富士山麓ウイスキー販売終了と価格高騰の秘密

キリンの人気ウイスキー「富士山麓 樽熟原酒50°」がなぜ2019年に販売終了となったのか、そして定価1,620円から5,500円を超える価格へ跳ね上がったその背景は?ウイスキー愛好家が知るべき終売理由と希少価値の全容をご存知ですか?

富士山麓ウイスキー販売終了とは

富士山麓ウイスキーの販売終了背景
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販売終了の時期と経緯

「富士山麓 樽熟原酒50°」は2019年3月下旬の出荷分をもって販売終了となりました。想定を超える需要により原酒不足が深刻化したことが理由です

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急激な価格高騰

定価1,620円だったボトルが販売終了後、現在では5,500円前後で取引されており、その価値は3倍以上に跳ね上がっています

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主力商品としての重要性

樽熟原酒50°はキリンのウイスキー事業全体の売上げ3割以上を占める主力商品でした

富士山麓ウイスキーが販売終了に至った原因

 

富士山麓ウイスキーの販売終了は、ハイボールブームによるウイスキー需要の急増が主な要因です。2010年代後半の日本では、サントリーの「強炭酸ハイボール」のテレビCMなどをきっかけに、ウイスキーを飲む人が急速に増えました。それまで静かだったウイスキー市場が、一気に人気沸騰したのです。

 

キリンが当初予想していた販売量を大幅に上回る需要が発生しました。特に樽熟原酒50°は、手ごろな価格で本格的なウイスキーを楽しめるとあって、一般消費者にも広がりました。その結果、富士御殿場蒸溜所が保有していた原酒在庫が急速に枯渇していったのです。

 

ウイスキーは熟成に最低でも数年から十数年の時間がかかるため、急な需要増には対応できない製品です。もし無理に供給を続けていれば、品質が低下したボトルを世に出すことになりかねません。そこでキリンは「このままでは原酒不足になり、供給できなくなる恐れがある」と判断し、品質維持を優先して販売終了という決断に至りました。

 

富士山麓の販売終了による希少化と価格変動

販売終了から現在まで、富士山麓ウイスキーの市場価格は著しく上昇しています。特に興味深いのは、単なる希少性だけでなく、コレクター需要が形成されたという点です。

 

樽熟原酒50°は販売終了直前の2019年頃には定価1,620円でしたが、その前の発売当初は900円程度という驚くほど安価な価格設定でした。これは当時、ウイスキーがそこまで大衆的なものではなく、日本のウイスキー市場がまだ小さかったためです。

 

販売終了後の現在、同じボトルが5,500円前後で取引されるようになりました。さらに高級品の「富士山麓 シングルモルト18年」は、販売終了時には15,000円程度だったと思われますが、現在では3万円から7万7,000円という驚くべき価格で売買されています。オークションサイトやウイスキー専門買取業者での取引では、さらに高い値がつくこともあります。

 

ふるさと納税の返礼品として現在も一部の自治体が富士山麓シグニチャーブレンドを扱っており、これは現在も販売されている製品であるため、定価付近での取引が一般的です。

 

富士山麓の販売終了後の市場変化と後継品

販売終了となった富士山麓シリーズですが、市場では新たな選択肢が提供されるようになりました。最も重要な変化は、2020年にキリンが発売した「キリンウイスキー 陸」の登場です。

 

陸は富士山麓の後継品として位置づけられ、同じく富士御殿場蒸溜所で製造されています。富士山麓はモルト主体のブレンデッドウイスキーでしたが、陸はグレーン主体のブレンデッドウイスキーという異なるアプローチをとっています。これは原酒不足の問題に対応するため、海外の原酒もブレンドすることで、安定供給を実現しようとした戦略です。

 

陸の価格は2,000円前後と、富士山麓の後継品としてはリーズナブルな設定になっています。2022年には商品がリニューアルされ、より飲みやすくなったと評価されています。ただしマニアの間では、富士山麓の方が熟成感や香りの複雑さにおいて優れているという評価が一般的です。

 

現在、富士山麓シリーズで唯一販売されているのは「富士山麓 シグニチャーブレンド」で、定価は5,500円(税込)です。2024年9月には値上げが実施され、それまでの5,000円から5,720円へと改定されました。このシグニチャーブレンドは、熟成のピークを迎えた原酒だけを厳選してブレンドされた、シリーズの最高峰に位置づけられるボトルです。

 

富士山麓ウイスキーの販売終了における業界全体の動き

富士山麓の販売終了は、一社だけの問題ではなく、日本のウイスキー業界全体を揺るがす現象でした。同時期にサントリーも「白州12年」「響17年」の販売休止を発表するなど、原酒不足問題は複数のメーカーで起きていたのです。

