食品表示法ガイドライン基本とキッチンカー対応

車で移動販売を行う事業者の方向けに、食品表示法ガイドラインの必須知識を解説します。義務表示、アレルギー、栄養成分の要点をコンパクトにまとめました。あなたの移動販売ビジネスは適切な表示ができていますか?

食品表示法ガイドライン基本

この記事でわかること
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食品表示法の対象と義務

加工食品・生鮮食品の表示義務と対象者を明確化

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表示違反時の罰則

違反内容に応じた懲役・罰金の詳細を説明

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キッチンカー向け対応

移動販売車における食品表示の特殊事情を解説

食品表示法ガイドライン対象事業者

食品表示法ガイドラインは、食品の製造者、加工者、輸入者、販売者といった食品関連事業者に対して表示義務を課しています。「食品関連事業者」とは、食品の製造・加工(調整及び選別を含む)もしくは輸入を業とする者で、当該食品の販売をしない者を除く者、または食品の販売を業とする者を指します。
参考)食品表示法の概要 「食品衛生の窓」東京都保健医療局

対象となる食品は加工食品、生鮮食品、添加物の3つに分類され、それぞれ表示基準が定められています。飲食店などで設備を設けて飲食させる場合は、一部の例外を除き食品表示法の適用対象外となります。
参考)食品表示法に基づく食品表示制度

容器包装に入れられた食品が基本的な対象ですが、生鮮食品の場合は容器包装に入れられていないものも表示基準の対象となる点が特徴的です。ただし、栄養成分表示については容器包装への表示が必要な場合にのみ食品表示基準に基づいた表示が求められます。​
食品関連事業者以外の販売者、つまり反復継続性のない販売を行う者(例えば小学校のバザーで袋詰めのクッキーを販売する保護者など)も基準の対象となりますが、義務表示事項は限定されています。​

食品表示法ガイドライン表示義務事項

一般用加工食品の義務表示事項は、名称、原材料名、添加物、原料原産地名(国内で製造した食材のみ)、内容量、消費期限または賞味期限、保存方法、製造者等の氏名または名称及び住所などが含まれます。
参考)食品表示の基本ルール|食品ラベル・パッケージのことなら「食品…

原材料名の表示では、添加物以外の原材料と添加物を明確に区分し、それぞれに占める重量の割合の多いものから順に記載する必要があります。区分方法として、添加物の事項名欄を設ける方法のほか、スラッシュなどの記号や改行によって区分する方法も認められています。
参考)食品表示の作成について 新潟市

栄養成分表示については、一般用加工食品と一般用添加物では、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量に換算したもの)の5項目が義務表示となります。ただし、容器包装の表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下の場合や、消費税を納める義務が免除される事業者が販売するもの(小規模企業者を含む)などでは表示を省略できます。​
アレルギー表示では、特定原材料8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)の表示が義務付けられており、特定原材料に準ずるもの20品目については可能な限り表示することが推奨されています。
参考)https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_kakou_allegy.html

食品表示法ガイドライン違反時罰則

食品表示法に違反した場合、違反の内容によって異なる罰則が科されます。単に食品表示基準に則さない表示をした場合は、まず指示が出され、指示に従わない場合は命令(措置命令)が出されます。命令に従わなければ、違反者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人に対しては1億円以下の罰金が科されます。
参考)食品表示法の概要|沖縄県公式ホームページ

表示違反が食品の安全な摂取に重大な影響を及ぼすと考えられる場合(特定原材料の表示が適切でない、消費期限の表示が間違っている、加熱して食べるべきなのにその説明がないなど)は、即座に2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処せられることがあります。法人の場合は1億円以下の罰金が科されます。
参考)ブログエラー

最も重い罰則が科されるのは、アレルギー表示等の衛生事項の違反や、指示・命令に従わない場合です。個人には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科、法人には3億円以下の罰金が科されます。
参考)Document Moved

食品の原産地や原料原産地について虚偽の表示をした場合も、即座に2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられ、法人の場合は1億円以下の罰金が科されます。これらの指示・命令が出される場合は、同時に行政当局によってその事実が公表され、事業者の信用に大きな影響を及ぼします。
参考)食品表示法に違反するとどうなる?事例をもとに解説!

