スロットルを全開にしなくてもVVELはエンジンを止める可能性があります。
VVEL(Variable Valve Event and Lift)は、日産自動車が開発した連続可変バルブリフト・作動角機構のことです。従来の内燃機関ではスロットルバルブ(絞り弁)によって吸入空気量を調整していましたが、VVELはその概念を根本から変えています。
スロットルバルブを最小限にしか使わず、吸気バルブのリフト量と作動角を連続的に変化させることで吸入空気量をコントロールします。これがVVELの最大の特徴です。
通常エンジンはスロットルを絞ると、ピストンが吸気を引き込もうとしても空気が入りにくくなり「ポンピングロス」と呼ばれるエネルギー損失が発生します。このロスはアイドリング付近や低負荷走行で特に大きく、燃費悪化の主要因の一つとされていました。VVELはこのポンピングロスを大幅に低減することで、燃費とレスポンスを同時に向上させる設計になっています。
仕組みとしては、カムシャフトとロッカーアームの間に「中間ロッカーアーム」および「コントロールシャフト」を介在させており、ステッピングモーターがコントロールシャフトの角度を変えることで、バルブの開き量を無段階に調整します。これはちょうど水道の蛇口を少しずつ回すような感覚で、全開から全閉手前まで滑らかに制御できるイメージです。
つまり、アクセル操作に対する応答がスロットルバルブ経由よりも直接的になるということです。
日産がこの技術を公式に発表したのは2007年で、同年登場したスカイライン(V36型)のVQ37VHRエンジンに初搭載されました。VQエンジンは北米の自動車専門誌「ワーズオート」が選ぶ「10ベストエンジン」に10年以上連続でランクインした実績を持つエンジンです。そのVQをさらに進化させたのがVVELとの組み合わせでした。
VVELが実際にどれほどのパフォーマンス向上をもたらすのか、数字で確認しておきましょう。
日産の公表データによれば、VQ37VHRエンジン(3.7L V6)でVVELを採用したことにより、先代のVQ35DEエンジンと比較してポンピングロスを約40%低減しています。これが燃費改善に直結し、JC08モード燃費で従来比約10〜13%の向上が達成されたとされています。
出力面でも顕著な効果が出ています。スカイラインクーペ(V36型)に搭載されたVQ37VHRは333ps(約335馬力)を発揮し、先代のVQ35HRの313psを大きく上回りました。排気量が3.5Lから3.7Lに拡大したことも一因ですが、VVELによるバルブタイミング最適化が高回転域での吸気効率を向上させたことが大きく影響しています。これは使用できる。
同じVQ37VHRを搭載するフェアレディZ(Z34型)では、0-100km/h加速が約5.2秒という数値をマークしています。これは2リッタークラスのターボ車と同等以上の加速力で、NAエンジンとしては異例のレスポンスと言えます。
また、アクセルのツキ(レスポンス)の良さもVVELの特徴です。スロットルロスがないため、アクセルを踏んだ瞬間の応答遅れが従来比で大幅に短縮されます。電子スロットルとVVELを組み合わせることで、ドライバーの意図をほぼリアルタイムでエンジンに伝えられます。これは使えそうです。
燃費だけでなく、ドライバビリティの向上も見逃せないポイントです。
参考として、日産VQ37VHRエンジンの詳細スペックは日産公式サイトや自動車専門メディアで確認できます。
VVELはすべての日産車に搭載されているわけではありません。現在確認されている主なVVEL搭載モデルと搭載エンジンをまとめます。
| 車種名 | 型式 | エンジン | 搭載時期 |
|---|---|---|---|
| スカイライン(クーペ・セダン) | V36型 | VQ37VHR | 2007年〜 |
| フェアレディZ | Z34型 | VQ37VHR | 2008年〜 |
| フーガ | Y51型 | VQ37VHR | 2009年〜 |
| シーマ | F50後期型 | VK45DE | 一部仕様 |
| インフィニティG37 | V36型 | VQ37VHR | 2007年〜 |
| インフィニティEX37 | J50型 | VQ37VHR | 2008年〜 |
これが現状の搭載ラインナップです。
注目すべきは、VVELが3.7LのVQ37VHRエンジンに特化して採用されているという点です。日産の中でも比較的排気量の大きいFRベースの高級・スポーツ路線のモデルに絞って展開されており、軽自動車やコンパクトカーには採用されていません。
一方で、北米市場向けのインフィニティブランド(現在はインフィニティ表記)にも同じVQ37VHR搭載モデルが存在します。G37やEX37がその代表例で、これらは日本国内のスカイラインやフーガと基本的に同じエンジンを使用しています。つまりVVELは国内外共通の技術基盤となっています。
後継技術として、日産はVC-Turbo(可変圧縮比ターボエンジン)を2016年に発表し、これをセレナや北米向けアルティマに順次搭載しています。VVELからVC-Turboへ、という技術の流れを知っておくと、日産のエンジン開発戦略がより深く理解できます。
VVELは精密な機械制御を伴う技術であるため、故障すると深刻な症状が出ることがあります。ここは要注意なポイントです。
