トヨタbZ3Xは、中国市場での反転攻勢を狙って開発された、完全に中国に特化したBEV(バッテリー電気自動車)です。2025年3月6日に発売を開始し、予約開始わずか1時間で1万件の予約が殺到、現在は2万2000台ほどが納車待ちという異例の人気を記録しています。この背景には、トヨタが従来のグローバル戦略車では中国市場で苦戦していたという事実があります。
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世界戦略車であるbZ4Xの2024年の中国国内販売台数は5318台と低迷していましたが、BYDとの合弁会社で開発されたbZ3は月間3000台以上を安定的に販売していました。この成功体験から、トヨタは中国市場には中国専用車両が必要だと判断し、合弁パートナーである広州汽車集団(GAC Group)との協業でbZ3Xを開発しました。中国では外資の自動車メーカーは単独での事業展開が原則できず、現地企業との合弁が必須となっているため、この戦略は理にかなったものでした。
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開発体制としては、トヨタから100名以上のエンジニアが参画し、広汽トヨタやBYDのエンジニアと一体となって開発を進めました。この3社連携により、トヨタの品質管理や生産技術、BYDのバッテリー技術、そして広汽トヨタの現地市場理解が融合し、中国市場のニーズに最適化された製品が誕生しました。
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トヨタ公式:bZシリーズの開発体制と3社連携の詳細
bZ3Xの最大の特徴は、補助金なしで10万9800元(約225万円)からという驚異的な価格設定です。この価格帯は、中国市場でシェアを拡大しているBYDの主力モデル「元PLUS(BYD Atto 3)」や「海豚(ドルフィン)」とほぼ同等であり、真正面から価格競争に挑む姿勢を示しています。
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この低価格を可能にしたのは、徹底的な現地生産とサプライチェーンの最適化です。bZ3Xは広汽トヨタの工場で現地生産され、部品の約90%を中国国内から調達することでコストを大幅に削減しています。バッテリーには中国製のリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを採用し、コストを抑えつつ安全性と耐久性を確保する戦略をとっています。
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LFPバッテリーはニッケル系バッテリーに比べて原材料の調達コストが低く、熱安定性と安全性が高いという特徴があります。さらに急速充電に対する耐性も高いため、日常的に充電を繰り返す都市部ユーザーにとって理想的な選択となっています。このように、中国のEVサプライチェーンを最大限活用することで、従来のトヨタ車では考えられなかった価格帯での提供が実現しました。
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| グレード | バッテリー容量 | 航続距離(CLTC) | モーター出力 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| エントリーグレード | 50.03kWh | 430km | 204ps(150kW) | 約225万円〜 |
| ミドルグレード | 58.37kWh | 520km | 204ps(150kW) | 約250万円〜 |
| 上級グレード | 67.92kWh | 610km | 224ps(165kW) | 約280万円〜 |
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bZ3Xは3種類のバッテリー容量を用意し、ユーザーの用途や予算に応じた選択肢を提供しています。最上位グレードには67.9kWhのLFPバッテリーが搭載され、CLTCサイクル基準で航続距離610kmを実現しています。この数値は中国国内のEV基準でありながら、実用域でも500km以上の走行が期待でき、日常の買い物から長距離ドライブまで幅広く対応可能です。
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エントリーグレードでも50.03kWhのバッテリーで430kmの航続距離を確保しており、都市部での日常使いには十分なスペックとなっています。ミドルグレードは58.37kWhで520kmの航続距離を提供し、バランスを重視するユーザーに適した選択肢です。急速充電にも対応しており、約30分で80%まで充電可能とされています。
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ボディサイズは全長4600mm×全幅1850〜1875mm×全高1645〜1660mm、ホイールベース2765mmと、日本で販売されているRAV4と同等のサイズ感を持ちながら、bZ4Xよりも少しコンパクトに仕上げられています。駆動方式はFFのみで、モーター出力は204ps(150kW)と224ps(165kW)の2種類が用意されています。