食品表示法ガイドラインキッチンカー営業

キッチンカーによる移動販売では、2021年6月の改正食品衛生法施行により営業許可が飲食店営業に一本化され、保健所検査の合格に必要な設備基準も全国統一されました。食品を取り扱う移動販売車では、一施設につき一名以上の食品衛生責任者の配置が義務付けられています。
参考)キッチンカーと移動販売車の違いとは?許可から選び方までの完全…

移動販売車においても、食品表示法の対象となる食品を販売する場合は、適切な食品表示が必要です。ただし、製造した場所で販売する場合や、不特定または多数の者に対して譲渡(販売を除く)する場合は、栄養成分表示を要しないとされています。​
キッチンカーの営業許可の範囲は自治体によって異なり、2022年以降、大阪府や栃木県では府内・県内一円に営業許可の範囲が拡大されました。自動車で使用する食品の調製、予備加工、包装等は、原則として食品衛生法に基づく許可を受けた施設(飲食店等)で行う必要があります。
参考)自動車営業をはじめられる方へ - 保健福祉部健康安全局食品衛…

移動販売の開業には、営業許可が必要な場合、営業届出が必要な場合、許可も届出も不要な場合の3つに分かれますが、完全に許可や届出が不要な移動販売は存在しません。営業する場所や販売する商品によって必ず何らかの規制を受けるため、事前に管轄の保健所に確認することが重要です。
参考)移動販売で許可がいらないケースは? 焼き芋など、許可不要の商…

食品表示法ガイドライン栄養成分表示方法

栄養成分表示は、食品表示基準別記様式2または3により表示する必要があり、「栄養成分表示」という名称を使用し、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の順で表示します。表示に用いる文字は日本工業規格Z8305に規定する8ポイント以上の大きさが必要ですが、表示可能面積がおおむね150平方センチメートル以下の場合は5.5ポイント以上でも可能です。
参考)食品表示法における栄養成分表示について 新潟市

食品単位は、100g、100ml、1食分、1包装、その他の1単位のいずれかで表示し、1食分である場合は1食分の量を併記します。栄養成分の量は販売される状態における可食部分の栄養成分の量及び熱量を表示し、水等を加えることによって販売時と摂食時で重量に変化があるものでも販売時の状態で表示します。​
表示値の設定方法には、許容差の範囲内にある一定の値による表示、合理的な推定により得られた値による表示、下限値及び上限値による表示があります。合理的な推定により得られた値を表示する場合は、「推定値」または「この表示値は、目安です。」といった表示と、根拠資料の保管が必要です。​
栄養成分表示の許容差の範囲は、たんぱく質、脂質、炭水化物、糖質、糖類、食物繊維、ナトリウム、熱量でプラスマイナス20%、ビタミン類の多くでプラス80%マイナス20%など、成分によって異なる基準が設定されています。​

食品表示法ガイドラインアレルギー表示詳細

アレルギー表示では、特定原材料8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)が義務表示となっており、2023年にくるみが追加されました。これらは発症数や重篤度から特に表示の必要性が高い食品として法令で定められています。
参考)加工食品のアレルギー表示|食物アレルギー研究会

特定原材料に準ずるもの20品目(アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)は、可能な限り表示することが推奨されていますが、義務ではないため含まれていても表示されないことがあります。
参考)アレルギー表示の対象は27品目|トピックス|46号|WEB版…

表示方法は、原則として原材料名の直後に括弧を付けて「(○○を含む)」のように個別表示をします。個別表示が難しい場合は、原材料欄の最後に「(一部に○○・○○を含む)」と一括表示することも可能ですが、どの原材料にアレルゲンが含まれるのかがわかりにくくなるため、個別表示が推奨されています。
参考)アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第17章 ア…

食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク質量が数μg/ml濃度レベルまたはμg/g含有レベルに満たない場合や、知見が不足している香料などは表示義務から除外されています。また、代替表記や拡大表記も認められており、「玉子」「エッグ」などの表記も特定原材料の表示として認められます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001546372.pdf

<参考リンク>
東京都保健医療局の食品表示法概要ページでは、食品表示基準の条文一覧や業務用食品の取扱いについて詳細な情報が提供されています。

 

食品表示法の概要 | 東京都保健医療局
消費者庁が発行する栄養成分表示のためのガイドラインには、表示方法の詳細や計算手順が記載されています。

 

食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン