スマートフォンをカーナビとして利用するドライバーが増加している現代において、スマホスタンドはもはや必需品といえます。しかし、便利さの裏には法的なリスクが潜んでいます。特にフロントガラスやサイドガラスへの設置は、道路運送車両の保安基準により厳しく規制されています。
フロントガラスに装着可能なものは法律で明確に定められており、その中にはスマホスタンドは含まれていません。装着可能なものは以下に限定されます。
装着可能な位置についても厳密に定められており、ガラスの上縁部分で20%以内の範囲、またはガラスの下縁部分で150mm以内の範囲に限定されています。この基準が存在する理由は、運転者の視界確保が安全運転の最優先事項だからです。
フロントガラスへの違法な設置に該当した場合、道路運送車両法第99条の2「不正改造等の禁止」に抵触する可能性があり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という重大な処分が課される恐れがあります。この罰則は一般的な交通違反と比較しても非常に厳しく、軽い気持ちで設置することは極めて危険です。
サンバイザーやバックミラーへのスマホスタンド設置も違法になる可能性が高い設置方法です。これらの部位は、運転席における運転者のアイポイント(目の位置)を通る水平面の前方に位置するため、視界を妨げる可能性が極めて高いからです。
保安基準の細目を定める告示第183条では、運転視野を妨げるものについて明確に禁止事項を列挙しており、必要不可欠な部品を除いては運転に必要な視野を遮ってはならないと規定しています。スマホスタンドはこの禁止対象に該当するため、サンバイザーやバックミラーへの設置は避けるべき設置方法です。
視界が遮られた状態での運転は、走行中の死角を増加させ、最悪の場合事故の原因となる可能性があります。実際に、運転に必要な視野として「前方2mにある高さ1m、直径0.3mの円柱(6歳児を模したもの)を直接視認できること」という基準が設けられています。サンバイザーやバックミラーに取り付けたスマホスタンドが視界を遮った場合、この基準を満たさなくなり、安全運転義務違反として道路交通法第70条に違反する可能性があります。
安全運転義務違反の場合、違反点数は2点で、普通車を運転していた場合は9,000円の反則金を支払う必要があります。さらに問題は罰則だけではなく、この違法設置による事故が発生した場合、スマホスタンドの不適切な設置が事故の原因として認定されれば、より重大な責任を問われることになります。
ダッシュボード上へのスマホスタンド設置は、一定の条件下では法律上問題ない設置方法です。ただし、単に「ダッシュボード上に設置する」だけではなく、前方視界を妨げないかどうかが最重要ポイントになります。
多くのドライバーは、スマホの画面が見やすいという理由でダッシュボード上への設置を選びます。しかし、設置位置が適切でない場合、運転者の視野を妨害する結果になるため注意が必要です。前方視界基準として、運転者がアイポイント(目の位置)から前方2mにある高さ1m、直径0.3mの円柱を直接視認できることが必須とされています。
ダッシュボード上に設置する際の実践的なポイントとしては、吸盤型のスマホスタンドを選択し、付属のアームをフロントガラスより下へ調節することが重要です。これにより、視界の妨げを最小限に抑えながら、適切な角度でスマホを利用できます。
ただし、粘着跡が残る懸念については、電解水を使用することで簡単に落とすことができます。また、ダッシュボード上に設置したスマホスタンドが前方の視界を妨げる原因となった場合、法律違反と判断される可能性があるため、設置前に十分な視界確保を確認することが不可欠です。実際の確認方法としては、運転席に座った状態で前方を眺め、死角が生じていないかを念入りにチェックすることが推奨されます。
法律上問題のないスマホスタンド設置位置は、主に3つの場所に限定されます。これらの設置方法は、運転視界の妨害が最小限に抑えられ、安全運転の観点からも推奨される設置方法です。
エアコンの吹き出し口は、最も安全で推奨される設置位置の一つです。視界を妨げることなく、スマホが手の届きやすい位置にあるため、使い勝手が良好です。また、コンパクトで見栄えが良く、しっかりと固定されるタイプが多いため、運転中に落ちる心配がありません。さらに、エアコンの風が直接スマホに当たるため、夏場にスマホが過剰に熱くなるのを防ぐことができるという実用的なメリットがあります。反対に、冬場暖房の風が当たる際は熱がこもるため注意が必要です。
