トヨタ・GRカローラに搭載されるG16E-GTS型1618cc直列3気筒ターボエンジンは、単なる高出力エンジンではなく、WRC(世界ラリー選手権)のレギュレーション用に開発された競技车由来の心臓です。最高出力304ps/6500rpm、最大トルク370Nm/3000-5550rpmを発揮し、わずか1.6リッターという排気量で、かつての欧州スポーツカーをはるかに上回る加速感を実現しています。
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このエンジンの開発背景には、レースで勝つための緻密な設計哲学があります。通常、高出力を得るために4気筒エンジンが選ばれるところを、あえて3気筒を採用したのは、エンジン軽量化と排気干渉の排除が目的です。4気筒エンジンでは排気干渉によってパワー出力やエンジンレスポンスが低下してしまいますが、3気筒ではこの課題を回避でき、ドライバーのアクセル操作に対してきわめて機敏に反応するエンジン特性を実現しました。さらに驚くべきは、このハイパフォーマンスエンジンでありながら、WLTC燃費で12.4km/リッターという優れた燃費性能を両立させている点です。
エンジンの組立工程も他に類を見ません。下山工場で厳格な基準をクリアした高技能者による手組みで、エンジンの両側面には「匠プレート」が刻印されます。これは単なる品質証明ではなく、職人の一人一人が自らの名誉をかけて組み立てたという証です。余計な摩擦やバランス不良を徹底的に排除することで、カタログスペック以上の性能を引き出すという、ものづくりの哲学が貫かれています。
多くのエンジニアや自動車ファンが疑問に思う「なぜ3気筒?」という問いには、レース現場の知見が詰まっています。まず軽量化という大きなメリットがあります。エンジンのサイズが小さくなることで、車全体の軽量化につながり、運動性能の向上に直結するのです。
次に重要なのは排気干渉の回避です。4気筒エンジンでは複数の気筒から同時に排気が行われ、排気管内で互いに干渉し合い、パワーロスが生じます。これはレース用エンジンにとって致命的な欠点です。一方、3気筒では各気筒の排気タイミングがずれるため、このような干渉が発生しにくく、高効率な排気が実現できます。さらに、振動面での懸念もありますが、1次バランサーの采用とエンジンマウント位置の最適化により、日常使用で4気筒との遜色のない静粛性を実現しました。
ボア×ストロークの設定も独特です。87.5mm×89.7mmという数値は、他のエンジンから単純に流用したのではなく、「ラリーではどの回転数でどのようなトルク特性が必要か」を徹底調査して1から設計されました。このレース現場での実データに基づいた設計が、実際の使用時に期待を上回る走行フィーリングを生み出すのです。
トヨタ・GRカローラに採用されるGR-FOURは、電子制御多板クラッチを用いたアクティブトルクスプリット4WDシステムで、これまでのトヨタスポーツ4WDのDNAを継承しながら、さらに進化させています。最大の特徴は、ドライバーがシーンに応じて前後輪のトルク配分を自由に選択できることです。
参考)PERFORMANCE
NORMALモードは前輪60:後輪40に固定され、日常使いや一般的な路面環境に最適です。安定感を重視しながらも、必要なときの素早いトラクション確保を実現しています。GRAVELモードは前後輪50:50の完全均等配分で、砂利道や雪上など滑りやすい路面でのグリップ力を最大化します。TRACKモードは最も動的で、前輪60~30:後輪40~70で連続可変制御され、サーキット走行やジムカーナなどの競技を想定した設定となっています。
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このGR-FOURシステムは、かつてS耐(スーパー耐久シリーズ)に参戦していた水素カローラのレース経験をフィードバックしたもので、国内外のサーキットでの厳しい走り込みから生まれた成熟したテクノロジーです。強烈な上下左右Gが加わるニュルブルクリンクのようなプロのサーキットでも、安定した走行を実現する設計となっています。
参考)トヨタ GRカローラ 新車情報・カタログ - carview…
