オーバーフェンダーは、既存のノーマルフェンダーの上に後付けするパーツで、車の全幅を広げる目的で取り付けられます。軽自動車の場合、元々コンパクトな設計のため、オーバーフェンダーの装着は見た目の印象を大きく変える効果があります。
フェンダーの本来の役割は、回転するタイヤによる泥や水、石などの撥ねから乗員や歩行者を保護することです。オーバーフェンダーは、この保護機能を拡張しつつ、ワイドなタイヤを装着する際のはみ出し対策としても機能します。
軽自動車にオーバーフェンダーを装着する際の最大の注意点は、軽自動車規格の制限です。軽自動車は全幅1,480mm以下という厳格な規格があり、これを超えると軽自動車としての登録を維持できません。
軽自動車でオーバーフェンダーを装着して車検に通すためには、片側9mm以内という制限があります。この基準は国土交通省の「構造装置の軽微な変更時の取扱い」に基づいており、軽自動車・小型自動車の場合、幅の変更は±2cmまでが軽微な変更として扱われます。
具体的な計算例を示すと、軽自動車の全幅上限1,480mmに対して、両側で18mm(片側9mm)までの拡張が可能です。しかし、多くの軽自動車は既に規格ギリギリの1,475mm程度で設計されているため、実際には5mm程度の余裕しかない場合が多いのが現実です。
ジムニーのような軽四駆の場合、全幅が軽規格いっぱいに作られているため、20mmを超えるオーバーフェンダーを装着すると軽規格を超えてしまい、構造変更とともに普通車への格上げが必要になります。
9mmを超えるオーバーフェンダーを装着する場合、構造変更申請が必要になります。この手続きは通称「公認」と呼ばれ、陸運局での検査と書類手続きが必要です。
構造変更の手続きには以下の書類が必要です。
軽自動車が普通車に格上げされる場合の維持費の変化も重要な検討事項です。自動車税が年額10,800円から25,000円以上に増加し、車検費用や保険料も上昇します。このため、多くのユーザーは車検の度にオーバーフェンダーを外すという選択をしています。
オーバーフェンダーの取り付け方法は車検通過の重要な要素です。理想的な取り付け方法は、ボルトやビスを使用した「固定的」な取り付けです。車体から外れる恐れがない取り付け方法が求められます。
市販品の多くは適切な取り付け方法が指定されていますが、自作品や汎用品の場合は注意が必要です。簡易的な両面テープでの取り付けでも、車体から外れる恐れがないと判断されれば車検に通る場合もありますが、各地方の陸運局によって見解が異なるため、最終的には検査員の判断に委ねられます。
取り付け時の注意点。
軽自動車用オーバーフェンダーの選択では、車検対応サイズである9mm幅の製品が人気です。代表的なメーカーとしては、GI GEAR(ジーアイ・ギア)、ネクサスジャパン、VULCANS(ヴァルカンズ)、シェアスタイルなどがあります。
GI GEARのオーバーフェンダーは、歪みもなくぴったりとフィットすることで評判が良く、ダミーボルトが埋め込まれているため武骨な印象を演出できます。ネクサスジャパンの製品は、チッピングブラックでプロテクション塗装が施されており、ABS製で耐久性に優れています。
材質による違いも重要な選択基準です。
価格帯は3万円から10万円程度と幅広く、材質や仕上げによって大きく異なります。
オーバーフェンダーを長期間使用するためには、適切なメンテナンスが欠かせません。特に軽自動車の場合、車体が小さいため、オーバーフェンダーの劣化が目立ちやすくなります。
定期的なメンテナンス項目。
ABS製のオーバーフェンダーは紫外線による劣化が起こりやすいため、定期的なワックスがけやコーティングが効果的です。また、冬季の融雪剤による腐食を防ぐため、こまめな洗車も重要です。
取り付け部の防水処理が不十分だと、雨水の侵入により車体の錆が発生する可能性があります。特に軽自動車は車体が薄いため、錆の進行が早い傾向にあります。年に一度は取り付け部の防水処理を点検し、必要に応じてシーリング材の補修を行うことをお勧めします。
オーバーフェンダーの交換時期は、使用環境にもよりますが、一般的に5-7年程度が目安とされています。表面の劣化が目立つ前に交換することで、車両の美観を保つことができます。