一般生菌数とは、標準寒天培地を用いて好気的条件下で35±1℃、48±3時間培養して測定される中温性好気性菌数のことです。この指標は食品の微生物汚染の程度を示す最も代表的な指標として位置づけられており、食品およびそれらが製造加工された環境全般の細菌汚染状況を反映します。
参考)一般生菌数
一般生菌数の測定結果は、食品の安全性、保存性、衛生的取扱いの良否などを総合的に評価する際の有力な手段となります。菌数が多い場合は、その食品の加工、製造、輸送、貯蔵などの過程で衛生的かつ適切な取扱いがされていなかったり、温度管理が不適切であったことが示唆されるのです。
参考)食品の一般生菌数について
食品の腐敗や変敗は、一般的に雑菌が食品中で増殖し、10⁷/gを超えると始まるといわれています。10⁸/g~10⁹/gを超えると異臭や異味等が感じられ、外観的にも腐敗・変敗と判断できるようになります。また、一般的に食中毒の発生は食中毒原因菌が10⁵/g超えると起こりやすくなるため、適切な管理が重要です。
参考)https://www.izumi.coop/safeproduct/food_safety/syokuhinhinshitsukanrikijyun5.pdf
食品衛生法では、食品の種類ごとに一般生菌数の基準値が細かく設定されています。清涼飲料水は100/mL以下、粉末清涼飲料は3,000/g以下といった厳格な基準が定められています。
弁当や惣菜類については、加熱処理製品は100,000/g以下、未加熱処理製品は1,000,000/g以下という基準が適用されます。生食用かきは50,000/g以下、冷凍ゆでだこやゆでがには100,000/g以下と、生食用や冷凍食品には特に厳しい基準が設けられています。
参考)食品別の規格基準
冷凍食品に関しては、無加熱摂取冷凍食品が100,000/g以下、加熱後摂取冷凍食品(凍結直前加熱)も100,000/g以下、凍結直前加熱以外のものは3,000,000/g以下と、加熱の有無や加熱タイミングによって基準値が異なります。生めん類は3,000,000/g以下、ゆでめんは100,000/g以下と、加熱調理の有無で基準に大きな差があります。
参考)食品別の規格基準(冷凍食品)href="https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/foodstandard_reitoushokuhin.html" target="_blank">https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/foodstandard_reitoushokuhin.htmlamp;nbsp;-href="https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/foodstandard_reitoushokuhin.html" target="_blank">https://www.forth.go.jp/keneki/osaka/syokuhin-kanshi/foodstandard_reitoushokuhin.htmlamp;nbsp;大阪検…
食品衛生法の基準値は最低限守るべきラインですが、実際の食品製造現場では更に厳格な自主基準を設けているケースが多く見られます。例えば、生食用牛肉や馬刺しでは、食品衛生法の管理数値が3.0×10⁶/gであるのに対し、目標数値(県市の指導基準)は10⁴~10⁵/gと大幅に低く設定されています。
参考)https://www.ucoop.or.jp/shouhin/yakusoku/pdf/shouhinguide_v20_p24_32.pdf
カット野菜や浅漬のような非加熱の食品は、原料由来の菌が残存するため正常品でも10⁴~10⁵個/g程度になることがあります。これは決して異常ではなく、食品の特性によって許容される菌数が大きく異なることを示しています。
参考)一般生菌数の意味を正しく理解しよう
注意すべき点として、一般生菌数が低いからといって必ずしも安全とは限りません。一般生菌数では、ボツリヌス菌のような嫌気性細菌、カンピロバクターのような微好気性細菌、腸炎ビブリオのような好塩性細菌などは計測できないため、食品の安全性を総合的に判断するには他の検査項目も併せて確認する必要があります。
参考)食品の安全性をチェックする!「衛生指標菌」とは?|大阪健康安…
車内での食品保管は、通常の保管環境とは大きく異なる特殊な条件下にあります。車は構造上、外気温の影響を強く受けやすく、夏場の車内温度は外気温を大きく上回り50℃以上になることも珍しくありません。このような高温環境は微生物の増殖を促進し、一般生菌数が急激に増加する原因となります。
参考)車に備蓄できる非常食セット3選
常温保存が推奨されている食品を車内に置いた場合、厚生労働省が定める「常温」の定義(外気温を超えないこと)を大きく逸脱してしまい、品質劣化や安全性の確保が困難になります。特に弁当や惣菜類のように一般生菌数の基準が100,000/g以下と定められている食品では、温度管理が不適切だと短時間で基準値を超えてしまう危険性があります。
参考)車に非常食を乗せると腐る?車載・車中泊に必要な防災グッズリス…
物流業界では、食品の輸送時に5つの温度帯(常温・中温・冷蔵・チルド・冷凍)で管理することが一般的です。冷蔵は0~10℃以下、チルドは0~5℃以下、冷凍は-15℃以下と細かく規定されており、これらの温度基準を守ることで一般生菌数の増加を抑制し、食品の微生物学的品質を維持しています。車内で食品を扱う際も、これらの温度管理の原則を適用することが重要です。
参考)物流における5つの温度帯と温度管理の必要性について解説
車内で食品を適切に管理し、食品衛生法の一般生菌数基準を遵守するためには、まず温度管理の徹底が不可欠です。食品の運搬に関しては、厚生労働省が「食品の運搬に係る適正な温度管理について」という通知を出しており、冷凍または冷蔵された食品の運送事業を行う者に対して適切な温度管理の指導が求められています。
参考)食品の運搬に係る適正な温度管理について
車載用の保冷設備を使用する際は、食品の種類に応じた適切な温度帯を維持する必要があります。生肉や鮮魚などのチルド食品は0~5℃以下、乳製品や豆腐などの冷蔵食品は0~10℃以下、冷凍食品は-15℃以下を保つことで、一般生菌数の増殖を抑制し食品衛生法の基準値内に保つことができます。
車載用非常食を選ぶ際は、耐温度域(耐えられる温度)が高いことが重要なポイントとなります。最近では年間を通して車内備蓄が可能な非常食が開発されており、賞味期限が長く、かつ車内の温度変化に耐えられる製品が販売されています。これらの製品は、一般生菌数の管理という観点からも適切に設計されているため、車内での長期保管に適しています。
定期的な自主検査も効果的な管理手段です。自主的検査を行う場合の一般的な検査項目は、衛生指標となる一般生菌数、大腸菌、大腸菌群を主体として、必要に応じて黄色ブドウ球菌、サルモネラ、腸炎ビブリオなどを検査します。車で弁当や惣菜などを配送する事業者は、これらの検査を定期的に実施することで、食品衛生法の基準を満たしているか確認することができます。
参考)https://haccp.shokusan.or.jp/wp-content/uploads/2016/02/h25manual_3_3.pdf
厚生労働省「食品別の規格基準について」
食品衛生法で定められた各食品の詳細な規格基準が確認できる公式資料です。
広島県「食品の一般生菌数について」
一般生菌数の定義から測定結果の取扱い方法まで、実務に役立つ詳細な解説が掲載されています。
日本トラック協会「食品の運搬に係る適正な温度管理について」
食品運搬時の温度管理に関する厚生労働省のガイドラインへのリンクがまとめられています。