LPガス(プロパンガス)で走るプロパン車(LPG車)は、「燃料費が安いから得」というイメージが強いですよね。でも実はそれ、半分しか正解ではありません。
「プロパン車は燃費が良い」と思い込んでいる人は意外と多いですが、実はカタログ燃費(km/L)の数値だけを見ると、LPG車はガソリン車より劣ります。これが基本です。
LPG(液化石油ガス)はガソリンに比べてエネルギー密度が低いため、同じ距離を走るためにより多くの燃料を消費します。具体的には、LPG車の燃費はガソリン車より10〜20%ほど悪いのが一般的です。たとえばトヨタのクラウンセダン(タクシー仕様)の公表燃費は9.8km/Lで、同クラスのガソリン乗用車(15km/L前後)と比較すると見劣りします。
つまり「燃費がいい」ではなく「燃料単価が安い」が正確な表現です。
ではなぜプロパン車が節約になるかというと、LPGの燃料単価がガソリンの約6割程度と大幅に安いから。ガソリンに課される揮発油税(1Lあたり約53円)などの税金がLPGにはかからないため、スタンドでの販売価格が常にガソリンを下回ります。2025年時点で、ガソリンの全国平均が170〜180円前後に対し、LPG(オートガス)は80〜100円前後で推移しています。
| 項目 | ガソリン車 | LPG車(プロパン車) |
|------|----------|------------------|
| 燃費(km/L) | 約13〜15 | 約7〜10 |
| 燃料単価(目安) | 約170〜180円/L | 約80〜100円/L |
| 走行コスト(1km)| 約11〜13円 | 約8〜12円 |
燃費の数字だけ見るとプロパン車が不利ですが、走行コスト(1kmあたりの実質費用)に換算すると、ほぼ拮抗するか、走行距離が多い場合はプロパン車の方が有利になります。この仕組みを知っておけば大丈夫です。
LPガス自動車普及促進協議会 – LPG車の経済性と燃費データ(公式)
「どのくらい節約になるの?」と気になるところですよね。実際のコストを数字で比べてみましょう。
ケイテック(LPG車改造事業者)の試算データによると、燃費15km/Lの車で年間2万km走行した場合、ガソリンが約20万6,615円かかるのに対し、LPGなら約13万9,965円で済みます。差額は約66,650円の節約。これは年間で1台のスマートフォン代分くらいの差です。
さらに年間走行距離が多いケース、たとえば燃費10km/Lの車で年間5万km走行する場合はどうでしょうか。ガソリン仕様では約77万5,000円、LPGなら約52万5,000円で、なんと年間25万円の差が生まれます。これは東京〜大阪の新幹線往復代の約20回分に相当します。
年間走行距離が多い人ほど、プロパン車へのメリットは大きくなります。
一方、年間走行距離が少ない人(5,000km以下など)にとっては、後述する改造費用や容器検査費用を加味すると、総コストで必ずしもお得にならないケースもあります。年間走行距離が多い方、具体的には年間1.5〜2万km以上走る人が費用対効果を得やすいといえます。
また、LPGハイブリッド車(プリウスのバイフューエル改造版など)に改造した場合、燃費そのものも大幅に向上し、プリウスタクシーだと約22km/Lという数値も報告されています。
ケイテック – LPG-HYBRIDの燃料費削減シミュレーション(具体的な節約金額の根拠)
節約になるとわかったプロパン車ですが、見落としがちな費用負担があります。ここが重要です。
まずタンク(LPガス容器)の容器再検査。高圧ガス保安法に基づき、LPG車のガスボンベは6年ごとに容器検査を受けることが法律で義務づけられています。この検査を受けずに期限が切れると、LPGスタンドでガスの充填ができなくなり、車検も通りません。費用は1回あたり5〜6万円前後が相場とされています(出典:note.com 2025年7月)。
白ナンバーの乗用車の場合は、5年目の車検に合わせて受けることが推奨されています。