最も報告が多い故障はVVELアクチュエーター(ステッピングモーター)の不具合です。アクチュエーターが正しく動作しないと、バルブリフト量のコントロールができなくなり、エンジン警告灯の点灯、アイドリング不安定、加速時のもたつき、最悪の場合はエンジン始動不能といった症状が現れます。
修理費の目安は以下の通りです。
- アクチュエーター単体交換:工賃込みで15〜25万円前後(ディーラー整備の場合)
- 周辺のリンク機構や軸受けも損傷している場合:30万円以上になるケースも報告されている
- 中古部品を使った社外修理:10〜15万円程度に抑えられる場合もある
30万円超えは痛いですね。
予防策として、エンジンオイルの管理が最も重要です。VVELのコントロールシャフトや中間ロッカーアームは精密な油膜に依存して動作するため、オイル管理が粗いとメタルの摩耗や焼き付きが早まります。日産がVVEL搭載車に推奨するオイル粘度は0W-30または5W-30の全合成油で、交換サイクルは5,000〜7,500kmを目安にするのが安全です。
スカイライン(V36)のオーナーズクラブや日産公式フォーラムでは、10万km超で異音や警告灯が点灯したという報告が複数見られます。中古でVVEL搭載車を購入する際は、走行距離だけでなくオイル管理の履歴を確認することを強くおすすめします。
修理費の見積もりを複数取る場合は、日産ディーラーと並行して日産・インフィニティ系に強い専門ショップにも相談することで、コストを大きく抑えられる場合があります。
可変バルブ技術はホンダのVTEC、トヨタのVVT-iなど各メーカーが独自に開発しています。VVELはこれらとどう違うのか、整理しておきましょう。
まずホンダのVTECは、低回転用と高回転用の2種類のカムプロフィールを切り替える「段階的」な方式です。有名な「VTEC kicked in」という感覚はこの切り替え時のパワーバンドの変化から来ています。一方でVVELは段階ではなく無段階の連続制御である点が根本的に異なります。
トヨタのVVT-iはバルブタイミング(開閉のタイミング)を連続的に変化させますが、リフト量(バルブの開き量)は固定です。後継のVVTL-iやValvematicではリフト量の可変も取り入れましたが、スロットルバルブをほぼ廃止してリフト量だけで制御するという思想はVVELほど徹底していません。
これが差別化のポイントです。
VVELの最大の独自性は「スロットルバルブをほぼ不要にした」という設計思想にあります。他社の可変バルブ機構は多くの場合、スロットルバルブと組み合わせて使用しており、ポンピングロスを完全には排除できていません。VVELはこれをほぼゼロに近づけることを目標に設計されており、概念としてはBMWのバルブトロニックに近いアプローチです。
ただし、精密さゆえのコスト増と整備の難易度上昇も伴います。BMWのバルブトロニックも修理費が高額になりやすいことで知られており、VVELも同様の傾向があります。
技術の優劣だけでなく、維持コストも含めてトータルで判断することが重要です。
WebCG(自動車総合情報サイト):各メーカーのエンジン技術比較記事を多数掲載
ここでは多くのオーナーが見落としがちな、VVELの特性に関するあまり知られていない注意点を紹介します。意外ですね。
一つ目は低温時のアクチュエーター動作遅延です。VVELのステッピングモーターとコントロールシャフトは精密な機械部品であるため、気温が0℃を下回る環境では潤滑油の粘度上昇により、冷間始動直後に動作が安定するまで若干の時間がかかります。このため、厳冬期に冷間始動直後に急加速を繰り返すと、アクチュエーターへの負荷が増大し早期摩耗の原因になりえます。
これは北海道や東北などの寒冷地オーナーに特に関係する情報です。
対策としては、エンジン始動後に1〜2分程度は急加速を控え、水温計が動き始めてから走り出す「暖機運転の習慣」を持つことが有効です。現代の車では暖機運転は不要とされることも多いですが、VVELのような精密制御機構を持つエンジンでは例外的に有効な習慣と言えます。暖機運転が条件です。
二つ目の注意点は、アイドルストップシステムとの相性です。VVELはバルブリフトを連続制御するため、再始動時にアクチュエーターがゼロ位置から迅速に立ち上がる必要があります。VQ37VHR搭載モデルにはメーカー純正のアイドルストップシステムが設定されていませんが、後付けでアイドルストップ系の改造を行った場合、VVELアクチュエーターへの頻繁な起動・停止サイクルが寿命を縮める可能性があります。
後付けアイドルストップキットの取り付けはVVEL搭載車には推奨されません。これだけは覚えておけばOKです。
三つ目として、VVELはコントロールシャフトの位置センサーをECUで常時監視しています。センサーの汚れや断線でエラーコードP0020やP0014系が記録されることがあり、これがVVEL関連の警告灯点灯の一因にもなります。イグニッションオンで警告灯が点灯した場合は早めにOBD2スキャナーでコードを読み取ることを推奨します。OBD2対応のスキャナーはカー用品店で5,000〜15,000円程度で入手でき、ディーラーへ持ち込む前の事前確認に役立ちます。
日産オーナーズポータル:整備・点検・リコール情報の確認が可能

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