2023年3月22日、トヨタが国内市場でのカムリ販売終了を発表しました。この衝撃的なニュースは、日本経済新聞が最初に報道し、その後大手メディアが相次いで追従しました。1980年の初代「セリカ・カムリ」から数えて43年間、日本自動車市場の象徴的存在であったこの車が、ついに国内販売から撤退することになったのです。
当時、トヨタから正式なアナウンスはなされていませんでしたが、販売店への通達により事実が確認されました。2022年8月に行われた最終改良から間もなく、受注が停止され、2023年12月までに生産が終了することが決定されたのです。同じく終売が報じられたC-HRと異なり、公式HPでの発表はありませんでしたが、ディーラーの動きから国内市場撤退は確実なものでした。
カムリの国内生産終了を決定させた最大の要因は、販売台数の著しい低迷です。日本自動車販売協会連合会のデータによると、2021年度の販売台数は8,933台で1万台に届かず、2022年度には6,000台に満たない水準にまで落ち込みました。月平均では約480台という数字は、トヨタの全ラインアップの中でも下位に位置する悲劇的な状況を示しています。
この数字を他の車種と比較すると、2022年9月登場のクラウンクロスオーバーが4カ月間で17,766台、プリウスが28,270台、カローラセダンが9,740台を売上げました。同じセダン系車種との比較でも、カムリの販売台数はあまりに少なく、トヨタ経営陣にとって国内市場での存在意義を失わせるに至りました。特に2022年はロシアによるウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンの混乱も影響しましたが、これは想定外の急激な低下を生じさせました。
グローバル市場ではわずか1%の日本市場における販売。トヨタの経営効率化を考えると、採算性の低い車種をラインアップから外すのは当然の経営判断でもあったのです。
カムリの販売終了の背景には、日本市場全体で進行する「セダン離れ」という構造的な変化があります。1990年代から2000年代初頭にかけて、日本市場ではセダンが新車販売の大きなウェイトを占めていました。しかし近年、SUVやクロスオーバー、ミニバンといった多目的車の人気が急速に高まり、従来型セダンの市場シェアは激減しています。
消費者ニーズの多様化と変質により、「大型セダン=成功者のステータスシンボル」という時代の方程式は完全に消えました。日本市場では実用性と多機能性を備えたSUVやミニバンが家族層や実用層に選ばれ、一方でスポーツカーやコンパクトカーが限定的な需要を担うという市場構造へ転換したのです。トヨタがこうした市場動向を考慮し、採算の見込めないカムリを生産終了する決断は、単なる一社の経営判断ではなく、日本市場全体の消費者ニーズの反映でもあるのです。
クラウンもセダンからSUVプラットフォームへの転換を余儀なくされており、トヨタ自体がセダン市場の衰退に対応するラインアップ転換を進めている状況が見えてきます。
興味深いことに、カムリの販売終了は「日本国内限定」です。グローバル市場、特に北米ではカムリは依然として堅調な売上を保持しています。2022年の全世界販売台数は約60万台に達し、この数字からもグローバルでの人気の高さが明確です。
北米市場ではカムリは中型セダン市場での主力モデルであり、家族向けセダンとしての地位を確立しています。2023年型の新型カムリはハンマーヘッドをモチーフにしたフロントデザイン、コの字型のLEDヘッドライトを採用し、スポーティな外観を実現させました。全モデルがハイブリッド仕様となり、第5世代ハイブリッドシステムを搭載しています。このシステムは2.5リットルの直列4気筒ガソリンエンジンとモーター、リチウムイオンバッテリーを組み合わせ、FFと電動オンデマンド4WDの両方に対応しています。
日本国内のみの撤退という戦略的決定により、トヨタはグローバル市場でのカムリの競争力を維持しながら、採算性の低い日本市場から効率的に撤退するという二兎を追うことに成功したのです。
1980年の初代「セリカ・カムリ」登場から2023年の生産終了まで、カムリは43年以上にわたって日本の自動車文化の一部でありました。この長い歴史の中で、カムリは何度も世界的なベストセラーカーの座に就いており、トヨタ自動車の看板商品として重要な役割を果たしてきたのです。
当初はセリカの高級化版というポジションから始まり、やがて独立した中型セダンとしての地位を確立。バブル期には「成功者のセダン」というイメージを定着させ、多くのビジネスマンや経営者に選ばれました。特に1980年代から1990年代のピーク時には、日本市場でも相当な販売台数を記録し、トヨタの利益を支えた重要な車種でした。
しかし2000年代以降、市場の多様化が進むにつれ、その存在感は次第に薄れていきました。最終的に2023年の販売終了に至ったわけですが、この退場もまた、日本の自動車市場の時代的な変化を象徴する出来事となっています。トヨタのラインアップからセダンという一つの時代が消えようとしている現在、カムリの終売はその象徴的な終焉を示しているのです。
参考資料として、トヨタの公式販売データ推移やディーラー動向については、業界ニュースサイトを参照ください。
https://bestcarweb.jp/news/618740
カムリの販売終了経緯と国内市場での販売動向、グローバル市場での位置付けについて、詳細な取材情報が掲載されています。トヨタディーラーへの取材に基づいた一次情報が豊富です。
https://car-knowledge.jp/camry-soldout/
カムリの概要から生産終了の時期・理由、海外での販売状況、同時期に終売となった他車種との比較情報が網羅的にまとめられています。セダン市場の構造的変化についても解説されています。
十分な情報が得られました。これから記事を作成します。
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