S660をベースにしたミニNSX「NS660」は、初代NSXの象徴的なデザインを細部まで再現しています。最も特徴的なのが、固定式のリトラクタブル風ヘッドライトです。このヘッドライトはNSXのアイデンティティであり、多くのクルマファンにとって懐かしい存在となっています。
エクステリアには、フロント・リアバンパースポイラー、フロント・リアフェンダー、サイドスカート、エアロエンジンフード、リアウイングが装着されており、全体として低く構えたアグレッシブなシルエットを実現しています。さらにNSXのテールランプも採用されており、ぱっと見ただけで初代NSXを思わせるデザインとなっています。
これらの変更により、S660のコンパクトボディに詰め込まれた90年代のスピリットが完全に蘇ります。SNSでも「ミニNSX」と称されるほど、初代NSX愛好家からの反応も非常に高いのが現状です。
NS660ボディキットのパッケージには、FRP素材を使用した本格的なエアロパーツ一式が含まれています。未塗装のFRP製パーツ、NSXのテールランプ、ヘッドライトの合計で構成されており、基本的なカスタムに必要な主要コンポーネントがセットになっています。
このキット内容には、塗装、取付、配線加工は含まれていません。購入後はカスタムショップや塗装工場での専門的な作業が必要になります。また、受注生産となるため、納期確認が不可欠です。さらに本格的なS660 ミニNSXに仕上げるには、フルサービス仕様も用意されており、後述の「WONDER NS660パッケージ」が別途提供されています。
ミニNSXの最大の特徴は、軽規格を超えた普通車登録です。初代NSXに近づけるためにボディサイズが拡幅され、もはや軽自動車の枠を超えています。この拡幅により、よりワイドで迫力のあるフォルムが実現されており、「本当に軽規格ベースか」と思わせるほどの存在感があります。
この設計思想は単なる見た目の変更ではなく、走行性能の向上にも直結しています。軽規格を超えることで得られるボディ剛性の向上、重量配分の最適化、そしてサスペンション設定の自由度が増します。結果として、S660本来のミッドシップ・リアドライブレイアウトの利点をさらに引き出せるようになります。
ミニNSXは単なるスタイルのカスタムに留まりません。実際に走行可能な本格的なスポーツカーとして機能します。2025年4月には富士スピードウェイでタイムアタックが実施され、雨天のコンディションにもかかわらず2分21秒の好タイムを記録しました。この成績は、軽規格ベースのカスタムカーとしては異例の実力を示すものです。
このタイムアタック結果から、NS660がショーアップのためだけではなく、実用的なサーキット性能を備えていることが明確になります。将来的には耐久レースへの参戦も予定されており、本格的なレーシングマシンとしての道を歩んでいます。また、ユーザーコミュニティ向けのツーリングやレースイベント企画も検討されており、S660 ミニNSXの文化的な広がりが期待されています。
NS660の販売は2種類の形態で展開されています。まずボディキット単体での販売は、未塗装FRP一式にヘッドライトとNSXテールランプを含めて143万円(消費税込)での提供です。この価格は、他のエアロパーツメーカーのボディキットと比較しても競争力のある設定となっています。
次に、より完全な形で納車を希望するユーザー向けには「WONDER NS660パッケージ」が用意されており、こちらは250万円となっています。このパッケージには塗装、取付、配線、車検取得、登録までのすべてが含まれており、納車後すぐにS660 ミニNSXを楽しめる利便性があります。
どちらを選ぶかは、ユーザーの知識レベルや予算、そしてカスタムの楽しさをどこまで求めるかによって異なります。キット単体での購入は、カスタムの過程を楽しみたい愛好家向けであり、パッケージはすぐに完成品で乗りたいユーザー向けです。
ミニNSXのカスタムモデルNS660の詳細情報:東京オートサロン2025での発表から市販化まで、2025年5月の予約受付開始、価格設定、ボディキットの構成について詳しく記載
NS660ボディキット販売ページ:FRPボディキット、NSXテールランプ、ヘッドライト、マフラーなどの具体的なキット内容と送料情報が記載
スポーツカーを検討する際、ミニNSXを含めたS660の立場を理解することは重要です。軽自動車のスポーツカーとしては、S660は独自の位置付けを持っています。最高出力64ps、最大トルク104N・mという控えめなスペック数値ですが、ミッドシップ・リアドライブレイアウトによる理想的な前後重量配分(45:55)が、軽自動車とは思えない走行性能を実現しています。
一方、軽規格内で他の選択肢を考えると、従来の軽スポーツカーはほぼ存在しません。かつてはダイハツ・コペンやスズキ・アルトワークスなどがありましたが、現在のラインアップは限定的です。このため、本格的なスポーツカー体験を求める軽自動車ユーザーにとって、S660は唯一無二の存在となっています。
S660、特にミニNSXカスタムは、強いコミュニティ意識が醸成されています。2025年のデビュー以来、SNSでは「かっこいい!」「欲しすぎる」といった肯定的な反応が集中しており、ユーザー間での期待値が非常に高いことがわかります。
WONDER(製造メーカー)も積極的にイベント企画を進めており、オーナー向けのツーリングやサーキット走行会の開催が予定されています。さらに耐久レースへの参戦も計画されており、単なる趣味のクルマではなく、本格的なレーシング文化を創出しようとしています。こうしたコミュニティの活動は、ユーザーの満足度向上につながり、中古市場での価値維持にも好影響を与える可能性があります。
ミニNSXは市販化されたばかりであり、中古市場でのデータがまだ豊富ではありません。しかし、初代NSXのコレクター需要、軽スポーツカーの希少性、そしてカスタムメイドの特別感から、将来的には高い価値維持が期待できます。
