トヨタ・レーシング・ディベロップメントの歴史と魅力とパーツ

トヨタのモータースポーツを支えるTRDは、60年以上の歴史を持つ名門チューニングブランドです。レース活動で培われた技術はどのように市販パーツに活かされているのでしょうか?

トヨタ・レーシング・ディベロップメントの全貌

この記事で分かること
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TRDの歴史と発展

1950年代の中古車整備会社から始まり、現在まで続くモータースポーツの系譜

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カスタムパーツの特徴

レーシング技術をフィードバックした高品質なチューニングパーツの数々

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コンプリートカーの魅力

本格的なレーシングスペックを持つ市販可能なコンプリートカーの世界

トヨタ・レーシング・ディベロップメントの歴史と成り立ち

トヨタ・レーシング・ディベロップメント(TRD)のルーツは、1954年に創立された「トヨペット整備株式会社」まで遡ります。当時は新車の供給が不足していた時代で、中古車の再生事業を行う企業としてスタートしました。1956年には朝日新聞社による「ロンドン・東京5万キロ・ドライブ」や、1957年の豪州一周ラリーで使用されたトヨペット・クラウンの改造を手掛けるなど、早くからモータースポーツ活動に関わってきました。
参考)サーキット産まれ、サーキット育ちの『TRD』が魅せる、各種ア…

1965年には、TRDの前身となる「特殊開発部」が設立され、芝浦工場に「スポーツコーナー」も設置されました。この時期から本格的なモータースポーツへの取り組みが始まり、翌1966年には映画『007は二度死ぬ』に登場するトヨタ「2000GT」の開発にも携わりました。1976年には商標を「TRD(トヨタ・レーシング・デベロップメント)」へと改め、現在に至るブランドの基礎が確立されました。
参考)「TRD」のルーツは1950年代にあり!中古車再生から始まっ…

1990年には社名が「トヨタテクノクラフト株式会社」に変更され、2018年4月には株式会社トヨタモデリスタインターナショナル及び株式会社ジェータックスと統合し、「株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD)」が誕生しました。さらに2024年12月25日には、モータースポーツ事業を新設会社に承継させる形で「株式会社トヨタガズーレーシングディベロップメント(TGR-D)」が設立され、約60年の歴史とノウハウを継承しながら新たな展開を迎えています。
参考)トヨタ カスタマイジングhref="https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1641012.html" target="_blank">https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1641012.htmlamp;ディベロップメント、モータースポー…

トヨタ・レーシング・ディベロップメントのモータースポーツ活動

TRDは日本国内を中心に、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、カスタマーレーシング、グラスルーツモータースポーツなど、幅広いモータースポーツ活動を展開しています。スーパーGTにおいては、レーシングカーの開発をTRDが担当し、実際のレーシングチームとしての運営は各トヨタ系チームに任せるという独自の体制を取っています。またスーパーフォーミュラのエンジンも、TRDが開発と供給を行ってきました。
参考)「GR」と「TRD」はなにが違う?

1981年には「スターレット(KP61)」によるレースを企画・開催し、日本におけるワンメイクレースの先駆けとなりました。現在も86/BRZレースやVitzレース、ラリーチャレンジなどのグラスルーツモータースポーツを主催し、モータースポーツの裾野を広げる活動を続けています。こうしたレース活動で培われた技術やノウハウは、市販車の開発やカスタムパーツへとフィードバックされ、「もっといいクルマづくり」に貢献しています。
参考)(株)トヨタガズーレーシングディベロップメントの会社概要

TGR-Dの代表取締役社長である寺尾健二氏は、「TGR-Dでしか生み出せないモータースポーツの価値と力で『未来のモビリティ社会実現』を進める」と述べており、海外の関連会社との連携を強化し、世界選手権(F1、WECなど)との技術交流も進めています。サステナブルなモータースポーツ実現に向けたカーボンニュートラルへの挑戦も継続しており、様々な最新テクノロジーを用いた取り組みが行われています。
参考)(株)トヨタガズーレーシングディベロップメントの新卒採用・会…

トヨタ・レーシング・ディベロップメントのカスタムパーツの特徴

TRDのカスタムパーツは、レーシングエンジンの開発ノウハウをフィードバックした高品質な製品が特徴です。エアロパーツ、足回り、ホイールなど多岐にわたるパーツを展開しており、車の印象を一気に変えられる製品が人気です。TRDパーツを選ぶメリットとして、車本体と一緒にローンが組める点、トヨタが認めているカスタムパーツであるため保証がある点、車種に適合するパーツを探しやすい点、車検対応のパーツが多い点などが挙げられます。
参考)ENGINE

