スターリングエンジン発電機家庭用の仕組みと選び方

スターリングエンジン発電機は家庭用としてどのような特徴があるのでしょうか。外燃機関の仕組みや実用化の現状、選び方のポイントまで詳しく解説します。車載用途への可能性も気になりませんか?

スターリングエンジン発電機家庭用

スターリングエンジン発電機家庭用の特徴
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外燃機関で熱源を選ばない

シリンダ外部から加熱・冷却することで作動するため、太陽熱、廃熱、バイオマスなど多様な熱源が利用可能です

高効率な発電性能

理論上はカルノー効率に近い熱効率を実現でき、一般家庭用で発電効率30%を達成した実例があります

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環境にやさしい静音性

爆発工程がないため騒音や振動が少なく、排気ガスもクリーンで環境負荷が低い特徴があります

スターリングエンジン発電機の基本原理と仕組み


SM SunniMix スターリングエンジンモデル スターリングエンジン発電機モデル 全2タイプ - #1

 

スターリングエンジン発電機は、密閉したシリンダの外側から熱を加えて作動する外燃機関です。シリンダ内部にはディスプレーサピストンとパワーピストンという2つのピストンが内蔵されており、これらは90度の位相差をつけてクランク軸に連結されています。作動ガスとしては一般的にヘリウムガスが使用され、高温室と低温室の間を移動しながら膨張・収縮を繰り返します。
参考)https://www.yanmar.com/jp/about/technology/technical_review/2022/08_5.html

動作の流れは「加熱→膨張→冷却→圧縮」という4つの行程で構成されます。ディスプレーサピストンが上死点から下死点に移動する際、ヒータを通過したヘリウムガスが加熱されて膨張し、パワーピストンを押し出します。次にディスプレーサピストンが逆方向に移動すると、ガスはクーラを通過して冷却・収縮し、パワーピストンが引き上げられるのです。この往復運動がクランク軸の回転トルクに変換され、連結された発電機によって電力が生成される仕組みになっています。
参考)https://www.yanmar.com/media/news/2021/07/02045800/stirling_engines_catalog.pdf

理論的な熱効率はカルノー効率と等しくなり、低温側温度を高温側温度で除した温度比が小さいほど効率が高くなります。実際のスターリングエンジン発電機では、有効熱入力をベースとした発電効率30%を達成した事例があり、これは機械式駆動機構を採用したエンジンとしては極めて高い水準です。
参考)産総研:寒冷地用最適コジェネ・システムの開発

スターリングエンジン発電機家庭用の実用化状況

家庭用スターリングエンジン発電機の実用化は着実に進んでいます。産業技術総合研究所が開発した一般家庭用システムでは、発電出力800W、温水出力10kW、総合効率80%という寒冷地の家庭に適した性能を実現しました。このシステムは灯油および都市ガスに対応し、バーナ出力によって発電量と給湯量のバランスを調整できるコジェネレーションシステムとして設計されています。​
芝浦工業大学が開発した軽自動車型ハイブリッド電源車では、3kgの木質バイオマスペレット(約120円)を1時間燃焼することで1kWの電力とバスタブ1杯分の温水を供給できます。さらに600Wのソーラーパネルと48V・110Ahの蓄電池を組み合わせることで、災害時にも安定した電力供給が可能です。2014年11月には経済産業省の規制緩和により、出力10kW未満のスターリングエンジン発電設備が一般用電気工作物として区分され、実用化への道が開かれました。
参考)非常時に電気とお湯を供給する軽自動車型電源車を開発 芝浦工業…

市販製品としては、ADMIEXCOエンジン設計が開発した500Wの家庭用モデルが注目されています。全長870mm、重量45kgというコンパクトサイズで、暖炉やバーベキュー用コンロなどの小さな熱源でも発電が可能です。緊急時には移動が容易な小型防災用独立電源としての活用も期待されています。
参考)スターリングエンジン発電機 - メーカー・企業と製品の一覧

スターリングエンジン発電機のメリットとデメリット

スターリングエンジン発電機の最大のメリットは熱源の多様性です。ガソリンや軽油を必要とする内燃機関とは異なり、天然ガス、灯油、廃油、バイオマス、さらには焼却炉の排熱まで、あらゆる高温熱源を利用できます。爆発行程がないため騒音や振動が極めて少なく、NOxなどの有害物質の発生も抑えられるため環境にやさしい特徴があります。
参考)スターリングエンジンの自作と性能評価の話|よこくら

