道路交通法第55条第1項では、「車両の運転者は、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させ、又は乗車若しくは積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない」と定められています。この規定により、トラック荷台人を含む荷台乗車は原則として違法行為として取り扱われます。違反した場合は「乗車積載方法違反」に該当し、違反点数1点が加算される可能性があります。しかし、この原則にはいくつかの例外が存在するため、状況によってはトラック荷台人の乗車が合法となる場合もあります。
実は、多くの人がこの例外の存在を知らないため、合法的な乗車であっても違法と勘違いしているケースが少なくありません。特に農村地域や地方都市では、トラック荷台人の乗車を目にすることがありますが、これらのほとんどは法的に許可された状況下での乗車です。正確な知識を持つことで、安全かつ適切なトラック運用が可能になります。
道路交通法第55条の但し書きでは、「貨物自動車に貨物を積載している場合は、貨物を看守する必要最低限の人員を荷台に乗車させて運転することができる」と規定されています。この規定が適用される場合、トラック荷台人は合法的に乗車できます。看守・監視の対象となる貨物には、ペットなどの動物、自転車やバイク、カヌー、サーフボードなどのアウトドア用品が該当します。これらの貨物は、移動中に落下や破損の危険性があるため、専門的な監視が必要とされています。
看守・監視作業に従事するトラック荷台人には、積荷を常に視認し、走行中の振動や急加速・急制動時に荷物が動かないか確認する責任があります。特に高速道路での走行時には、安全性がより重要になります。貨物の種類によって監視の内容や難度が異なり、例えば生き物の場合はより緊密な観察が必要です。一般的に看守作業に必要なトラック荷台人の人数は1~2人程度が想定されており、荷物の大きさや価値、事故のリスク度合いによって判断されます。
参考リンク:看守作業中の具体的な安全基準と事故事例を掲載
荷役作業の安全対策10選 – 事故や労働災害を防止するポイント
道路交通法第56条により、出発地を管轄する警察署長の許可を得れば、通常は禁止されているトラック荷台人の乗車が特例として認められます。この許可制度は、祭礼行事や選挙活動などの社会通念上やむを得ない特殊な目的の場合に活用されます。秋祭りで太鼓を乗せたトラックの「打ち手」がトラック荷台人として乗車する場合や、選挙活動中に候補者応援者がトラック荷台人として移動する場合などがこれに該当します。
許可申請には、「荷台乗車許可申請書」を出発地管轄の警察署に提出する必要があります。この申請書には、乗車の目的、走行ルート、予定走行日時、乗車予定者の人数と概要などを詳細に記載する必要があります。申請後、警察署長が車両の構造や走行予定地の道路・交通状況を総合的に判断し、支障がないと認めた場合にのみ許可が下ります。許可を得たトラック荷台人であっても、許可書の内容に従わなければ違反となるため、申請内容の厳守が重要です。
申請から許可までの期間は一般的に1~2週間程度必要とされているため、行事開催予定日の事前申請が必須です。許可条件として、指定された走行時間帯や走行経路の遵守、速度制限(通常は時速40km以下)、そして指定された積載場所でのみトラック荷台人の乗車が許可される場合もあります。
道路交通法第55条では明確な人数規定がされていませんが、「必要最低限」という表現から、一般的には2~3人が上限とされています。人数が増えると、転倒や落下のリスクが急激に高まり、緊急時の対応も困難になります。トラック荷台人の安全性は車両の構造、走行速度、道路状況によって大きく変動するため、状況に応じた人数調整が必要です。
トラック荷台人の転倒や落下を防ぐため、以下の安全対策が推奨されます。
これらの対策を講じても、トラック荷台人の乗車に伴うトラブルが発生した場合はすべて自己責任となります。自動車保険も通常、乗車席以外への人員乗車については補償対象外とされているため、万が一の事態に備えた特別な保険契約が必要な場合もあります。運転者は十分な注意力を持ち、ハンドル操作やブレーキ動作を慎重に行う必要があります。
参考リンク:安全昇降設備の標準規格と実装基準について
労働安全衛生規則に基づく可搬式昇降設備の導入ガイド
トラック荷台人が違法となる主なパターンは、積荷がない状態での乗車です。積荷なし+人乗車の場合は「問答無用で違法」となり、乗車積載方法違反に該当します。例えば、単にドライブを楽しむ目的でトラック荷台人が乗車する場合、許可申請もなく荷物も積まれていない場合などが該当します。このような状況での違反には違反点数1点が加算されるほか、警察官による指導や注意が行われる可能性があります。
また、許可を得ていても条件違反があれば処罰対象となります。例えば、許可申請書に記載された走行ルートを外れた場合、許可時間帯以外での走行、または許可人数を超えるトラック荷台人の乗車などです。これらは許可条件の違反として、より重大な処罰につながる可能性があります。さらに、トラック荷台人が転倒・落下して負傷した場合、運転者は過失傷害罪に問われる可能性もあります。
実務上、警察官の判断によって違法性が判定されるため、曖昧なケースでは事前に所轄の警察署に相談することが重要です。特に商用利用や定期的なトラック荷台人の乗車がある場合は、正式な許可取得による対応が必須となります。業務上必要な場合は、運送会社として安全管理規程を整備し、トラック荷台人の教育訓練を実施することが法的リスク回避につながります。

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