2025年10月に開催されたジャパンモビリティショー2025で世界初公開されたトヨタ新型センチュリークーペは、従来のセンチュリーのイメージを一新する斬新なデザインが特徴です。全長5,000mm×全幅1,990mm×全高1,430mmというボディサイズにより、ロングノーズ&ショートデッキのスポーティなプロポーションを実現しながらも、5mの全長により最上級ラグジュアリークーペとしての快適性を確保しています。
ルーフからリアにかけては非常に流麗なラインが描かれ、従来のセダン形状から大胆に進化しています。ショーケースではセンチュリー新型クーペの象徴として、燃えるような朱色が採用されており、前後バンパー下部はグロスブラックでコントラストを演出。この配色により、引き締まった印象とダイナミックな存在感が両立されています。
セッティング細部にこだわる設計思想は、フロント中央の鳳凰エンブレムにも表れています。この鳳凰エンブレムは、工匠が金型を丁寧に手で彫り込み、躍動する翼のうねりや繊細な羽毛の表情が鮮やかに描き出されます。また、日本の伝統文様である「七宝文様」や、トヨタのルーツである自動織機に由来する「糸を紡ぐイメージ」も随所にあしらわれ、日本文化への敬意が貫かれています。
センチュリー新型クーペで最も注目すべき機構が、左側に採用された前後スライド式の観音開きドアです。従来のスライドドア技術を進化させ、2分割の両開きタイプを採用することで、見た目の美しさと高い実用性を両立させています。この「現代的に解釈された観音開きドア」は、乗降性を大幅に向上させるとともに、ドアが開いたときのスタイリングの良さをも実現しています。
右側は通常のヒンジドアとする非対称設計により、ショーファーカーとしての使用時における乗客の利便性と、ドライバーズカーとしての操る楽しみのバランスが取られています。このドア設計は、乗降時のしぐさまで含めた「One of One(唯一無二)」の思想を具現化したものとなっています。
空力性能も忘れてはいません。ルーフから滑らかにボディ後端へとつなぐデザインにより、スポーティな印象とともに空力性能がアップされています。これは単なる美的配慮ではなく、高速走行時の安定性向上にも直結する機能設計です。
新型センチュリークーペの内装設計は、ショーファーカーとしての3人乗車を基本としています。左右独立の後席設計により、VIP乗客の快適性を最優先。特に左側の後席は大きく前後にスライドする機構を備えており、航空機のファーストクラスをイメージした広く大きな空間を贅沢に使用した設計となっています。
運転席側と助手席で異なる仕立てが施され、運転席は異型ステアリングとトップマウントメーターにより操る楽しみを感じさせます。一方、助手席はリクライニング機構とオットマンを装備し、くつろぎの空間を演出。クーペでありながら、このようなフレキシブルな室内空間を実現した点は、トヨタの設計思想の革新性を象徴しています。
コクピットデザインは従来のセンチュリーと比較してかなりシンプルに進化。物理的なスイッチはほとんど排除され、複数の液晶パネルがドライバーに情報を伝達します。ブラックバタフライ的なデザインコンセプトが大きく採り入れられ、ショーファーカーでありながら新たな世界観を提示しています。
さらに驚くべき装備として、ロールス・ロイスを意識したと思われる専用アンブレラが搭載されており、世界最高峰ブランドを本気で目指す姿勢が随所に表れています。シートはヘッドレスト&ベルト一体型で、あらゆる体型にフィットする設計。回転機構を備えることで乗降性を大幅に向上させています。
新型センチュリークーペに搭載されるのは、V型6気筒3.5Lエンジンと2基の電気モーターを組み合わせた最新プラグインハイブリッドシステムです。このパワートレインの出力構成は実に興味深く、エンジン出力262ps/34.2kgm、フロントモーター出力182ps/27.5kgm、リアモーター出力109ps/17.2kgmであり、システム合計出力は412psに達します。
電気式無段変速機とE-Four Advanced AWD(4WD駆動方式)により、大柄なセンチュリー新型クーペのボディをスムーズかつパワフルに加速させます。0-100km/h加速は約5秒と推定されており、最上級ラグジュアリークーペとは思えないパフォーマンスを実現しています。
EV航続距離は80kmを確保し、通勤や日常使用の大部分をEVモードでカバー可能です。WLTCモード燃費は16.0km/L程度が見込まれており、走行性能と快適性を重視しながらも優れた環境性能を両立させています。
四輪操舵システム「ダイナミックリヤステアリング」が採用され、低速域では取り回しの良さ、中高速域ではシームレスかつ自然なハンドリングを実現。AVS機能付電子制御エアサスペンションにより、ソフトで目線の動きが少ないフラットな乗り心地が実現されています。
新型センチュリークーペには、トヨタの予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)」が標準搭載されます。このシステムは、前方の車両や歩行者(昼間)を検知し、衝突回避支援または被害低減を図る「プリクラッシュセーフティ(PCS)」機能を備えています。
さらに、車線を逸脱する可能性があると判断した場合に、警報を発するとともにステアリングを制御する「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御機能付)」機能も搭載。これは、スポーティな走行性能を備えたクーペモデルだからこそ重要な安全機構です。
ヘルプネット(エアバッグ連動付)を採用し、事故や急病時には専門のオペレーターが警察や消防に取り次ぎます。エアバッグ作動時には自動でオペレーターに接続し、車両データを基に重症度を推定し、ドクターヘリ等の早期出動判断を行うD-Call Netにも対応。最上級車にふさわしい先進安全技術により、乗員の安全を最大限に確保しています。
新型センチュリークーペの想定価格は約2,500万円です。これは、センチュリーサルーン(2,008万円)とセンチュリーSUV(2,700万円)の中間に位置する価格設定となっており、3つのボディタイプにより顧客のニーズを幅広くカバーするポジショニングが取られています。
発売時期は2027年が予定されており、現在はコンセプトカーの段階です。トヨタはセンチュリー新型クーペによってセンチュリーシリーズのラインナップを拡大し、「最上級車」から「最上級ブランド」へと進化させる戦略を推進しています。
興味深い点として、ジャパンモビリティショー2025では、センチュリーオリジナルグッズも展示されています。鳳凰をあしらったクッションやキーリング、子ども用のミニカー(玩具)まで用意されており、ライフスタイルブランドとしての展開も視野に入れていることが伺えます。これは、単なる自動車メーカーから「最上級ブランド企業」への転換を示唆する動きです。
新型センチュリークーペのコンセプトは、トヨタが「最上級車」から「最上級ブランド」への進化を目指す明確な姿勢を表しています。ロールス・ロイスやベントレーといった欧州の伝統的ラグジュアリーブランドにはない、日本の美意識と匠の技術を融合させた唯一無二の価値提案がそこにあります。2027年の正式発売に向けて、さらなる注目が集まることは間違いないでしょう。
【参考リンク】
日本最高峰ラグジュアリーカーの歴史と最新動向について詳しく解説
トヨタ新型センチュリークーペ 最新スペック情報
トヨタ公式ジャパンモビリティショー2025での展示内容と技術解説
JMS2025 センチュリークーペ世界初公開
センチュリーブランドの歴史的背景と新モデルの位置付けに関する詳細情報
トヨタ新型センチュリークーペ 徹底解説ガイド

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