トヨタの高級車「クラウン」は、1955年の誕生以来70年の歴史を誇り、常に日本の自動車界をリードしてきました。2022年に発表された16代目クラウンは、従来の単一セダンスタイルから大きく転換し、複数の個性を持つモデル展開戦略を採用しました。クロスオーバー、スポーツ、セダンに続く第4のモデルとして、2025年3月13日に正式発売されたのが「クラウン エステート」です。このモデルは、アクティブなライフスタイルを求める顧客層の拡大と、SUV人気の高まりに対応する戦略的な新展開として位置付けられています。
クラウンエステートのコンセプトは「洗練さと大人の雰囲気を合わせ持ち、アクティブライフを楽しめる機能的なSUV」。従来のステーションワゴンのエレガントさとSUVの力強さ、そして実用性を一台に集約させた新しいカテゴリーの誕生です。開発過程では、当初2024年7月の発売が予定されていましたが、認証取得の関係で延期され、約8ヶ月後の2025年3月に正式発売されました。
クラウン エステートの最大の強みは、圧倒的な荷室容量にあります。通常時で約570Lの荷室容量は、クラウン スポーツ（約397L）、クラウン クロスオーバー（約450L）、クラウン セダン（約450L）と比較して大きく上回ります。さらに注目すべきは、後部座席を倒してフルフラットデッキ化すると、ゲートからフロントシート背後までの距離が約2,000mm以上に拡張される点です。
この機能を最大限活用できるよう、クラウン エステートには「デッキテーブル」と「デッキチェア」が標準装備（RSグレード）されています。デッキテーブルはフルフラットデッキで休息時に本や飲み物を置くのに使用でき、デッキチェアはリアドアのヘリに快適に腰掛けられるよう設計されています。これにより、単なる輸送空間ではなく、リラックスできるアウトドア空間として機能するという独創的なアプローチが実現されています。
また、床面が低めに設計されているため重い荷物の出し入れが楽です。ホイールハウス周辺を含むラゲージ側面が毛足の長いソフトなカーペットで覆われており、高級ワゴンらしい完成度を誇ります。通常時でも9.5インチゴルフバッグ3個と81cm スーツケース2個の同時収納が可能であり、週末のゴルフやレジャーでの日常使いにも対応できます。
クラウン エステートは、パワートレイン別に2つのグレードが用意されています。上位グレードの「ESTATE RS」は2.5L プラグイン ハイブリッド（PHEV）を搭載し、税込価格は810万円です。下位グレードの「ESTATE Z」は2.5L ハイブリッド（HEV）搭載で、税込価格は635万円となります。
PHEV搭載のESTATE RSは、外部充電により電気走行が可能で、日常の短距離移動では電力のみで走行できるメリットがあります。一方、HEV搭載のESTATE Zは、WLTCモード燃費20.3km/Lを実現し、より高い利便性と経済性を追求するユーザー向けです。グレード間での価格差は175万円であり、購入予算と使用シーンに応じた選択が可能です。
ボディ寸法は両グレード共通で、全長4,930mm、全幅1,880mm、全高1,625mm。クラウン クロスオーバーと同じ全長ですが、全高はシリーズ最高となるため、SUVとしての力強い存在感と、取り回しの良さが両立されています。
クラウン エステートは、高級車らしい快適性を随所に実装しています。フロントシートにはシートベンチレーションとシートヒーターが装備され、季節を問わず快適な着座環境を提供します。左右独立温度コントロール機能付きのフルオートエアコンにより、助手席と運転席で異なる温度設定が可能です。車内の脱臭機能「ナノイーX」も搭載されており、長時間のドライブでも爽やかな室内空間を保つことができます。
運転支援機能としては、乗降時に運転席が自動スライドする「パワーイージーアクセスシステム」、運転中の各種操作を可能にする「ステアリングスイッチ」、マニュアル感覚のシフト操作ができる「パドルシフト」が装備されています。メーカーオプションでパノラマルーフを選択すれば、室内に解放感をもたらし、後部座席の開放的な空間をさらに演出できます。
コネクティッド機能も充実しており、T-Connect契約とコネクティッドナビのオプション契約により、音声による車両操作が可能になります。これにより、運転中でも安全に各種機能を制御できる先進性が確保されています。
クラウン エステートの外観は、伸びやかなシルエットとダイナミックな造形が融合した設計になっています。ステーションワゴン特有の優雅さとSUVの力強さが調和した独特のプロポーションであり、大容量の荷室を実現しながらも、全長ではクラウン クロスオーバーと同等に抑えられており、日本の駐車場環境への配慮が見られます。背の高い荷物に対応するため、ラゲージスペース部分がせり出すデザイン手法が採用されており、機能と美しさの統合が実現されています。
カラー展開は充実しており、モノトーン5色とバイトーン5色の合計10色が用意されています。モノトーンはプレシャスホワイトパール、マッシブグレー、ブラック、エモーショナルレッドⅢ、プレシャスブロンズの5色です。バイトーンではブラックをベースとした4色に加え、プレシャスメタル×マッシブグレーがRSグレード限定で設定されています。
クラウン エステートが従来のステーションワゴンやSUVと大きく異なる点は、「アクティブライフを想定した設計思想」にあります。単なる荷物搭載スペースではなく、ラゲージエリアそのものが「くつろぎの空間」として機能するように設計されている点が最大の特徴です。デッキテーブルとデッキチェアの標準装備により、目的地到着後にゲートを開けたままでリラックスできる環境が整備されています。
サーフボード、ゴルフ用具、キャンプギア、自転車など、大型レジャーギアを容易に積載でき、かつ室内の快適性を損なわない設計が実現されています。クラウンブランドの上質さを保ちながら、アウトドアでの実用性を追求する「大人のアクティブ」というライフスタイルに直結したモデル設計と言えます。走行性能もE-Four電気式4WDシステムにより、悪路走破性と舗装路での安定性が両立されており、様々なシーンでの活躍が期待できます。
参考：トヨタ自動車公式ウェブサイト https://toyota.jp/crownestate/
参考：トヨタ新型車情報 新型クラウンエステートの全文情報はこちらで確認できます。https://www.t-corolla.co.jp/column/2025-03_new_crownestate