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bZ3Xの詳細スペックとバッテリー性能の解説
bZ3Xには、トヨタ車として初めて市街地対応の高度運転支援システム(ADAS)が搭載されています。この「TOYOTA PILOT」と名付けられたシステムは、中国の自動運転スタートアップ企業「Momenta」と共同開発されたNOA(Navigation on Autopilot)機能です。NOAはナビゲーションで目的地を設定すればシステムが運転・操縦を行い、ドライバーはいつでも運転に復帰できるように監視する運転支援システムで、自動運転レベルではレベル2に相当しますが、その機能は一般にイメージされる"自動運転"そのものです。
参考)bZ3X - スマートモビリティJP
中国では高速道路NOAが急速に普及しつつあり、一部のプレミアムカーでは市街地にも対応したNOAが搭載されるようになっていますが、bZ3Xはこれを日本ブランドとして初めて実装しました。システムには高精度マップをリアルタイムで生成する最新のAI技術が搭載されており、LiDAR(レーザーレーダー)も装備されています。
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インテリアも最先端の装備で固められています。運転席には8.8インチのディスプレイ、中央にはテスラを彷彿とさせる14.6インチの大型インフォテインメントディスプレイが配置されており、このメインディスプレイは非常にサクサクと動き、日本の一般的なナビシステムとはレベルが違うと評価されています。音声認識による操作機能、11スピーカーのプレミアムサラウンドシステム、32色のアンビエントライトなど、快適性を高める装備が充実しています。
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市街地対応ADAS「TOYOTA PILOT」の技術詳細
bZ3Xは「COZY HOME」をコンセプトに、大空間で快適な居住性を実現したファミリー向けSUVとして設計されています。内装はミニマルでスッキリとしたデザインで、物理ボタンがほとんどなく、非常にシンプルにまとめられています。ルーフには大型のガラス製ルーフが採用され、開放感を高めており、日差しが強い場合は布製のカーテンで遮光することも可能です。
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内装のテクスチャー感は洗練されており、スウェードのような柔らかい素材や、触ると少しプニプニとした柔らかいピラー材が使用されています。シートの質感も優れており、バニティミラーも大きく、両サイドから照明が備わっています。後席の足元は非常に広く、ドアはほぼ90度まで開くため、乗り降りも快適で、年配者や子どもも利用しやすい設計となっています。
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シートアレンジの自由度も高く、オプションのマットを使えば車内をベッドルームにすることもできます。後席用エアコン吹き出し口も装備されており、長距離移動でも快適に過ごせる環境が整っています。Cピラーのスリム化により後方視界が広く、運転時の安心感もアップしています。シートヒップポイントが低すぎず、自然な姿勢での乗り込みが可能な点も評価されています。
bZ3Xの発表直後、中国国内の予約受付ページはアクセス過多により一時的にサーバーダウンするという異例の事態が発生しました。これは単なる技術的な問題というより、bZ3Xへの期待感と注目度の高さを如実に物語っています。2025年7月には6834台を販売し、2か月連続で前月の販売記録を更新するという快進撃を続けています。
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この成功の背景には、中国市場に特化した徹底的なローカライゼーション戦略があります。従来のトヨタのグローバル戦略とは異なり、bZ3Xは現地プラットフォームの活用、家族ユースを徹底想定した室内設計、価格主導の競争力確保という全てが「中国で勝つ」ために最適化されており、日本市場への転用を前提としていないこと自体がこのモデルの強さであり、同時に日本未導入の最大理由でもあります。
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中国ではWeiboや小紅書(RED)などSNSでのリアルタイム反応が購買行動に直結する傾向が強く、発表と同時に口コミが爆発的に拡散しました。ライブ配信や短尺動画での実車紹介が、購買熱を一気に加速させたのです。特に「航続距離620km+自動運転支援付きで230万円台〜」というスペックは、競合他社にないインパクトを与えました。
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トヨタは今後も中国市場での電動化戦略を強化していく方針で、bZ3Xの成功は「中国の中国による中国のための本気EV」という新しい製品開発アプローチが有効であることを証明しました。現地協業で得た「速く・安く・広く」のノウハウ、そして「車内時間の価値最大化」という設計思想は、今後の日本向けEV開発にも確実に波及するはずです。youtube
中国市場でのbZ3X販売動向と日本勢の反転攻勢

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