新型エルグランドの内装開発には、「移動そのものの質を高める」という明確なコンセプトが貫かれています。これまでのミニバンは実用性を最優先としてきましたが、新型では高級ホテルのプライベートラウンジのような落ち着いた空間演出へと大きく転換。トヨタ・アルファードやヴェルファイアが「押し出しの強い豪華さ」を特徴とするのに対し、新型エルグランドは「静かで品のある高級感」という全く異なる価値観を追求しています。
この思想は、素材選定からパネルの質感、照明の演出に至るまで、あらゆる細部に反映されています。特に注目すべきは、日本の伝統工芸である組子(くみこ)の幾何学模様をエクステリアの組子パターンと統一感を持たせてキルティングをドアトリムに施している点。これは外装と内装が一貫性のある世界観を構築していることを意味し、乗員が車に乗った瞬間から、日本の伝統美と最新テクノロジーが融和した空間へ包み込まれるのです。
さらに新型エルグランドの内装色として用意されている「紫檀」という深い紫とブルーのコンビネーションは、高級和風家具に使用される貴重な木材の名前から取られたもの。この配色は単なる美的選択ではなく、「大人のくつろぎ」を具体的な色彩で表現した戦略的な選択なのです。
センターディスプレイとメーターの統合は、新型エルグランドが実現した大きな技術革新です。従来のミニバンでは、ナビゲーション周辺が雑然としやすく、操作性も散在していました。しかし新型エルグランドは、国内乗用車では初となる14.3インチの大型統合型インターフェースディスプレイをセンターとメーター両側に配置することで、この問題を根本から解決しています。
このディスプレイシステムの特筆すべき点は、単なるサイズアップではなく、インパネの横基調設計と完全に統合されていることです。横一文字に流れるような視線の先に、自然とディスプレイが入ってくるデザインになっており、ドライバーの視線移動を最小限に抑えながら必要な情報へアクセスできます。これは多くのドライバーが長時間運転時に感じる疲労を軽減する、実用的な配慮なのです。
さらに、木目調パネルと一体化した静電式スイッチの採用は、操作性と美的価値を両立させた工業デザインの傑作といえるでしょう。従来のプッシュボタン式では避けられない「機械的な印象」が払拭され、光を感知して反応するスイッチが、触れる者に対して一種の「儀式的な快感」をもたらします。このような細部へのこだわりが、新型エルグランドを単なる高級ミニバンから「大人のためのプレミアムビークル」へ昇華させているのです。
座席構成の改革は、新型エルグランドの内装戦略における最大のターニングポイントです。従来のエルグランドでも高級感は備えていましたが、新型では「全座席の快適性均等化」という新しい理念が導入されました。特に助手席にもオットマン機能が採用された点は、トヨタ・アルファードが見送った差別化ポイントとなります。
2列目シートに採用された「ゼログラビティシート」は、NASA開発の無重力状態の姿勢を参考にした設計で、人体の負担を最小限に抑える形状になっています。新型では、このシート技術が深化し、背中上部にはひし形のステッチが新たにあしらわれ、視覚的な高級感と実際の座り心地が完全に同期しています。素材には「テーラーフィット」という日産独自の上質な合皮が採用されており、本革のようなしなやかさと耐久性を兼ね備えています。
セパレートタイプの2列目二人乗り仕様では、左右を厳密に仕切る形状ではなく、肘置きがあえて跳ね上げ式に設計されているのも注目に値します。これにより乗員が柔軟に姿勢を変えられるようになり、長時間のドライブでも同じ姿勢の苦しさから解放されるのです。さらに、エルグランド伝統の背もたれ中折れ機能も引き継がれており、フラットな就寝空間を作り出すことも可能です。
3列目シートまで含めて、トリプルオットマン機能により「同時に3人が足を伸ばせる」という他社では実現していない快適性が提供されるのも、新型エルグランドが「移動の質」を極限まで追求した証拠といえるでしょう。
視覚に訴える要素として、新型エルグランドの内装には「最大64色の設定が可能な間接照明」が配置されています。この照明システムの革新性は、単なる光源の配置ではなく、インストルメントパネルからドアにかけて「連続的につながる」ように設計されていることです。これにより、車内全体が一つの光の流れで包み込まれ、視覚的な統一感がもたらされるのです。
従来のミニバンでは照明が散在する傾向にありましたが、新型エルグランドではあえて「抑えの効いた配置」を採用。ギラギラとした過剰な演出ではなく、大人のくつろぎ空間に相応しい、洗練された光の配置が実現されています。この照明システムは、乗員の心理状態にも影響を及ぼし、移動中の疲労を軽減し、より深いリラックス状態へと導く効果があるのです。
聴覚面では、BOSE製の22スピーカープレミアムサウンドシステムが採用されます。これは単なるスピーカー数の多さではなく、「映画館にいるような臨場感あふれる3Dサラウンド再生」を実現するもので、音楽鑑賞だけでなく、ナビゲーションの案内音声さえも立体的に響き渡るように設計されているのです。乗員を「包み込むように」音が配置されるという表現は、決して誇張ではなく、実際に車内の四方八方から音が立体的に迫ってくる体験をもたらします。
新型エルグランドの内装が「高級感」を発する理由の深層は、素材選定の徹底的なこだわりにあります。インパネにはピアノブラック調の装飾が施されており、ナビゲーション周りやシフト周辺も「シンプルかつ上品」にまとめられています。このシンプルさこそが、実は最も難しい設計思想なのです。なぜなら、高級感とは往々にして「豪華さの堆積」ではなく、「必要な要素だけを厳選し、その質を極限まで高める」という禁欲的な美学から生まれるからです。
水平基調に仕立てられたインパネは、視覚的な広がり感を演出しながらも、決してチープには見えません。これは、デザイナーが「広がり」と「質感」の両立という相反する課題に対し、徹底した素材選定と配置によって答えを出したからこそ実現しています。
収納機能についても、新型エルグランド内装には隠れた工夫が散りばめられています。ドリンクホルダーやセンターコンソールなど、使いやすい位置に実用的な装備が配置されており、ロングドライブでも快適に過ごせるよう計算されています。特に注目すべきは、これらの機能が決して「デザインを損なわない形」で統合されていることで、まさに「機能美」という考え方の実践なのです。
室内の遮音構造の徹底も、新型エルグランド内装の上質感を大きく左右する要因です。走行中のエンジン音や風切り音が最小限に抑えられることで、初めて高級感のある静寂が実現され、その静寂の中で車内での会話や音楽が引き立つのです。エンジン音が聞こえてくる状態では、いかに豪華な内装を施しても、プレミアムな体験には到達しません。新型エルグランドは、この点を完全に理解した設計になっているのです。
<参考情報>
新型エルグランドの内装デザインについて、詳細な解説がされています。
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新型エルグランドの開発コンセプトと内装のこだわりについては、日産の公式リリースで詳しく紹介されています。
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新型エルグランドとアルファードの内装戦略の違いについて、詳細に比較されています。
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