中国市場では、トヨタのマイクロバス「コースター」をベースにした豪華カスタムモデルが登場しています。北京の販売会社による「コースター レクサス バージョン」は、レクサスの象徴的なフロントグリルを採用し、従来のマイクロバスの概念を一新させました。
ボディサイズは全長7005mm、全幅2040mm、全高2774mmで、乗車定員は7人から12人の仕様が用意されています。搭載エンジンは最大出力232馬力、最大トルク345Nmを発揮する4.0リッターV型6気筒ガソリンエンジンで、力強い走行性能と高級感を両立させています。
エクステリアではレクサスLMのような複雑なメッシュデザインのグリルが採用され、ヘッドライトやバンパーはアルファード風にカスタマイズされています。中国市場においては、アルファードがステータスシンボルとして認識されており、その顔つきを持つコースターは「顔面スワップ」と呼ばれる人気のカスタムトレンドの一環です。
このカスタムモデルの真骨頂は、インテリア設計にあります。車内には大型旅客機エアバスA380に採用される照明システムと同等の照明が使用され、LEDライトが贅沢に配置されています。
シートは肘置き付きの本革仕様で、二重構造のクッションが採用されており、座り心地はまるでマシュマロに包まれているような感覚を実現しています。テーブル、大型モニター、読書灯、ブラインドなどが装備され、間仕切りも設置されているため、プライベートジェットのような独立した空間が創出されます。
レクサスブランドが追求する「高級感」の本質は、素材選定にあります。内装素材が光を受けた際の反射や透過の特性まで細かく計算されており、単なる高価な素材の使用ではなく、光と素材の掛け合わせで高級感を演出するという哲学が貫かれています。この設計思想は、レクサスLS、RX、LMなどの高級車ラインナップ全体に共通しており、VIP送迎車としてのコースターでも同様の価値観が実装されています。
日本国内でも、レクサスブランドの高級感を旅行体験に組み込むサービスが登場しました。JTBロイヤルロード銀座とLEXUS Internationalの初コラボレーション「TOUCH JAPAN JOURNEY by LEXUS」は、2025年1月30日より販売開始となる新しい旅行商品です。
このツアーでは、ロイヤルロード・プレミアムバスと呼ばれるラグジュアリーバスが利用されます。大型バスをわずか10席にレイアウトした贅沢な空間設計で、全席が窓側または通路側の配置となり、旅客は大きな車窓から景観を楽しみながらゆっくり寛ぐことができます。
四国・淡路3日間コースの旅行代金は272,000円から290,000円(2名1室)で、募集人数は10組20名様限定という極めて限定的な企画です。レクサスモニター試乗とロイヤルロード・プレミアムバスの両方に乗車できるという旅行会社商品としては初の試みで、絶景列車「四国まんなか千年ものがたり」の乗車券も含まれています。
中国市場でのVIP送迎車カスタムから日本国内のプレミアムツアーまで、世界規模でバス市場の高級化が進行しています。中国では、ホンダ「オデッセイ」やビュイック「GL8」のアルファード化も行われており、高級ミニバンの顔を持つビジネスバスが一部ユーザーの間で盛り上がりを見せています。
これらのトレンドが示すのは、単なる移動手段としてのバスではなく、「体験価値」を求める富裕層の存在です。プライベートジェット級の空間設計、本革シートによる快適性、LED照明による演出効果、大型モニターによるエンターテイメント機能。こうした要素が組み合わさることで、バスは単なる乗り物から「ステータスシンボル」へと昇華しています。
レクサスブランドが提供する高級感の本質は、細部へのこだわりと素材選定の哲学にあります。素材が光を受けた時の反射特性、シートクッションの構造設計、照明配置の計算、こうした目に見えない工夫の積み重ねが、乗客に「ワンランク上」の体験をもたらすのです。
プレミアムバス市場で実装される快適性技術は、自動車産業全体の高級化志向を反映しています。レクサスLX570やレクサスLS、RXなどの高級車が採用する内装設計の哲学が、バス市場でも応用されているのです。
特に注目すべき点は、単なる高価格帯の素材導入ではなく、機能性と美しさの統合です。例えば、本革リクライニングシートの二重構造クッションは、単なる座り心地の向上だけでなく、長時間乗車時の疲労軽減も計算されています。読書灯やフットレスト、オットマン、プライバシーガラスなど、各要素が乗客の快適性を総合的に高める設計となっています。
WILLER EXPRESSなどの高速バスサービスでも、シェル型パーテーションによるプライベート空間の確保、足が入るフットレストによる全長187cmのフルリクライニングなど、レクサスと同様の「細部へのこだわり」が見られます。このような業界全体の高級化志向は、顧客ニーズの多様化と富裕層による「体験価値」重視という消費トレンドを示唆しています。
<参考>プレミアムバスの最新情報については、以下のリンクをご参照ください。
JTBロイヤルロード銀座×LEXUS初コラボレーション「TOUCH JAPAN JOURNEY by LEXUS」
中国の豪華カスタムバス文化とその設計思想については、以下の記事が詳しく解説しています。
「コースター レクサス バージョン」の内装設計とVIP送迎車市場の成長