運転技術としてエンジンブレーキの使用は推奨されています。この論争の背景には、運転レベルの低下や時代の変化があるという指摘もあります。youtube
エンジンブレーキを使うドライバーは、決してエンジンブレーキだけで止まろうとしているわけではありません。ある程度減速したらちゃんとフットブレーキも使いますし、ポンピングブレーキ(ブレーキペダルを何回かに分けて踏むテクニック)だって使います。あくまでエンジンブレーキは減速の取っ掛かりに使う補助的なものなのです。youtube
また、エンジンブレーキを使うことでフューエルカット(燃料カット)が作動し、燃料の供給が止まって減速しながら走行した距離分の燃費が向上するというメリットもあります。環境面からも、エンジンブレーキの適切な使用は推奨される運転方法と言えるでしょう。
参考)下り坂でエンジンブレーキを使いすぎると危険?正しい使い方を解…
エンジンブレーキによる追突事故を防ぐためには、ドライバー自身が「かもしれない運転」を心がけることが重要です。「前のクルマが急に減速したらどうしよう」と常に頭の片隅に置いておくことで、不測の事態にも対応できる心構えができます。
後続車に配慮するドライバーの中には、エンジンブレーキで減速する場合でも、まずフットブレーキを軽く踏んでブレーキランプで合図すべきという意見もあります。これは特に車間距離を詰める癖があるドライバーが後続にいる場合、トラブルを回避する有効な方法と考えられています。
原付バイクの運転講習でも、ブレーキをかける際は後続車に知らせるために、ブレーキを2〜3回に分けてかける「ポンピングブレーキ」が推奨されています。この技術は四輪車でも応用でき、後続車への配慮と安全性の向上につながります。
参考)上手な止まり方|ゲンチャレ実技編!原付免許実技講習のために、…
実際の事故事例では、下り坂の直後の交差点で、エンジンブレーキを使用して減速していたにもかかわらず、フットブレーキが突然効かなくなって追突事故を起こしたケースも報告されています。このような予期せぬトラブルに備えるためにも、日頃から車両のメンテナンスを行い、ブレーキシステムの点検を怠らないことが大切です。
参考)『ブレーキが効かず追突事故を起こしてしまいました。ブレー..…
JAF公式サイトでは適切な車間距離の取り方について、停止距離の考え方を含めた詳しい解説が掲載されています。
goo自動車サイトでは、エンジンブレーキのかけ方とフットブレーキとの使い分けについて、具体的な場面を想定した実践的な情報が提供されています。

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