日産の新型コンパクトミニバンは、現行のノートと同じBプラットフォーム(CMF-B)をベースとして開発が進められています。このプラットフォームは「コックピット」「エンジン」「フロントアンダーボディ」「リヤアンダーボディ」「電子アーキテクチャー」の5つのモジュールで構成されており、複数の車種での共有化により開発費や部品点数の削減を可能にしています。ノートとの共通プラットフォーム採用により、ホイールベースを約150mm拡大し、全長を約200mm延長することで、3列シート7人乗りの室内空間を確保する設計となる見込みです。
一方、ボディサイズはトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」とほぼ同等の全長4.3m程度、全幅1.7m以内、全高1.7m付近に設定されると予想されており、5ナンバーサイズの枠内に収まる企画です。背高ワゴン的なプロポーションとなり、フラットで後方まで延長されたルーフにより、シアターレイアウト採用の3列シート仕様で室内空間の広さを実現できる構造になっています。
また、このプラットフォームを採用することで、ルノー=日産アライアンスのスケールメリットを活かし、製造コストの削減や工期短縮といった効率化が期待できます。
新型日産コンパクトミニバンに搭載予定の「第3世代e-POWER」は、モーター、ジェネレーター、減速ギヤ、増速ギヤ、インバーターを一体化した「5-in-1システム」を採用しています。第2世代e-POWERと比較して、高速燃費で15%の改善、室内静粛性も5.6dB向上するとのことです。
第3世代e-POWERの最大の特徴は、発電に特化した専用エンジンを搭載している点です。これまでのシステムは駆動と発電の両立を目指していましたが、新型は発電のみに特化させることで、エンジン効率を徹底的に高めています。具体的には、ターボラグを気にする必要がないため大型タービン採用、ミラーサイクル化、低フリクションの徹底といった技術的工夫が施されています。
加速性能についても、電動モーターで走行するe-POWERの特性により、EV同様の力強い加速を実現しながら、ガソリン車と同じ利便性と航続距離を備えています。ユーザーにとって最も体感できる改善は加速時の静粛性で、高速道路での合流などにおいてエンジンサウンドの主張が大幅に穏やかになっています。
新型日産コンパクトミニバンのデザインコンセプトは、ミニバンの実用性とSUVのタフさを融合させた「クロスオーバー」スタイルです。ボンネットはやや高めに設定され、前後の高さバランスが背高ワゴンに近い形状になります。フロントマスクは日産のEVコンセプト「ハイパーアーバン」を思わせる水平基調のグリルとLEDシグネチャーで、SUV的な力強さを演出しているのが特徴です。
ボディ下部には分厚いクラッディング(プラスチック製の装甲パネル)と台形のホイールアーチが採用される見込みで、さらに19インチクラスの大径ホイール装着による存在感のあるプロポーションが予想されています。この独自のクロスオーバーデザインアプローチは、シエンタやフリードといった既存ライバル車との差別化要素となり、アウトドアライフを意識したユーザー層へのアピールも想定されています。
従来のミニバンとは異なるハイトワゴン的な意匠により、都市部での日常使用から郊外でのレジャー利用まで、幅広いシーンへの対応性が高められていることが注目点です。
新型コンパクトミニバンは基本的に3列シートで7人乗りの構成となり、2列目には3人掛け、3列目には2人掛けの設定が見込まれています。一方、2列目シート3人掛けを省略し、2列シートで5人乗りのユーティリティ重視仕様も設定される可能性が高いとされています。
最大の特徴は、ライバル車のシエンタやフリードと同様に、「両側スライドドア」の装備です。日本市場ではスライドドアの採用が必須条件とされており、小さな子どもを抱えている場面や狭い駐車場での乗り降りの際に、通常のヒンジドアのように隣の車にぶつけてしまう心配が大幅に軽減されます。両側スライドドアの実装により、シエンタよりもフリード的な利便性が提供される見込みです。
3列目シートへのアクセス性も重視されており、2列目シートの横スライド機能や、シートベルト内蔵型設計など、既存ミニバンの経験が活かされた工夫が予想されています。特に年配者や小さな子どもの乗り降りスムーズ性は、ファミリーユースの購買決定を大きく左右する要素であり、この点への配慮がコンパクトミニバン市場での競争力を左右することになります。
トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」は、コンパクトミニバン市場で確固たる地位を占めており、新型日産車の大きな競合相手となります。シエンタは2022年のフルモデルチェンジでハイブリッドシステムの効率化が図られ、ミニバントップレベルの燃費性能を誇ります。特に燃費を重視し給油回数を抑えたいユーザーや、小さな子どもや年配の方の乗り降りしやすさを求めるユーザーに選ばれています。
一方、フリードは全席にゆとりのある広い室内空間が魅力で、3列目シートにも十分な広さが確保されています。また、全グレードに両側電動スライドドアが装備されており、スライドドアの快適性ではシエンタを上回ります。加えて、3列シートを格納して荷室を広げる場合、3列シートのみの格納で対応可能なデザインが特徴です。
新型日産コンパクトミニバンは第3世代e-POWERの搭載により、静粛性と加速性能でライバルに差をつけることを狙っています。また、クロスオーバースタイルの独自デザインにより、アウトドア志向のユーザーや、従来のミニバンとは一線を画した個性を求めるユーザー層へのアピールが期待されています。価格設定やグレード構成、さらにはe-POWER搭載による総合的な価値提案が、シエンタとフリードの一騎打ちを終わらせ、「第3の選択肢」として定着するかどうかの鍵を握ることになるでしょう。
参考リンク:日産新型コンパクトミニバンの最新開発情報と第3世代e-POWERの技術詳細について
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