特に注目すべきは「パフォーマンスダンパー」です。これはヤマハ発動機と共同開発した製品で、ボディの前後に装着することで走行時に発生するボディの変形を抑え、微振動を減衰・吸収する効果があります。「ザラザラ」「ブルブル」といった不快な振動・騒音が解消され、乗車中の快適性が向上します。操舵力のデータ解析によれば、パフォーマンスダンパー装着後は操舵トルクが高くなり、ステアリングからのインフォメーションが向上することで、より正確なステアリング操作が可能になります。
参考)パフォーマンスダンパーhref="https://www.trdparts.jp/product/performance_damper/" target="_blank">https://www.trdparts.jp/product/performance_damper/amp;reg;(パフォーマンスダンパーhref="https://www.trdparts.jp/product/performance_damper/" target="_blank">https://www.trdparts.jp/product/performance_damper/amp;r…

足回りでは、40段階の減衰力調整機構と全長調整式機構を備えたハイスペックなダンパーがカヤバ製で提供されています。スプリングは「樽型形状」を採用し、リバウンドストロークを確保しながら適切なバネレートに設定されています。エアロパーツでは、アルミテープを裏面に貼ることでボディ表面の帯電を減らし、空気の流れを整流する技術が採用されています。これにより直進安定性やヨーの抑制といった効果が得られます。エンジンチューニングパーツも充実しており、バルブスプリング、カムシャフト、カムシャフトタイミングプーリーなど、エンジンの特性を左右する重要なパーツが用意されています。
参考)新感覚サスペンション装着のTRDチューンGRスープラは異次元…

トヨタ・レーシング・ディベロップメントのコンプリートカーとGRパーツ展開

TRDは長年にわたり、本格的なコンプリートカーを製作してきた実績があります。代表的な例として、1994年に発表された「TRD3000GT」があります。これはJZA80型スープラをベースに、全日本GT選手権に参戦するGTカーとほぼ同じレーシングエアロカウルを装着したもので、ボディは最大片側30mm拡大される本格的な仕様でした。フロントエアダクトから導入された冷却用エアをフード上の負圧によって排出するなど、レース車両開発で培われた技術が惜しみなく投入されていました。
参考)エンジンまで手が入った「本格派」だらけのTRDコンプリートカ…

同様に「TRD2000GT」は、2代目MR2をベースにしたコンプリートカーで、こちらも片側30mmのワイドフェンダーをはじめとした迫力のボディパーツが装着されていました。さらに興味深いのは、タクシーでお馴染みのコンフォートをベースにした「コンフォートGT-Z」です。3Sエンジンとスーパーチャージャーを組み合わせた2LエンジンにFRレイアウト、5速マニュアルミッションという本格的なスポーツ仕様で、オプションでTRD製強化クラッチやLSDも用意されていました。
参考)600万円超えの「86」に激速タクシーのような「コンフォート…

近年では、TRDのエアロパーツなどが「GRパーツ」ブランドとして展開されています。2025年2月には、ハイエース用のTRDエアロパーツがGRパーツブランド化され、トヨタカスタマイジング&ディベロップメントが展開しています。GRパーツは、トヨタ車およびレクサス車向けに、エクステリアパーツから機能系パーツまで幅広くラインナップされており、GR86、ヤリスハリアーなど人気車種に対応した製品が多数用意されています。これらのパーツは新車購入時にディーラーで装着できるため、純正品質の安心感とともにカスタマイズを楽しめるのが特徴です。
参考)https://uppit.upgarage.com/column/trd/

トヨタ・レーシング・ディベロップメントのパーツが持つ独自の技術

TRDパーツの技術的優位性の一つに、YAMAHA開発の「TRAS(Through Rod Advanced ショックアブソーバー)」があります。従来のダンパーが押し込むと反力で伸び側に戻るのに対し、TRASは引っ張ると反力で縮み側に戻るという特殊な構造を持っています。この技術により、路面の突き上げをいなしながらロードホールディングも高める効果があり、連続してマンホールの凹凸がある路面を通過する際にも車が跳ねず、常にタイヤの接地感が正確に得られます。
参考)TRDチューンのGRスープラ&無限が煮詰めたシビック タイプ…

ディーゼルエンジンのチューニングでも、TRDは高い技術力を発揮しています。例えば2.8リッターのディーゼルターボエンジンを、最高出力260PS、最大トルク700N・mにまで高めるチューニングを行っており、トルコンの6段ATで変速を行う仕様も実現しています。エンジンチューニングでは、吸入する空気量を増やすためにカムの作用角を広くしたカムシャフトや、厚さを変更することで理想的な圧縮比を可能にするメタルガスケットなど、レーシングエンジン開発のノウハウが活かされています。
参考)2021ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:TRD…

TRDターボプランでは、ノーマル比で最高出力約30kW(41ps)、最大トルク55N・m(5.6kg・m)のパワーアップが可能で、bB、イスト、ヴィッツRSのパフォーマンスが飛躍的に向上します。ハイエース用のパーツでは、トラックとは思えない乗り心地を実現するカスタムパーツが人気で、パフォーマンスダンパーセットは11万円で提供されています。マフラーでは「ハイレスポンスマフラーVer.S」が用意され、エンジンに合ったチューニングが施されています。これらの製品は、TRDが長年モータースポーツで培ってきた技術を一般ユーザーでも体感できる形で提供しており、メーカー直系ブランドならではの品質と安心感が魅力となっています。
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