ヒルホールドシステムは、登り坂での発進時にブレーキからアクセルに踏み替える瞬間、クルマの後退を防ぐ安全機能です。このシステムは、ブレーキペダルから足を離した後も約2秒間ブレーキ圧を保持することで、スムーズな坂道発進を実現します。ダイハツ車では主にCVT(無段変速機)搭載車に標準装備されており、運転者の負担を大幅に軽減してくれる便利な機能となっています。
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この機能の動作原理は、横滑り防止装置であるVSC(ビークルスタビリティコントロール)システムに組み込まれた加速度センサーと油圧ブレーキ制御を利用しています。加速度センサーが車両の傾きを検知し、一定以上の勾配があると判断すると、システムが自動的に作動する仕組みです。ブレーキペダルをしっかり踏んで停車することで、システムがブレーキ油圧を保持し、アクセルペダルを踏むまでの間、車両を停止状態に保ちます。
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ダイハツのヒルホールドシステムは、傾斜角5%以上の坂道で作動します。これは100メートル進むと5センチメートル高くなる勾配で、一般的な坂道発進で十分効果を発揮する設定となっています。システムが作動すると、ドライバーは通常の平地発進と同じようにブレーキからアクセルへペダルを踏み替えるだけで、後退の心配なく安心して発進できます。
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ダイハツのヒルホールドシステムは、多くの軽自動車と小型車に標準装備されています。代表的な搭載車種として、タント、ムーヴ、ムーヴキャンバス、タフト、トコット、ロッキーなどがあり、これらの車種ではCVT車に標準で装備されています。特にタントシリーズでは、スマートアシストⅢ搭載車に標準装備として組み込まれており、安全性を重視した設計となっています。
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商用車のラインナップでも、ハイゼットトラックとハイゼットカーゴのCVT車、さらにアトレーワゴンにもヒルホールドシステムが採用されています。2017年の大幅改良時には、ハイゼットカーゴとアトレーワゴンにスマートアシストⅢとともにヒルホールドシステムが標準装備され、セーフティ・サポートカーS・ワイドの認定を受けました。これらの商用車でも坂道での荷物積載時の安全性が大きく向上しています。
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ダイハツの軽トラックであるハイゼットトラックでは、CVT車全グレードにヒルホールドシステムが標準装備されています。従来のマニュアルトランスミッション車では坂道発進に技術が必要でしたが、CVT車とヒルホールドシステムの組み合わせにより、初心者やベテランドライバーを問わず誰でも安心して坂道発進ができるようになりました。また、ロッキーなどのSUVモデルでもヒルホールドシステムを採用しており、幅広い車種で安全運転をサポートしています。
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ヒルホールドシステムを正しく作動させるには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、エンジンがかかっている状態で、車両が一定以上の傾斜がある坂道に停止していることが前提条件です。さらに、ブレーキペダルをしっかりと踏み込んで完全に停止している必要があります。ブレーキの踏み込みが弱い場合、システムが作動しないことがあるため注意が必要です。
参考)https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000905958/SortID=22282532/
システムの作動時間は約2秒間と設定されており、この間にアクセルペダルを踏み込んで発進する必要があります。2秒を超えるとブレーキ圧が自動的に解除され、車両が後退し始める可能性があるため、信号待ちなどでは適切なタイミングで発進することが重要です。アクセルペダルを踏み込むと、システムは自動的にブレーキ圧を解除し、スムーズな発進を可能にします。
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注意点として、車両が斜めに傾いている場合や、パーキングブレーキを引いている状態では正常に作動しない場合があります。また、TRC(トラクションコントロール)をOFFにしている状態でもヒルホールドシステムが作動できなくなるため、通常走行時はTRCをONにしておくことが推奨されます。急勾配が10%以上の坂道では、安全のためエコアイドル(アイドリングストップ)が作動しないよう設計されており、システム全体で安全性を確保しています。
