輸入者と荷受人の定義と通関責任

輸入取引に不可欠な「輸入者」と「荷受人」という2つの重要な役割の定義、法的責任、そして実務上の区別について解説します。同じと思われがちなこれらの役職、その違いについてご理解いただけますか?

輸入者と荷受人の定義と通関責任

輸入者と荷受人の本質的な違い
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輸入者の責任範囲

輸入取引において法的・財務的責任を負う主体

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荷受人の責任範囲

貨物の物理的な受け取りと検品に限定される

⚖️
法的な違い

輸入者は納税義務者、荷受人は受け取り人

輸入者の法的定義と責任

 

輸入者とは、関税法によって「輸入取引により輸入される貨物については、原則として仕入書(インボイス)に記載されている荷受人である」と定義されています。しかし、単に仕入書に記載されているだけでは輸入者とは認定されません。日本に拠点を持つ買手として、実際に売買契約に関与し、貨物の到着を目的とした売買取引を行った者が、初めて輸入者としての法的地位を得るのです。

 

輸入者は通関申告、関税・消費税の計算と支払い、必要書類の提出、関税コンプライアンスの確保など、輸入プロセスにおける包括的な法的責任を負います。この責任は単なる事務作業にとどまりません。「合理的な注意」という基準が適用され、輸入者は輸入書類の正確性確認、原産国の判定、適切な関税分類、ラベリングの正確性など、最初から最後まで合法的な輸入を実現するための積極的な義務を負うのです。2023年10月の関税法基本通達改正により、この責任はより厳格化されました。

 

輸入者の具体的な法的責任と義務

輸入者が負う主な法的責任は、まず関税・税金・手数料に関する納税義務です。これらを正確に計算し、期限内に支払わなければなりません。次に、通関手続きに必要なすべての書類作成と提出義務があります。仕入書、パッキングリスト、原産地証明書など、輸入品によって異なる書類の整備と提出は輸入者の責務です。さらに重要なのは法令遵守です。輸入品が日本の基準に適合していることの確認、規制品目の場合は必要な承認の取得、不当な過少申告や偽造書類の使用防止など、コンプライアンスの全責任を引き受けなければなりません。

 

さらに見落とされやすい責任として、記録保持義務があります。税関から求められた際に、輸入取引に関連するすべての書類・記録を適切に保存し、提出できる体制の整備が必須です。この記録保持期間は通常7年間とされています。また、たとえ通関業者などの代理人に業務を委託する場合でも、その代理人が適切に「合理的な注意」を払っているか確認する責任も輸入者に残ります。

 

荷受人の定義と実務上の役割

荷受人(コンサイニー)とは、英語ではconsigneeと表記され、より広義には「輸入品を受け取る日本国内の個人または企業」を意味します。関税法上、輸入取引に基づく貨物については、通常、仕入書に記載されている者が荷受人となります。しかし重要な点として、輸入者と異なり、荷受人は物理的な貨物の受け取り人に過ぎません。

 

荷受人の主な役割は三つです。第一に、貨物が日本に到着した際に、運送人から荷物の到着通知を受け取ります。第二に、受け取った貨物を検査し、品名・数量・品質が注文内容と一致しているか確認する検品・検収の責任を負います。第三に、必要な通関書類や配達証明書などが正しく完了しているか確認する役割があります。

 

荷受人の法的責任の限定と実務的な位置付け

輸入者との大きな違いは、荷受人が通常、税関コンプライアンスに関する法的責任をほとんど負わないという点です。つまり、関税・消費税の計算や支払い、通関申告書の作成といった直接的な税務申告義務は、荷受人には生じません。これらはすべて輸入者の責任範囲です。

 

2023年10月の関税法改正以降、日本に拠点を持たない外国のブランドやメーカーは、税関事務管理人(ACP)と呼ばれる日本の代理人を指定することが義務付けられました。この場合、実際の荷受人として指定される企業も、法的には税関コンプライアンスの責任を負いません。荷受人は貨物の物理的な管理と検品に特化し、法的・税務的な責任は別の主体(輸入者またはACP)が担うという構造になるのです。

 

輸入者と荷受人が異なる場合の実務対応

輸入取引では、輸入者と荷受人が同一人物となることが大半です。しかし、ビジネスの形態によっては両者を分ける必要が出てきます。最も一般的なケースが「直送」と呼ばれる取引です。この場合、資金決済を商社が担当しても、貨物は最終顧客(A社)に直接送付されます。インボイスには、輸入者として商社を、荷受人(コンサイニー)としてA社を記載します。これにより、資金流と物流を分離でき、複雑な商流に対応可能です。

 

もう一つの重要なケースが三国間貿易です。例えば、A国の製造業者が売手、C国の商社が買手、B国の最終顧客が荷受人という構造があります。この場合、インボイスの記載は以下のようになります:輸出者がA国製造業者、バイヤーがC国商社、コンサイニー(荷受人)がB国の最終顧客となります。A国から見ると、実際の買い手はC国商社ですが、貨物はB国に直送されるため、両者を書き分ける必要があります。

 

インボイスやB/L(船荷証券)を作成する際は、送り先と請求先を明確に区別することが実務上のトラブル防止につながります。送り先は「Ship to」「Receiver」「Addressee」といった項目に記載され、請求先は「Bill to」「Importer」「Buyer」といった項目に記載するのが国際標準です。貿易経験が異なる取引先では、「輸入者」「コンサイニー」といった用語の解釈が食い違う可能性もあるため、明確な記入が不可欠です。

 

参考資料:日本の輸入通関に関する法的枠組みと実務上の対応について、税関ウェブサイトに詳しく解説されています。

 

関税の納税義務者(カスタムスアンサー)
参考資料:2023年10月の関税法改正による輸入者要件の厳格化、および税関事務管理人制度の導入について、SKアドバイザリーの解説ページに詳細が記載されています。

 

輸入者になれる条件 | SKアドバイザリー株式会社
参考資料:インボイスやB/Lでの記載方法の実務的な解説、および輸入者と荷受人の書き分け方について、貿易実務の専門家による詳細なガイドがあります。

 

荷受人と輸入者が異なる場合はどうするか

 

 


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