富士山ナンバーの対象地域は、両県ともに富士山周辺の限定されたエリアのみとなっています。
山梨県側の対象地域(7市町村)
静岡県側の対象地域(6市町)
山梨県側は富士五湖エリアを中心とした観光地が多く含まれているのに対し、静岡県側は富士市や富士宮市といった工業都市も含まれているのが特徴的です。道志村は神奈川県と隣接する山梨県の飛び地的な位置にありながら、富士山ナンバーの対象となっている珍しい例でもあります。
2018年10月1日から交付が開始された図柄入り富士山ナンバーは、山梨県版と静岡県版で全く異なるデザインが採用されています。
山梨県版のデザイン特徴
山梨県版は葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の中でも特に有名な「凱風快晴」をモチーフにしたデザインです。朝焼けに染まる赤富士が描かれており、これは山梨の富士吉田側から見える独特の自然現象「赤富士」を表現しています。
静岡県版のデザイン特徴
静岡県版は富士山とのどかな裾野に広がる田園風景がテーマとなっており、朝霧高原や茶畑が広がる風景が描かれています。青っぽい山と緑が広がる穏やかなデザインで、年齢性別問わず好まれるよう配慮されています。
興味深いことに、静岡版では右手に宝永山が描かれており、これは静岡側から見た富士山の特徴を正確に表現しています。一方、山梨側から見ると宝永山は左手に見えるため、図柄にもその違いが反映されているのです。
富士山ナンバーエリアでは、他の地域とは異なる特徴的な希望番号が人気を集めています。
最も人気の高い希望番号
これらの番号は富士山ナンバーエリア特有のもので、地域への愛着と誇りを表現する手段として多くの住民に選ばれています。特に「3776」は圧倒的な人気を誇り、富士山ナンバーを象徴する番号として定着しています。
地域限定の特殊な希望番号
富士スピードウェイ周辺の静岡県小山町では「4563」という番号を付けた車両を見かけることがあります。これは富士スピードウェイのコース全長4563mに由来しており、地元のモータースポーツファンにとって特別な意味を持つ番号です。
また、公用車では「119」(消防車)や「110」(パトカー)、「413」(道志村の国道413号線にちなんで)といった、その車両の用途や地域性を反映した番号が選ばれるケースもあります。
同じ「富士山」という地域名表示でありながら、実際には山梨県と静岡県の異なる運輸支局から発行されているため、封印の文字で見分けることが可能です。
封印による識別方法
この封印は登録車(普通自動車)のナンバープレートの左下に取り付けられている金属製の小さな部品で、不正な取り外しを防ぐ役割を果たしています。軽自動車には封印がないため、この方法での見分けはできませんが、登録車であれば確実に判別可能です。
実際の運用では、山梨運輸支局と静岡運輸支局・沼津自動車検査登録事務所という異なる機関が管轄しているため、同じ富士山ナンバーでも発行元が明確に区別されています。
富士山ナンバーの導入は、単なる地域名表示の変更以上の意味を持っています。2006年10月にスタートしたご当地ナンバー制度の中でも、2県にまたがる初の事例として注目を集めました。
導入の経緯と課題
富士山は山梨県と静岡県の県境に位置し、山頂部分はどちらの県にも属さないという複雑な地理的状況があります。このため、従来の1県1ナンバーという枠組みでは対応が困難でした。しかし、両県の強い要望と国会議員の働きかけにより、特例として2県合同でのナンバー交付が実現しました。
地域振興への効果
富士山ナンバーの導入により、以下のような効果が期待されています。
2021年10月末時点で、図柄入りナンバーだけでも山梨県で3,019件、静岡県で8,845件の登録があり、一定の需要があることが確認されています。
今後の展望
富士山が2013年に世界文化遺産に登録されたことで、富士山ナンバーの価値はさらに高まっています。国際的な知名度を活かした観光振興や、地域ブランドの向上に向けた取り組みが継続的に行われており、富士山ナンバーはその象徴的な役割を果たしています。
また、SNSでは「富士山ナンバーを見かけた」という投稿が頻繁に見られ、話題性の高さも証明されています。一方で、地元住民からは賛否両論の声もあり、地域アイデンティティの表現方法として継続的な議論が行われています。
富士山ナンバーの取得を検討している方は、図柄の有無や希望番号の選択肢も含めて、自分の地域愛を表現する手段として活用することができます。ただし、対象地域が限定されているため、転居の際にはナンバーの変更が必要になる点も考慮しておく必要があります。