センチュリーロイヤル寝台車から見る日本皇室御料車歴史

皇室専用車両「センチュリーロイヤル寝台車」は、どのような技術と思想で作られた特別な車なのか。一般車両とは全く異なる仕様と歴史的意義を持つこの車両に隠された秘密とは?

センチュリーロイヤル寝台車歴史

皇室専用車両の特別な世界
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センチュリーロイヤル寝台車

皇族の方々のための特別仕様車両

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宮内庁専用設計

一般販売されない皇室専用車両

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日本の伝統技術

和紙や毛織物を使用した内装

センチュリーロイヤル寝台車導入背景と製造台数

センチュリーロイヤルは2006年から2007年にかけて宮内庁に順次納入された皇室専用車両で、その中でも特に「皇2」ナンバーを持つ寝台車は極めて特殊な存在です 。この車両は、皇族の方々にご不幸があった際にのみ使用される特別な車両として設計されており、その存在は一般的にはあまり知られていませんでした 。
参考)トヨタ・センチュリーロイヤル - Wikipedia

 

センチュリーロイヤル全体では4台が製造されており、当初は日産・プリンスロイヤルと同じ5台体制を予定していましたが、国の財政状況を考慮して1台減となりました 。ナンバープレートは「皇1」「皇2」「皇3」「皇5」で、このうち「皇4」は欠番となっており、「皇2」のみが寝台車仕様となっています 。
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興味深いことに、この寝台車が初めて使用されたのは2012年の三笠宮寛仁親王の斂葬の儀で、2014年6月の桂宮様の葬儀では2度目の使用となりました 。使用頻度は極めて限られているため、多くの人にとって幻の車両とも言える存在です。
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センチュリーロイヤル観音開きドア特別仕様

センチュリーロイヤルの最も特徴的な装備の一つが観音開き式のドアです 。通常の車両では前後ヒンジ式のドアが採用されているのに対し、センチュリーロイヤルでは特別な観音開き式の側扉を備えており、これは皇族の乗降時に美しく見えるよう配慮された設計です 。
参考)皇室の顔!トヨタ センチュリー ロイヤル徹底解説

 

この観音開きドアは、リアシートへの乗り降りのしやすさを重視した構造で、最近のロールスロイス社のセダンでも採用されている高級車特有の仕様です 。窓枠の位置も後部座席の両陛下がよく見えるように特別に配置されており、報道や国民の皆様への配慮も込められています 。
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通常のセンチュリーでは採用されていない この特別仕様は、皇室専用車両としての格式を示すとともに、実用性も兼ね備えた巧妙な設計となっています。製造段階から宮内庁とトヨタが協議を重ねて開発された、まさに日本の技術力を結集した特別装備と言えるでしょう 。

内装和紙毛織物使用日本伝統技術

センチュリーロイヤルの内装は、日本の伝統的な素材と技術を駆使した特別な仕様となっています 。天井には和紙が使用され、後部座席には上質な毛織物が採用されており、乗降ステップには御影石が使用されています 。これらの素材選択は、単なる豪華さを追求したものではなく、日本文化の象徴としての役割を果たしています。
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アームレストには漆仕上げの天然素材が使用されており 、座席は運転席・助手席が革張り、後部座席が布張りという伝統的なリムジンの様式が採用されています 。この内装設計は、日本の美意識を現代に受け継ぐ意匠として高く評価されており、報道を通じてその存在を目にする人々にも日本文化の魅力を伝える役割を果たしています。
参考)御料車とはどんな車?代表的な車種の歴史を徹底解説!

 

特に寝台車仕様では、内装に最高級のモケットが使用されており 、その繊細な仕上げは職人の手による丁寧な作業の結果です。これらの素材は全て国内の伝統的な技術によって加工されており、日本の匠の技を世界に示す重要な装備となっています。
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センチュリーロイヤル防弾性能安全技術

センチュリーロイヤルには皇室の安全を守るための高度な防弾性能が搭載されています 。特に「皇3」と「皇5」ナンバーの車両は防弾性能がより強化された国賓接遇用の特装車で、価格も通常の「皇1」が5250万円に対し、これらは9450万円と大幅に高額になっています 。
窓には強化防弾ガラスが採用されており、外部からの衝撃に耐えられるよう特別に設計されています 。車体の剛性を高めるために専用設計のフレームが使用されており、走行中の安定性と安全性を両立させた構造となっています 。
車体全体の強化により、通常のセンチュリーよりも大幅に重量が増加していますが、それでも快適な乗り心地を確保するため、サスペンション系統も専用にチューニングされています。これらの安全装備の詳細は公式には公開されていませんが、皇室の移動を支える存在である以上、通常車両を超える水準の安全対策が施されているのは確実です 。

プリンスロイヤルから寝台車変遷歴史

現在のセンチュリーロイヤル寝台車以前にも、皇室では様々な寝台車や霊柩車が使用されてきました 。1931年には、1930年式のアメリカ車「ピアスアロー」を改造した特別車が導入され 、その後長らく皇室の葬送に使用されていました。
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プリンスロイヤル時代には、1989年の昭和天皇の「大喪の礼」でプリンスロイヤルの一台を改造した寝台車が霊柩車として使用されており 、1987年の高松宮宣仁親王の葬儀でも同様の改造車両が使用されていました 。これらの車両は必要に応じて既存の御料車を改造して対応していたのが特徴です。
参考)https://news.livedoor.com/article/detail/27124063/

 

センチュリーロイヤルの導入により、初めて専用設計の寝台車が製造されることとなり、これは皇室の葬送におけるより適切な車両を提供するという意味で画期的な変化でした。プリンスロイヤルからセンチュリーロイヤルへの変遷は、単なる車両の更新ではなく、皇室の尊厳をより適切に表現する車両への進化を意味しており、日本の自動車技術の発展とともに歩んできた皇室車両の歴史を象徴する出来事と言えるでしょう。

 

この変遷過程では、日産からトヨタへのメーカー変更も含まれており 、1999年に日産がフランスのルノー傘下となった後、次期御料車の開発は中止され、2005年に後継としてトヨタが選定されたという経緯があります 。
参考)御料車 - Wikipedia