理論上はカルノーサイクルに最も近い熱効率を実現できる可能性があり、高温部と低温部の温度差が大きいほど高効率になります。外部から動力を与えることでヒートポンプとして利用でき、空調や冷凍機への応用も可能です。
参考)スターリングエンジン - Wikipedia

一方でデメリットも存在します。エンジンの重量当たりの出力(パワーウェイトレシオ)が他の実用的なエンジンに比べて低く、十分な出力を得るには装置が大型化する傾向があります。実用的なエンジンでは高圧の水素やヘリウムを作動流体に使用するため、高度な気密性が求められます。作動流体の加熱効率や再生器の効率を高めるには高度な技術や材料が必要となり、製作コストが増大する課題があります。
参考)https://www.nmri.go.jp/archives/eng/khirata/stirling/problems/problems_j.html

またガソリンエンジンと比べて制御の応答性に乏しいため、負荷変動が大きい用途には向きません。そのため現状ではスペースの制約や応答性を必要としない定置型の発電用途に限定される傾向にあります。​

スターリングエンジン発電機家庭用の選び方とポイント

家庭用スターリングエンジン発電機を選ぶ際は、まず必要な発電出力を明確にすることが重要です。一般家庭用では800W~1kW程度の出力が標準的で、スマートフォン約70台分の充電や基本的な家電製品の使用に対応できます。同時に温水供給を必要とする場合は、コジェネレーションシステムを選択することで総合効率80%程度の高効率運転が可能です。​
使用する燃料や熱源の種類も選定の重要なポイントです。都市ガスや灯油を使用する場合は、それに対応したバーナシステムを備えたモデルを選びます。木質バイオマスペレットなどの再生可能エネルギーを活用したい場合は、専用の燃焼システムを持つモデルが適しています。排熱利用を目的とする場合は、熱交換器の温度範囲や熱容量を確認する必要があります。
参考)株式会社 プロマテリアル

設置スペースと重量も考慮すべき要素です。500Wクラスのコンパクトモデルで重量45kg程度、1kWクラスでは100kg以上になることもあります。移動式の電源車タイプを選べば、災害時や屋外での使用にも対応できる柔軟性があります。​
価格面では、教育用の小型キットが数千円から入手できますが、実用レベルの家庭用発電機は数十万円から数百万円の投資が必要です。7.5kWクラスの業務用モデルでは800万円~900万円程度の価格帯になります。長期的な運用コストを考える際は、燃料費や保守費用も含めて総合的に判断することが重要です。
参考)【楽天市場】スターリングエンジン キット 発電の通販

スターリングエンジンの車載用途と将来展望

スターリングエンジンの自動車への応用研究は以前から行われており、フォードトリノにダブルアクティング型のエンジンを車載した事例があります。スワッシュプレート機構を採用したこのシステムは、乗用車用途への可能性を示しました。しかし制御の応答性が乏しく負荷変動への追従が難しいため、一般的な自動車の主動力としての実用化は進んでいません。
参考)スターリング機関の乗用車に対する応用

一方で車両への搭載という点では、災害対応用の電源車として実用化が進んでいます。軽トラックの荷台にパッケージされたシステムは、支援が必要なエリアへすぐに駆けつけることができ、蓄電機能により夜間や天候不良時の電力供給にも対応可能です。将来的には災害で発生したガレキなどの廃材を燃料としてその場で調達し発電できる電源車の完成が目指されています。​
潜水艦の機関としての利用は、スターリングエンジンの特徴を活かした成功例です。低騒音・低振動という特性は、水中での静粛性が求められる潜水艦に最適であり、スペースの制約や応答性の要求が比較的緩やかな用途として定着しています。​
今後の展望としては、JAXAやNASAで宇宙利用を目指した研究が行われており、太陽熱や原子力などの熱源を利用した発電システムとしての可能性が注目されています。地上では排熱回収発電システムとして、工場やごみ焼却施設などの産業分野での活用が期待されています。家庭用としては、規制緩和により小型システムの普及が進むことで、エネルギーの地産地消や防災対応の選択肢として認知度が高まることが予想されます。
参考)スターリングエンジン - メーカー・企業6社の製品一覧とラン…

ヤンマーの技術解説:スターリングエンジンの構造と動作原理について詳しく図解されています
産業技術総合研究所のプレスリリース:家庭用コジェネレーションシステムの開発成果と実用化への取り組みが紹介されています

 

 


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