自動車のエンジンがどれほど優秀な設計であっても、熱効率が100%に達することは物理学的に不可能です。その根本的な原因は、熱力学第二法則にあります。トムソンの法則として知られるこの法則は「一つの熱源から正の熱を受け取り、これを全て仕事に変える以外に、他に何の変化も起こさないようにするサイクルは存在しない」と述べています。
言い換えれば、燃料から得られた全ての熱をエンジンの動力に変えることは、宇宙の根本的なルールに反するということです。必ず一部の熱が排熱として外部に逃げていくのです。この原理は、発電所から家庭用冷蔵庫に至るまで、あらゆる熱機関に共通する普遍的な制限です。
熱効率をめぐる理論的な上限を示すのが、カルノーサイクルです。カルノーサイクルは、高温熱源と低温熱源の二つの熱源の間で動作する理想的な熱サイクルで、4段階のプロセス(等温膨張、断熱膨張、等温圧縮、断熱圧縮)から構成されています。
カルノーサイクルの理論熱効率は、以下の式で表されます:ηth=1−T1T2。ここで、T1は吸熱源(燃焼室)の温度、T2は排熱源(排気)の温度です。この式から明らかなように、高温熱源と低温熱源の温度が同じであれば効率はゼロになり、低温熱源が絶対零度(-273.15℃)に達してはじめて効率が1に近づきます。現実的には絶対零度は達成不可能なため、どんなに優れたエンジン設計でも、この理論値を超えることはできません。
実在するエンジンは、カルノーサイクルのような理想的な準静的変化(無限に時間をかけてゆっくり行われる変化)を実現できません。実際のエンジンは高速で運転され、急速な圧縮・膨張を行うため、カルノーサイクルよりもはるかに低い効率に留まります。
次に、摩擦損失があります。ピストン、クランクシャフト、タイミングチェーンなどの機械部品が相互に摩擦するにつれ、膨大なエネルギーが熱として浪費されます。エンジン技術者の試算によれば、摩擦による損失だけで全体の20~30%に達することもあります。
さらに、吸排気システムの損失も無視できません。吸気工程で吸い込まれる空気は、エンジンブロック内を通過する際に圧力損失を受けます。排気工程では、ピストンが上死点に到達する前に排気弁が開いて圧力が低下するため、有用な膨張仕事が得られなくなります。このタイミング損失は、エンジンの基本的な構造に由来するもので、完全には排除できません。
熱効率を1に ならない理由の根底には、高温熱源と低温熱源の温度差という物理的制約があります。ガソリンエンジンの燃焼室温度は、典型的には2000~2500 Kに達しますが、排気口での温度は800~900 K程度です。一方、周囲環境の温度は約300 K(常温)に固定されています。
カルノー効率を計算してみると、ηC=1−2200300≒0.86となり、理論上の最高効率でも86%です。しかし、この値は完全な可逆サイクルを仮定した場合であり、有限なパワー(単位時間当たりの仕事量)を持つ実エンジンでカルノー効率を達成することは絶対に不可能です。最新の研究によれば、有限な出力を持つ熱機関がカルノー効率で運転することは、多くのケースで物理的に実現不可能であることが明らかになっています。
実際のエンジンは、より低い温度差の条件下で運転されることもあります。冷却システムが効果的に機能すれば排気温度は低下しますが、そうなると吸熱源の温度も低下してしまい、結果的にTH−TLの差は広がりません。この二律背反的な関係が、エンジン設計者の前に立ちはだかる究極の課題です。
熱効率に関する基本定義と熱力学第一法則・第二法則の詳細説明
カルノーの定理と理論的効率上限に関する数学的解説
自動車エンジンの熱効率が100%にならない理由と実際の損失メカニズム

HRouGE 充填機 液体充填機 全自動液体充填機 光電誘導充填 コンベアテーブル 流れ作業のライン 充填精度> 99% 自己吸い上げ機能 滴下防止設計 マイクロコンピュータ制御 高効率 低消費電力 熱保護 商業用 110V (CSY-4H-3200)