 

これらの銘柄が販売休止・終了に追い込まれたのは、世界的なジャパニーズウイスキーブームの影響です。日本のウイスキーは海外で高く評価され、国際的な需要が急速に高まっていました。さらに国内でもハイボールブームが起き、需要が二重に増加したのです。

 

この時期は日本のウイスキー業界にとって「需要と供給のギャップ」という前例のない危機でした。どのメーカーも原酒の熟成に必要な年月には逆らえず、短期的な需要増に対応することができなかったのです。その結果、品質を保つために販売終了という判断を下す企業が相次ぎました。

 

興味深いことに、この販売終了が逆に富士山麓などのプレミア化を加速させています。買取市場ではウイスキー買取専門店での査定が活発化し、LINXAS(リンクサス)やストックラボなどの専門業者が高額買取を提示しています。未開封で保存状態が良好なボトルは、定価を大幅に上回る価格がついています。

 

富士山麓の販売終了から学ぶウイスキー選択の重要性

富士山麓ウイスキーの販売終了という事象は、ウイスキー愛好家にとって重要な教訓を示しています。一度販売終了になった銘柄の復活は、原酒不足が解消されない限り極めて困難だということです。

 

富士山麓が販売終了になった2019年から現在まで、復活の兆候は見られていません。原酒不足は依然として深刻なままで、むしろ世界的なウイスキー需要の高まりにより、より一層深刻化している可能性さえあります。

 

この状況は、愛好家に対して重要なメッセージを投げかけています。好きなウイスキーボトルを見つけた場合、気軽に購入を先送りにすべきではないということです。販売終了が近い兆候を感じたら、その時点で購入することが得策です。

 

また、未開封で保有している終売品ボトルは、単なる飲用ではなく投資資産としての価値も認識する必要があります。適切な保管状態(直立、暗冷所)を保つことで、市場価値を維持することができます。

 

さらに現在販売中のシグニチャーブレンドは、将来的に販売終了となった場合、現在の5,000円~7,000円の流通価格から大幅に上昇する可能性があります。これもまた、現在のうちに確保しておく価値がある製品です。

 

富士山麓販売終了に関連する独自視点:国産ウイスキーの蒸溜所動向と富士御殿場蒸溜所の重要性

富士山麓ウイスキーの販売終了という事象は、より深い視点から見ると、富士御殿場蒸溜所そのものの経営戦略の転換点を示唆しています。

 

富士御殿場蒸溜所は1973年に創業された国内有数のモダン蒸溜所で、その歴史はウイスキーの民主化と品質追求のバランスの変化を反映しています。蒸溜所は英国シーバスブラザーズ、米国シーグラムとキリンビールの3社合弁で始まり、その後キリン単独所有へと移行しました。

 

販売終了に至った富士山麓樽熟原酒50°の存在は、蒸溜所が一度は「高品質を手ごろな価格で提供する」という理念を持っていたことを示しています。1000円台の価格設定は、当時のマーケティング戦略を反映していました。

 

しかし販売終了決定により、蒸溜所の経営方針が「限定的で高付加価値なボトルへの集中」へ転換したことが明確になりました。現在の唯一の販売品シグニチャーブレンドは定価5,500円と、樽熟原酒50°の定価1,620円の3倍以上です。これは市場ニーズの変化だけでなく、蒸溜所自体の戦略的ポジショニングの変化を示しています。

 

国内では山崎や白州といったサントリー製品との競合状況も考慮すると、富士山麓シリーズが限定化・高級化することで、より明確な市場セグメンテーション戦略を採用したと言えます。富士御殿場蒸溜所がモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方を製造できるという世界的に珍しい蒸溜所であるという点から見ると、今後の陸シリーズの拡充と富士山麓の超限定化という二層構造の戦略が予想されます。

 

富士山麓の販売終了は、単なる在庫問題ではなく、日本のプレミアムウイスキー市場における業界全体の再編を象徴する出来事なのです。

 


富士山麓ウイスキーの詳細情報:終売ボトルの価格推移と買取市場の動向


参考資料:富士御殿場蒸溜所の製造工程では、富士山由来の伏流水(ミネラルを豊富に含んだ軟水)を使用しており、この良質な水がウイスキーの味わいの礎となっています。また蒸溜所の寒冷な気候環境は、穏やかなウイスキー熟成を実現させています。これらの環境要因が、富士山麓というネーミングに正当性を与えています。

 

リサーチが完了しました。記事を作成します。

 

 


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