揮発油税は、ガソリンなどの揮発油に課される国税の一種で、1950年に道路整備の財源確保を目的として導入されました。温度15℃のときに比重が0.8017を超えない炭化水素油が揮発油として定義され、主にガソリンが該当します。納税義務者は揮発油の製造者や輸入者ですが、実際には消費者がガソリンスタンドで給油する際の価格に転嫁される形で負担しています。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-whatis-gasoline-tax/
揮発油税の本則税率は1リットルあたり24.3円ですが、1974年から導入された暫定税率により24.3円が上乗せされ、現在は合計48.6円となっています。この暫定税率は本来期限付きの措置でしたが、延長が繰り返され、現在では「当分の間」という形で実質的に恒久化されています。かつては道路整備の財源として使途が限定されていましたが、平成21年度からは道路特定財源の一般財源化により、使途制限が撤廃されました。
参考)ガソリン税 - Wikipedia
地方揮発油税は、揮発油に課して地方自治体に財源を譲与することを目的とする税金で、地方譲与税の一つに分類されます。国税として徴収されますが、その税収は全額が地方揮発油譲与税として地方自治体に譲与される点が大きな特徴です。本則税率は1リットルあたり4.4円、暫定税率適用後は5.2円となっており、揮発油税と比較すると税率は約10分の1程度です。
参考)地方揮発油税 - Wikipedia
地方揮発油税の配分方法は、総額の58%が都道府県及び指定都市に、残り42%が市町村に対して道路の面積と延長に応じて配分されます。この配分は年3回(6月、11月、3月)に行われ、地方自治体にとって安定した財源となっています。2009年4月1日までは「地方道路税」という名称でしたが、道路特定財源制度の廃止に伴い現在の名称に改称されました。
参考)https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2014/10/1414471437.pdf
両税の税率を比較すると、揮発油税の方が圧倒的に高額であることが分かります。以下の表に本則税率と現行税率(暫定税率適用後)をまとめました。
項目 | 揮発油税 | 地方揮発油税 | 合計(ガソリン税) |
---|---|---|---|
本則税率(円/L) | 24.3 | 4.4 | 28.7 |
暫定税率上乗せ分(円/L) | 24.3 | 0.8 | 25.1 |
現行税率(円/L) | 48.6 | 5.2 | 53.8 |
現行税率では、揮発油税と地方揮発油税を合わせて1リットルあたり53.8円のガソリン税が課されています。この税率のうち、約25円分が暫定税率として上乗せされており、本則税率の約2倍の負担となっている状況です。沖縄県では特例措置により、本土より7円減税されているという地域差も存在します。
揮発油税と地方揮発油税の最も大きな違いの一つが、税収の使途です。揮発油税は国税として徴収され、平成21年度以降は一般財源化されたため、道路整備以外の公共サービスにも広く活用されています。一方、地方揮発油税は地方揮発油譲与税として全額が地方自治体に譲与され、主に道路の整備や維持管理に使用されています。
参考)地方揮発油譲与税法と道路財源の仕組み
地方揮発油譲与税の配分基準は道路の延長と面積であるため、実質的には道路財源として活用されている実態があります。この仕組みは、道路を利用する自動車の燃料に課税することで、道路の整備・補修費用を受益者(道路利用者)に負担してもらうという考え方に基づいています。特に財政基盤が弱い地方自治体にとって、地方揮発油譲与税は重要な収入源となっており、地域の道路インフラを適切に維持する上で欠かせない財源です。
揮発油税と地方揮発油税の納税義務者は、いずれも揮発油の製造者や保税地域からの引取者(輸入者)です。製油所から揮発油を移出した揮発油製造業者は、毎月の移出数量について翌月末日までに申告・納付する義務があります。例えば、4月中に移出した揮発油については、5月末日までに申告書を提出し、税金を納付しなければなりません。
参考)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/kihatsu/kihatu01/04.htm
しかし、実際には最終的な税負担は消費者が負っています。揮発油税と地方揮発油税は間接税に分類され、納税義務者を通じて納付されますが、ガソリンスタンドで給油する際の価格に転嫁される形で消費者が負担しているのです。つまり、私たちがガソリンを1リットル購入するたびに、53.8円のガソリン税を間接的に支払っていることになります。さらに、このガソリン税を含めた価格に対して消費税も課されるため、いわゆる「二重課税」の問題も指摘されています。
参考)説明できる?ガソリン税とも呼ばれる「揮発油税法」の基礎知識|…
揮発油税・地方揮発油税に関する詳細な法令情報は、以下のリンクから確認できます。
揮発油税法(e-Gov法令検索)
揮発油税の課税要件や税率、納税義務者に関する法律の原文を参照できます。
地方揮発油税法(e-Gov法令検索)
地方揮発油税の税率や譲与の仕組みについて、法律の条文で確認できます。
財務省:自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料
揮発油税と地方揮発油税を含む自動車関係諸税の最新データや税率の推移が掲載されています。