三菱ランサーエボリューションX(10代目)は、2007年10月から2016年4月の生産終了まで9年間にわたり製造されました。新車価格は初代GSRグレード(2007年型)が375万円からスタートし、マイナーチェンジごとに段階的に価格が上昇。最終型の2014年型GSRグレードでは415万円、オートマ搭載のGSR-Premiumは540万円に達しました。エントリーグレードのRSモデルは299万円~324万円という設定でしたが、高性能を求めるユーザーの大多数はGSR以上のグレードを選択していました。
現在の中古市場では、同じランエボXでも走行距離や状態によって価格の幅が極めて大きくなっています。低走行距離(5000km未満)で状態の良い個体は700万円を超えることもあり、新車価格の1.5倍以上の相場形成となるケースが多数報告されています。一方、走行距離が多い(10万km以上)または小傷・小凹みがある中古車は150万円~250万円程度で取引されており、グレード間での価格差も顕著です。2015年式のランエボXに限定すると、平均的な中古車相場は401万円~410万円という高水準で推移しています。
2008年1月のデトロイトモーターショーに出展された「コンセプト-RA」は、ランエボのクーペ化という夢を具現化したコンセプトカーです。このモデルは市販化されず、公式な新車価格は発表されていません。しかし当時の自動車業界アナリストは、仮に市販化されていれば550万円~650万円程度の価格帯になると推測していました。コンセプト-RAはエクリプスをベースに、ランエボXの最新技術を結集した設計となっており、2.2L直4ターボディーゼルエンジン(204ps、42.8kgm)にツインクラッチSST、4WDシステム「S-AWC」を搭載。アルミスペースフレームによる軽量化と高剛性を実現し、ランエボXのセダン設計よりも低重心化が可能だったはずです。
多くのランエボファンは、この市販化されなかったクーペを「幻のランエボ」と呼び、現在でもオークションサイトやSNSでコンセプト-RAの復活を望む声が絶えません。実現していれば、現在の中古市場においても非常に希少で高額な存在となっていたはずです。
ランエボシリーズ全体を見ると、生産時期ごとに新車価格から大きく乖離した中古相場が形成されています。ランエボIV~VI(1996年~2001年)は新車時300万円~400万円でしたが、現在の中古相場は450万円~800万円の高値で取引されています。特にエボVIの「トミ・マキネンエディション」は限定車として高く評価され、走行距離が少ない個体なら1000万円を超える相場も確認されています。ランエボVII~IX(2001年~2007年)も同様に、新車価格350万円~440万円から、現在は400万円~600万円の相場に上昇。ランエボIX MRエディションは特にコレクター需要が高く、500万円以上での取引が常態化しています。
2007年登場のランエボXは最初の割り当てグレード(RS、GSR)で新車価格299万円からの設定でしたが、最終年の2015年型では中古相場が501万円~930万円に跳ね上がっており、年式による価格変動も激しい傾向が見られます。グレード別では「ファイナルエディション」が最も高く、850万円~930万円で推移。通常のGSRやGSR-Premiumは450万円~650万円の帯域に集中しています。ターボやエンジンチューニングの調子、ミッション(5MTか6AT)、足回りのカスタム有無によっても数十万円~数百万円の差が生じることが一般的です。
三菱は2016年4月にランエボの生産を終了しており、この発表以降、中古市場での価格上昇が顕著に加速しました。生産終了前の2015年時点では相場が200万円~500万円程度だったランエボXが、2024年現在では300万円~930万円まで跳ね上がっているケースが多数あります。供給が完全に遮断されたことで、新車購入が不可能になったユーザーが中古市場に殺到し、希少性による価格形成メカニズムが強力に働いています。
特に注目すべきは、低走行距離のオリジナル状態を保つ個体ほど値上がりが激しいという傾向です。走行距離が5000km以下の美麗個体は、新車時価格を大きく上回る700万円以上での取引が当たり前になっています。メーカーの経営危機やスポーツカー市場の縮小が生産終了の背景にありましたが、逆説的に、ランエボは「最後のランエボ」という歴史的価値を獲得し、投資対象化してさえいます。日本国内だけでなく、欧米やアジアの富裕層からもプレミア価格で買い求められており、国際的なコレクターズマーケットの形成に至っています。
市販化されなかったランエボクーペへの熱い需要は、異なる車種への購買動向に転化しています。ランエボのクーペ化を望むユーザーの多くは、同じ三菱の「エクリプス」や日産「スカイラインGT-R」、トヨタ「86」などの2ドアスポーツカーに流れています。エクリプスの4代目(2006年~2012年)は新車価格450万円~500万円でしたが、現在の中古相場は300万円~500万円で、ランエボXより低めの価格帯に位置しています。スカイラインGT-R R33型(1995年~1998年)は新車時約600万円から、現在は700万円~1200万円の超高値相場に達しており、クーペボディのスポーツカーは一般的に高く評価される傾向が明確です。
トヨタ86(ZN6型、2012年~2020年)は新車価格240万円~290万円でしたが、2020年の生産終了後は相場が350万円~500万円に上昇。次世代86(A90型)の登場により旧型の希少性が高まり、特に低走行距離の初期型や特別仕様車は600万円を超える個体も散見されます。ランエボのクーペが実現していた場合、これらの代替車種よりも高い評価を受けていた可能性が高く、現在の市場を見れば、550万円以上の相場が形成されていたと推測できます。日本を代表するスポーツカーメーカーの技術を結集したクーペが市場に存在しなかったことは、多くのエンスージアストにとって大きな損失となっているのです。
参考:三菱ランエボの値上がり傾向と市場分析について
中古市場における希少性向上と価格推移の詳細
参考:コンセプト-RAの設計と市販化されなかった経緯について
ランエボクーペの幻のモデル、コンセプト-RAの詳細スペック

Archaic 三菱 ランエボ10 ランサーエボリューションX ヘッドライト CZ4A 全LED DRL 流れるウインカー オープニングセレモニー搭載 headlights for MITSUBISHI LANCER 2007年~up