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ヒルホールドシステムの最大のメリットは、坂道発進時のペダル操作が簡単になることです。特にAT車やCVT車に長く乗っているドライバーにとって、坂道での後退に対する恐怖心を軽減し、安心して運転できる環境を提供します。後続車両との衝突リスクを大幅に減らし、エンストの心配もほとんどなくなるため、初心者ドライバーにも優しい機能といえます。
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また、渋滞時の坂道や立体駐車場の螺旋スロープなど、頻繁な発進・停止が必要な場面でもストレスなく運転できます。ヒルホールドシステムは運転の利便性だけでなく、安全性も向上させるシステムとして高く評価されています。特に荷物を積載した商用車では、重量による後退リスクが高まりますが、このシステムにより安全に坂道発進が可能となります。
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一方で、デメリットも存在します。ブレーキ保持時間が2秒間のみであるため、発進が遅れると車両が後退し始める可能性があります。また、運転技術が高いドライバーの中には、システムの介入によって自分のタイミングで発進できないと感じる人もいます。ブレーキペダルをしっかり踏まないとシステムが作動しないため、軽い踏み込みでは期待した効果が得られないこともあります。
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ダイハツのヒルホールドシステムは、エコアイドル(アイドリングストップ機能)と連携して動作します。エコアイドルは燃費向上とCO2排出削減を目的とした機能で、信号待ちなどの停車時に自動的にエンジンを停止させます。しかし、坂道での発進時には後退を抑制するヒルスタートシステムが作動し、安全でスムーズな再発進を可能にしています。
エコアイドルは道路勾配が約10%以上の急な坂道では作動しない設計となっており、安全性を最優先しています。これは、急勾配での停車時にエンジンが停止してしまうと、再始動時のタイムラグによって後退リスクが高まるためです。ダイハツでは、アイドリングストップ車であってもヒルホールドシステムを装備することで、エンジン停止時の坂道での後退を防ぎ、安心して運転できる環境を提供しています。
また、CVT車の特性として、従来のAT車のようなクリープ現象(アクセルを踏まなくても車両が微速前進する現象)が弱いため、坂道での後退がより起こりやすい傾向があります。そのため、ダイハツのCVT搭載車では、ヒルホールドシステムが標準装備となっており、CVT特有の特性をカバーする重要な役割を果たしています。この連携機能により、環境性能と安全性の両立を実現しています。
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ヒルホールドシステムは、VSC(横滑り防止装置)やABS(アンチロックブレーキシステム)と統合された電子制御システムであり、基本的には特別なメンテナンスを必要としません。しかし、システムが正常に機能するためには、定期的なブレーキ液の点検と交換が重要です。ブレーキ液が劣化すると油圧制御に影響が出る可能性があり、ヒルホールドシステムの作動にも支障をきたす恐れがあります。
システムに異常が発生した場合、メーター内の警告灯や表示で知らせてくれます。例えば、TRC OFF表示灯が点灯した状態では、TRCおよびヒルホールドシステムが作動できない状態になっています。このような場合は、まずシステムをリセットしてみて、それでも解消しない場合はダイハツの正規ディーラーでの点検を受けることをおすすめします。
参考)https://www.daihatsu.co.jp/service/torisetu/move/pdf/move_full_2506.pdf
長期間使用していると、加速度センサーや油圧制御ユニットの経年劣化が起こる可能性もあります。定期点検時には、ヒルホールドシステムが正常に作動するかどうかを確認してもらうことが大切です。特に坂道での発進時に以前と異なる動作をする場合や、システムが作動しない頻度が増えた場合は、早めに専門家に相談することで、安全性を維持できます。日常的にはブレーキペダルをしっかり踏み込む習慣をつけることで、システムを確実に作動させることができます。
ダイハツのヒルホールドシステムに関する公式情報は、以下のリンクで詳しく確認できます。タントの安全装備についての詳細情報です。
ダイハツ タント 公式サイト - 性能・安全・燃費
ハイゼットトラックの装備詳細については、こちらの公式ページが参考になります。
ダイハツ ハイゼットトラック 公式サイト - 性能・安全・燃費