ジャパンモビリティショー2025でダイハツが発表した「K-OPENコンセプト」は、軽自動車規格を維持しながらFR駆動方式を採用する、業界でも注目を集める挑戦です。前代のコペンはFFレイアウトで、エンジンを横置きに配置する軽乗用車の標準的な設計方式を採用していました。FRへの変更は、単なるレイアウト変更ではなく、プラットフォーム全体の大幅な再設計が必要になるという大がかりなプロジェクトです。
軽自動車業界でFFが圧倒的主流である理由は、限られた室内空間の有効利用と製造効率の良さにあります。その中でダイハツがFR化に踏み切った背景には、ユーザーからの強い要望がありました。2023年のジャパンモビリティショーで小型車化されたコンセプトカーが発表された際、「FR化は歓迎するけれど、コペンは軽自動車であってほしい」という声が多く寄せられたことが決定を左右しました。
新型コペンのFR化により、重心位置が低くなり、ウェイトバランスが大幅に改善されます。これはスポーツカーとしての操縦安定性と旋回性能を飛躍的に向上させ、オープンスポーツカーとしての「走る喜び」をより純粋に追求することができるようになるということです。また、軽自動車の限られたボディサイズの中での実現は、パッケージング設計の職人技を示すものとなります。
新型コペンのエンジンは直列3気筒660ccターボで、最高出力は64ps、最大トルクは10.0kgm。前代モデルの最大トルク9.4kgmから0.6kgm向上しており、パワーアップが実現されています。このエンジンはアトレー・ハイゼットなどの軽商用車で実績のあるKF型3気筒ターボエンジンをベースにしており、既存のリソースを活用しながらもスポーツカーに相応しい性能へとチューニングされています。
トランスミッションは5速MT、またはCVTが設定され、特に5速MTは軽商用車向けのギア比であっても十分なスポーツドライビング性能を確保しているとダイハツ開発陣が確認しています。ジャパンモビリティショーに展示されたランニングプロトでは、エンジンが通常より低く搭載されているのが特徴で、これはFRレイアウトに適応させるための必然的な設計選択です。その代わり、スパークプラグ交換などのメンテナンス性を考慮して、量産時には改善の余地があるとされています。
軽自動車とは思えないほど低いエンジン搭載位置は、スポーツカーとしての重心低減という視点だけでなく、歩行者保護規格への対応と低いノーズの両立にも有利に働きます。パワートレインの実績ある部品を活用することで、開発コストを適切に管理しながらも、ドライバーの期待に応えるスポーツ性能を実現しているのです。
新型コペンの大きな特徴は、FR駆動方式に対応した専用プラットフォームが新規開発されることです。軽商用車のFRアーキテクチャーから部分的に流用する検討も行われましたが、本格的なスポーツカーとしての走行性能を追求するために、コペン専用の新設計が決定されました。
ジャパンモビリティショーに展示されたランニングプロトの下回りを詳細に観察すると、フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン方式と推測される構成になっています。これは軽自動車では一般的なストラット方式ではなく、より高度な走行性能を求める本格的なスポーツカーの設計です。ダブルウィッシュボーン式は、前輪の接地性を高め、操舵入力に対する応答性を向上させることができる優れた方式として知られています。
前代のコペンは、軽乗用車向けのFFプラットフォームをベースに開発されたため、走行性能に関しては軽自動車の枠内での最適化に留まっていました。新型では、初めからFRレイアウトとスポーツ走行性能を念頭に置いた専用プラットフォームの開発により、軽自動車というカテゴリーの中では異例の走行性能を実現することが期待されています。
軽自動車規格の維持により、新型コペンのボディサイズは先代と同等に留められます。全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,230mmという寸法は、軽自動車の上限内での最適な配置を示しています。ただし、ホイールベースが延長され、全高がダウンされることで、より低重心で安定した走行性能が実現されるようになります。
前代のホイールベースは2,230mmでしたが、新型ではこれが延長されることで、FRレイアウトとの相乗効果により乗り心地と操舵応答性の向上が期待されます。全高の低減は空気抵抗の削減にも貢献し、燃費性能の維持にも有利に働きます。
軽自動車規格を守ることは、ユーザーサイドの利点も大きいです。軽自動車の税制優遇措置、保険料、高速道路料金などのコストメリットが得られるため、スポーツカーとしての走行性能を求めながらも、運用コストは抑えたいというユーザーのニーズに応えることができます。これは「本気のスポーツカー性能」と「実用性」の絶妙なバランスを示すものです。
新型コペンの開発で注目すべき点は、既存のリソースを活用しながら本格的なスポーツカーを実現しようとするダイハツの戦略です。KF型エンジンと5速MTは軽商用車向けに開発された部品ですが、これらはタフさと信頼性が実証されており、むしろスポーツドライビングやチューニングへの耐久性を考慮すると適切な選択と言えます。
一般的には、スポーツカーの開発は「新しい、高性能な部品を組み合わせる」という方向が想定されます。しかし、ダイハツのアプローチは異なります。限られた開発予算の中で、既に信頼性が確立された部品をベースに、プラットフォームやサスペンションなどの走行性能に直結する部分に注力する戦略です。
さらに、ネーミングが「K-OPEN」に回帰したことの意味も大きいです。初代のコンセプトカーが「KOPEN」(軽のオープン)という名で命名されていたのに対し、新型も同じ「K-OPEN」を採用しました。このネーミング的な原点回帰は、開発者たちの「初代の理念に立ち返る」というメッセージを含んでいると解釈できます。22年前の理想を、最新技術で再び実現するという姿勢が窺えるのです。
軽自動車でFR化を実現するための課題として、エンジンの搭載位置の問題がありました。キャブオーバー型の商用車向けに開発されたエンジンをスポーツカーに搭載するため、異常なほど低い搭載位置になっているランニングプロト。これは一見不自然に見えますが、実はスポーツカーの理想的な重心位置を現実に落とし込もうとする努力の結果と言えます。量産化に向けてマウント位置の改善が検討されているというのは、完成度を高めるための開発の進展を示すものです。
参考リンク:新型コペンのFR化戦略とプラットフォーム開発について詳しく解説。軽自動車では珍しいFRレイアウトの実現性やコスト面での配慮が記述されています。
https://motor-fan.jp/article/1318348/
参考リンク:新型コペンの外装デザイン、エンジンスペック、ボディサイズ、発売時期などの最新情報が網羅されており、スペック比較表も含まれています。
https://carislife.hatenablog.com/entry/20231006/1696569558

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