次に改造費用です。市販のガソリン車をLPGバイフューエルに改造する場合、認可取得済みの事業者に依頼する必要があり、費用は車種によって異なりますが60万円前後かかるのが一般的です。高い初期投資ですね。
ただし、この改造費用は長期的な燃料コスト削減でペイできます。目安として、購入から約10万km走行すれば改造費用相当の経費削減が可能とされています(ケイテック試算)。長く乗り続けることが前提条件です。
改造費のハードルが高いと感じる場合は、中古のLPGタクシー車両を購入するという選択肢もあります。ただしその際も、タンクの検査期限の残存期間を必ず確認することが条件です。
LPガス自動車普及促進協議会 – LPG車のメンテナンス・容器検査の詳細(公式)
プロパン車(LPG車)を選ぶ上で見逃せない問題があります。それが全国的なLPGスタンドの減少です。厳しいところですね。
全国LPガス協会のデータによると、LPGスタンドの数は2016年までの10年間で約14%減少しています。さらに北陸3県では2024年3月時点のスタンド数が20年前比で約6割減まで落ち込んでいます(日本経済新聞 2025年5月)。地方を中心に、タクシーが往復2時間かけてスタンドまで給油に行くというケースも現実に起きています。
原因の一つは、ハイブリッド化によって燃費が良くなりすぎたこと。旧来のLPGタクシーが3〜4日に1回充填していたのに対し、LPGハイブリッドのプリウスタクシーは1週間に1回程度の充填で済むようになりました。スタンド側の収益が落ち、閉店が加速するという悪循環が生まれています。
個人でLPG車を乗ろうとする場合、まず自宅・職場周辺にLPGスタンドがあるかどうかを事前に確認することが最重要といえます。
スタンドの場所は「LPガス自動車普及促進協議会」のウェブサイトからLPガススタンドマップで検索できます。都市部では比較的スタンドが存在しますが、地方では1県あたり数カ所しかない地域もあります。スタンドが遠ければ、燃費でのコスト削減どころか移動コストが逆転してしまうケースも。
乗りものニュース – 燃費よすぎて困る…LPGスタンド減少の実態と背景(詳細レポート)
ここからは、あまり語られていない視点の話です。プロパン車(LPG車)の燃費メリットを最大限に引き出すには、車種や走り方の選択が大きく影響します。
まず注目したいのがLPGハイブリッド車(バイフューエル+ハイブリッドシステムの組み合わせ)です。たとえばプリウスのLPGバイフューエル改造車は、燃費が約22km/Lに達するケースがあります(lpghybrid.com調べ)。ガソリンのみのLPGタクシー(燃費8km/L前後)と比べると、燃費は約2.75倍です。
走行コスト試算で見ると、年間2万km走行した場合、従来型LPGタクシーが約22万5,000円かかるところ、LPGハイブリッド化で約8万1,000円になるという試算もあります。差額は約14万円、これは月換算で1万円以上の差です。
次に、走行スタイルとの相性という点も重要です。LPG車は低中速域での回転が安定しており、市街地走行が多い使い方(タクシー・配送・教習所用など)と相性がよいとされています。逆に高速走行が中心の場合は、ガソリン車と比べた燃費の差が縮まり、コスト優位性が薄れることもあります。
また、バイフューエル車のメリットとして航続距離の長さが挙げられます。LPGタンクとガソリンタンクを両方搭載した車両では、航続距離が1,000kmを超えることも可能です。容量40LのガソリンタンクとLPGタンクを搭載するバイフューエル車はその典型です。ガソリンスタンドでも補給できるので、LPGスタンドが近くにない緊急時でも安心できます。
プロパン車の燃費を活かすなら、年間走行距離が多く、近くにLPGスタンドがある環境であることが条件です。
LPGハイブリッド改造に興味がある場合は、LPG内燃機関工業会や各改造事業者(ケイテック、マイカープラザなど)に対応車種と費用を確認してみましょう。改造可能な車種はプリウス、ハイエース、プロボックスなど幅広く対応しています。
lpghybrid.com – LPGハイブリッド化による走行コスト削減のシミュレーション(数値根拠)