ドリンクホルダーも、スマホスタンド設置場所として非常に便利です。ドリンクホルダー用のスマホスタンドは簡単に着脱できるものが多く、設置の楽さがポイントです。また、エアコンの吹き出し口と同様に視界の妨げにならないため、安全に運転することができます。利用する際は、引き出し型のホルダーへの設置がおすすめです。長いアームが搭載されている商品もありますが、車の前席中央の据え置き型ホルダーに設置すると、やや視線を下に向ける必要があるため注意が必要です。
ダッシュボード上の設置については、前述した通り、視界を妨げないという条件付きで認められています。スマホの位置が視線に近いため、視線移動が少なく済み、疲れにくいうえに安全です。ただし、吸盤型のスマホスタンドを使用する場合、取り外す際に粘着跡が残る可能性があります。
スマホスタンドを適切に設置していても、実は使用方法に問題があれば、「ながら運転」として道路交通法違反となる可能性があります。この点を理解しているドライバーは意外に少なく、重大な法的リスクが潜んでいます。
道路交通法第71条第5号の5により、運転者が走行中に携帯電話を手で保持して使用することが禁止されています。重要な点は、この規制はスマホスタンドを使用していても適用されるという点です。スマホスタンドに固定したスマートフォンであっても、画面を注視する行為は「ながら運転」に該当します。
注視時間の基準について、道路交通法には明確な定義がありませんが、警察庁によると2秒以上の注視は危険としており、実際の取締りの基準として機能しています。この基準の背景にある危険性は極めて重大です。自動車が時速60㎞で走行している場合、2秒間で約33.3mも進みます。この距離は、予期しない障害物や歩行者との衝突を避けるための反応時間としては大きな距離であり、2秒以上の注視により重大事故が引き起こされる可能性が高まるのです。
2019年12月1日に道路交通法が改正され、ながら運転に関する罰則は大幅に強化されました。携帯電話使用等(保持)の場合、違反点数が1点から3点に引き上げられ、反則金も6,000円から18,000円へと3倍に増額されました。さらに深刻なのは、交通の危険を生じさせた場合です。この場合、違反点数は6点(免許停止に該当)となり、反則金制度が適用されず、全ての罰則が科される対象となります。具体的には、1年以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事処分が科される可能性があります。
実際に、警察庁が発表した令和5年度の運転中のスマホ使用に関する取締り件数は約21万件にのぼり、これは全体の約5%に及びます。この統計は、ながら運転が蔓延している現状を示す一方で、警察による取締りが積極的に行われていることも示しています。ナビ画面と音声案内の両方を駆使して運転するなど、できる限り画面を注視しない工夫が必須となります。
スマホスタンドを不適切な場所に設置した場合、どのような罰則が科されるのかを具体的に理解することは、危険な設置を回避するための重要な情報です。罰則の重さは設置位置による違法性の程度によって異なります。
サイドガラス、サンバイザー、バックミラーなどに不適切に設置し、視界を遮った場合は、道路交通法第70条の「安全運転義務違反」に該当します。この場合、違反点数は2点で、普通車を運転していた場合は9,000円の反則金を支払う必要があります。反則金を納めない場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金という処分に進展する可能性があります。
より重大な違反として、フロントガラスにスマホスタンドを設置した場合は、道路運送車両法第99条の2「不正改造等の禁止」に抵触する恐れがあります。この場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される対象となり、交通違反としての罰則に比べてはるかに重大な処分になります。
さらに懸念すべき点は、罰則を受けるだけでは済まないということです。万が一スマホスタンドが違法に設置された状態で交通事故が発生した場合、スマホスタンドの不適切な設置が事故の一因として認定されれば、より重大な責任を問われることになる可能性があります。事故による損害賠償請求や刑事責任がさらに加重される可能性も含めて、慎重な対応が必須です。
フロントガラスへの設置が違法となる理由についての詳細な法律情報。
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