GRカローラの最上級グレードとして設定されたモリゾウエディションは、わずか70台の限定販売です。マスタードライバーである豊田章男会長自身がハンドルを握り、試作車での走り込みを通じて隅々までこだわりを込めた特別仕様車となっています。
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通常のRZグレードとの最大の相違点は、リアシートが装備されていない徹底的な軽量化とドライバーファースト設計です。最大トルクが標準の370Nmから400Nmへと30Nm増加し、動力性能が大幅に向上しています。ギア比もクロス化されており、よりダイレクトなアクセルレスポンスを実現しています。タイヤは通常から10mm拡幅されたハイグリップタイヤが装着され、コーナリング限界が引き上げられています。
ウィンドシールドガラスには豊田会長のサインが施され、マットスティールという専用ボディカラーがレーシーな雰囲気を演出します。これは単なるプレミアムグレードではなく、レース活動から得られた知見の結晶であり、「お客様を魅了する野性味」と「気持ちが昂り、ずっと走らせていたくなる走りの味」を追求した、真摯なクルマづくりの証です。
参考)MORIZO Edition
スポーツハッチバックでありながら、トヨタ・GRカローラが実現している長距離快適性は、業界でも高く評価されています。高剛性ボディと最適化された足回り、特にリアサスペンションのしなやかさが、路面の凹凸を効果的にいなし、安定した乗り心地を提供します。この両立は決して簡単ではなく、GRヤリスとの比較でも、GRカローラの方が総合的な乗り心地がより快適で、室内騒音も抑えられているという評価が多数寄せられています。
参考)GRカローラ 乗り心地は本当に硬い?オーナー評価を分析
メルセデス・ベンツCクラス(W205型)に匹敵するとまで評される乗り心地は、ホイールベースがGRヤリスより80mm長いことも貢献しています。直進安定性に優れた設計により、高速道路での長距離移動でもドライバーと同乗者の身体的負担を軽減します。スポーツ走行のみならず、家族との週末ドライブやロングツーリングにも十分対応できる、真の意味で万能なグランドツアラーとしての地位を確立しているのです。
メーカーオプションの「JBLプレミアムサウンドシステム」では、ラゲージにサブウーハーが追加され、より迫力のあるサウンドが実現されています。さらに2025年の改良モデルではアクティブサウンドコントロール(ASC)が新たに装備され、ドライバーの加減速操作に応じたスポーツサウンドがスピーカーから鳴動し、直感的に車両状態を把握できるようになりました。
2025年11月発売の改良型トヨタ・GRカローラは、従来の抽選販売から通常販売体制へと転換し、より多くのユーザーが購入できるようになりました。この改良では、市街地のみならずニュルブルクリンクのような過酷な走行環境でも一体感の高い走りを実現するため、ボディ骨格と吸気冷却性能が大幅に改善されています。
フロントボディ、フロア、リアホイールハウス付近を中心に、構造用接着剤の塗布距離が従来の32.7m(RZグレード)に延長され、質量増加を最小限に抑えながらボディ剛性を高めました。さらに、長時間の全開走行でエンジンルーム内温度が上昇した場合でも、安定した高いエンジン出力を維持するため、2次吸気口にクールエアダクトが追加されました。フロントグリルから直接外気を取り込むこのダクトは、吸気空気温度を大幅に低下させ、サーキット走行での信頼性を飛躍的に向上させています。
既存オーナー向けには2026年春を予定としたアップグレードプログラムが提供される予定です。このプログラムでは、2023年発売モデルのユーザーも最大トルク400Nmへのアップと、GR-FOURの制御ロジック変更(前後輪駆動力配分が前50:後50から前60~30:後40~70の可変制御へ)により、より高性能なドライビングエクスペリエンスを享受できるようになります。
トヨタ・GRカローラの公式スペック、グレード情報が掲載されたTOYOTA GAZOO Racing公式サイト
carview!によるトヨタGRカローラの詳細なカタログ情報、オーナー評価、試乗インプレッション

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