S660本体の中古価格相場は200万円前後で推移していますが、ミニNSXカスタムが加わることで、さらなるプレミアム価値が上乗せされる可能性があります。特に完成度の高いWONDER NS660パッケージは、その物語性と実績から、単なるスペック以上の価値が認識される傾向があります。
また、カスタムパーツの汎用性もポイントです。FRP製ボディキットは、他のS660オーナーへの販売や、部品単位での取引も可能です。こうした流動性の高さは、投資対象としての価値も生み出しています。
ホンダS660の歴代モデル・グレード別カタログ情報:S660の基本スペック、グレード展開、装備内容などの詳細が記載
S660 ミニNSXに搭載されるS07A型660cc水冷直列3気筒DOHCターボエンジンは、軽自動車の域を超えた実力を持つユニットです。最高出力64ps、最大トルク104N・mという数値は、一見控えめに見えますが、軽量ボディ(830~850kg)とのマッチングにより、力強い加速感が実現されます。
このエンジンの特徴は、低中速域での力強いトルク特性にあります。専用設計のターボチャージャーにより、低回転からの応答性に優れており、日常走行からサーキット走行まで、幅広いシーンで実用的な動力性能を発揮します。高回転域での伸びやかな出力特性も併せ持つため、エンジンのポテンシャルを最大限に活用できる設計となっています。
S660とミニNSXの根幹をなすのが、ミッドシップ・リアドライブ(MR)レイアウトです。このレイアウトは、エンジンがドライバーと乗客の間に搭載される方式で、国産車では珍しい配置となっています。前後重量配分が理想的な45:55を実現することで、高いハンドリング性能と運動性能が可能になります。
ミッドシップレイアウトのメリットは、低重心化、理想的な重量配分、そして操舵に対するクイックなレスポンスです。ミニNSXはこうした利点を最大限に活用して、スポーツカーとしての本質を追求しています。軽規格を超えたボディ拡幅によって、さらに安定性が向上し、高速走行時の信頼感が増しています。
S660には6速マニュアルトランスミッションと、パドルシフト付きの7速CVTの2種類が用意されています。マニュアルを選択すれば、軽自動車では初となる本格的な手動変速の楽しさが味わえます。操作感が直接的で、ドライバーの意思が明確にクルマに伝わる感覚は、何ものにも代えがたい体験です。
一方、CVTを選択した場合、SPORTスイッチがONになるとアクセルレスポンスが向上し、よりダイレクトな走りが楽しめます。日常走行ではスムーズな変速特性が活躍し、走行モードの切り替えでスポーティな走りと快適性を両立させられます。ミニNSXのサーキットタイムアタック成功には、こうしたトランスミッション選択の自由度と、その実力が大きく寄与しています。
軽スポーツカーでありながら、S660はWLTCモード燃費で20~20.6km/Lを達成しています。これは同クラスのターボエンジン搭載車としては優秀な数値です。ミニNSXのカスタムでも、基本的なエンジン性能は変わらないため、この燃費性能は維持されると考えられます。
スポーツカーとしての走行性能と、実用的な燃費性能の両立は、日常使用でのストレスを軽減します。サーキット走行会後の帰宅時にも、極端な燃費悪化を気にしすぎることなく運転できるのは、実用的なスポーツカーの大きなメリットです。
ミニNSXが生まれた背景には、1990年代の国産スポーツカー黄金期への強い想いがあります。その時代は、ターボ全盛、ハイカムVTEC全盛の時代であり、ゼロヨンレースや峠での走行が話題になるほど、クルマ文化が活況を呈していました。
WONDER(NS660の製造元)は、あの熱狂を現在の令和に蘇らせようとしています。30年の時を経た今、ミニNSXはそのスピリットを見事に再現し、当時を知る世代にも、まだ見ぬ若い世代にも「走る歓び」を再インストールしようとしているのです。
このコンセプトの成功は、2025年1月の東京オートサロンでの反応の大きさ、そして続く2025年5月の市販化による予約受付の好況ぶりから明らかです。単なるノスタルジアではなく、現代に求められるスポーツカー文化の再構築が実現されています。
ミニNSXのボディキット単体での購入を選択した場合、カスタムショップや塗装工場の専門知識が欠かせません。FRPパーツの修正加工、車体への装着精度の調整、配線加工による電装部品の統合、そして塗装の仕上げなど、多くの技術が必要になります。
このプロセスは、単なる装着ではなく、個々のカスタムショップの技術力と経験が大きく影響する部分です。信頼できるショップを選択することが、最終的なミニNSXの完成度を大きく左右します。また、愛車に対する強い想いを持つオーナーと、それを実現するカスタムショップのコラボレーションは、一種の文化的な広がりも生み出しています。
初代NSXが1990年代に果たした役割は、国産スーパースポーツカーの高性能を世界に示すことでした。対するミニNSXは、その役割を「軽量・コンパクトながら本格的なスポーツカー体験」として再定義しています。
初代NSX登場時代には、軽自動車は実用的な足として位置付けられており、スポーツカー的な価値は考えられていません。しかし、現在のミニNSXは、軽規格の制約を超えてまで、スポーツカーとしての本質を追求する姿勢を示しています。これは、カスタムカルチャーの進化とともに、軽自動車のポテンシャルが再評価されていることを意味します。
ミニNSXは、若い世代へのクルマ文化の継承装置としても機能しています。1990年代を体験していない若い世代にとって、ミニNSXの存在は、その時代の「走る歓び」を直接体験できる貴重な入口となります。
SNSでの高い反応ぶりから、特に若年層での関心の高さが窺えます。この関心が実際のオーナーシップや、サーキット走行会への参加へと繋がれば、新しいスポーツカー文化の担い手が育成される可能性があります。さらに、ユーザーコミュニティの形成やイベント開催によって、クルマを軸とした社会的つながりが生まれることも期待できます。