タクシーのSOS表示は、乗務員が強盗や暴行などの緊急事態に遭遇した際に、周囲に助けを求めるために使用する重要な安全装置です。2000年に発生した西鉄バスジャック事件をきっかけに、交通業界全体でこうした緊急通報システムが順次開発され、配備されてきました。
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SOS表示を発見した場合、最も重要なのは速やかに110番通報することです。通報の際は、タクシー会社名、車種、ナンバープレート、車両の色、走行している道路名と進行方向、車内の様子など、可能な限り詳細な情報を記憶して警察に伝えてください。
参考)タクシーのアンドンが赤く点滅していたら110番通報を!
ただし、むやみに車両に近づいたり、直接声をかけたりすることは避けるべきです。車内の乗客に気付かれないように、落ち着いて通報することが運転手の安全を守るために重要となります。携帯電話の緊急通話機能を使えば、簡単に110番につながります。
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タクシーSOS表示の詳細と対応方法について(ドライバーファースト)
実際のところ、SOS表示が必ずしも真の緊急事態を示しているわけではありません。運転手が誤ってSOSボタンを押してしまい、それに気づいていないケースも稀に発生します。また、経年劣化による配線トラブルや機器の故障で誤動作が生じることもあります。
誤作動かどうかを判断する際は、まず落ち着いて車内の様子を確認することが推奨されています。窓ガラスに手を叩きつける暴力行為や、明らかに異常な状況が見られる場合は即座に通報すべきです。一方、車内が平穏に見える場合でも、念のため110番のオペレーターに「誤作動の可能性もある」と伝えながら通報することが適切です。
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タクシー会社の配車センターは、緊急スイッチが作動すると同時にその情報を把握し、事実確認を行う体制を整えています。現代の配車システムでは、GPS機能により車両の現在位置とともに非常事態を知らせる信号を受信できるため、会社側も迅速に対応可能です。
参考)タクシーの運行に貢献するスマートウェーブのIP無線機
現在のタクシーには、運転手の安全を守るための様々な防犯装置が装備されています。主要な装置として、防護板(防犯ボード)、防犯カメラ、車外防犯灯、GPSと連動した通報システムなどがあります。
参考)タクシーの防犯対策の重要性!タクシー会社の取り組みとは - …
防護板は運転席と後部座席の間に設置される透明な板で、見た目よりも頑丈な構造になっており、乗客からの暴力的な行動に対して運転手を物理的に守る役割を果たします。特にコロナ禍以降、全国のタクシー会社で設置が急速に進み、現在では標準装備といえる状況です。「防犯カメラ作動中」のステッカーを掲示することで、トラブルや犯罪を未然に防ぐ抑止効果も期待できます。
参考)タクシーは安全?SOS信号等の最新安全装置をご紹介 - 採用…
車内に設置された防犯カメラは、万が一のトラブル発生時に証拠映像を記録する重要な装置です。また、IP無線システムを活用することで、タクシーの位置をリアルタイムで把握し、緊急時には動態管理システムに警告音とともに表示される仕組みも導入されています。
参考)タクシーの安全装置 - 足立区・台東区のタクシー 坂本自動車…
タクシーの安全装置とSOS信号について(坂本自動車)
タクシーの行灯(あんどん)が設置された背景には、戦後の治安状況が深く関係しています。1960年に行灯の設置が義務付けられた理由は、終戦後にタクシー強盗が頻発していたためです。不特定多数の乗客が利用するタクシーという密室空間で、緊急事態が発生した際に誰かに知らせる手段が必要でした。
行灯は「防犯灯」とも呼ばれ、車内で非常事態があった場合に赤く点滅して外部へ知らせる役割を担っています。現在主流となっているLED式の表示システムは、以前の幕式(方向幕)タイプから進化したもので、文字や表示が見やすく、タクシー事業者それぞれに応じた表示のカスタマイズが可能になっています。
興味深いことに、タクシードライバーが実際に犯罪に巻き込まれる確率は0.02%と非常に低い数値です。しかし、酒に酔った乗客によるトラブルは年に何度か発生しており、こうした備えは決して無駄ではありません。万が一の際に善良な市民の通報が運転手の命を救うこともあります。
参考)タクシー表示板に「SOS」サイン 見かけたらどうすれば?導入…
最近のタクシーには、従来のSOS表示だけでなく、より高度な緊急通報システムが導入されています。SOSボタンが押されると、会社に自動的に連絡が入る仕組みが標準装備されています。さらに進化したシステムでは、TAXI-Cloud BIのようなクラウドベースの管理システムにSOS信号を送信する機能も実装されています。
参考)【できること紹介③】TAXI-Cloud BIのSOS機能を…
これらのシステムでは、外部スイッチによってクラウドシステムへSOS信号を送ることが可能で、配車センターのモニター上にその表示がされ、音声でも知らせる機種もあります。15秒毎に位置情報を発信するIP無線機により、リアルタイム性の高い位置把握が実現されており、緊急ボタンが押されるとすぐに動態管理システムに警告音と共に表示されます。
ただし、営業区域外の遠方に車両が行くと、配車システムが正常に位置把握できなくなる恐れもあります。特に個人タクシーは個人で仕事をしているため、緊急事態に陥った場合は緊急サインのみが頼りとなり、第三者の通報がより重要になります。タクシー会社では入社後の乗務員研修で、緊急事態の対処法を最初に教え込む体制を整えています。
タクシーの緊急サイン表示の詳細解説(善藤洋洋)
自動車に乗る全てのドライバーにとって、タクシーのSOS表示を理解し、適切に対応することは重要な社会的責任といえます。「誰かが通報するだろう」という思い込みは大変危険で、実際には誰も通報しないまま時間が過ぎてしまう可能性があります。
走行中にSOS表示を発見した場合、安全な場所に停車してから通報することが推奨されます。運転中のスマートフォン使用は法律で禁止されているため、まず安全を確保することが第一です。通報時には、発見時の状況を詳細に説明することで、警察の迅速な対応につながります。
タクシー業界では、深夜や22時以降の割増料金時間帯に酔客とのトラブルが発生しやすいとされています。そのような時間帯に走行する際は、特にタクシーのSOS表示に注意を払うことが望ましいでしょう。GPS配車システムやIP無線による位置把握システムが普及しているとはいえ、一般市民の目撃情報と通報が運転手の安全を守る最後の砦となることも少なくありません。
近年、防犯カメラの設置が広く認知されたことで強盗事件は減少傾向にありますが、万が一の事態に備えて、全てのドライバーがSOS表示の意味と対応方法を知っておくべきです。見かけた際は躊躇せず、迷わず110番通報することで、タクシードライバーの命を救う可能性があることを忘れないでください。