現在の日本のコンパクトミニバン市場は、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」が圧倒的なシェアを誇っています。この2車種は年間販売台数で常に上位にランクインし、ファミリー層を中心に絶大な支持を得ています。
一方で日産は、2009年にデビューした「NV200バネット」のワゴン仕様が唯一のコンパクトミニバンとして存在していますが、商用車ベースという性格上、乗用車としての魅力に欠けるのが現状です。過去には2代目キューブをベースとした「キューブキュービック」という3列シート仕様も存在しましたが、2008年に生産終了となり、それ以降日産はこの分野から事実上撤退していました。
日産ファンからは「買うクルマがない」「他社に切り替えてしまった」という声が多く聞かれ、販売車種数の減少が深刻な問題となっています。このような状況を受けて、日産は2027年頃を目標に新型コンパクトミニバンの開発を進めているとされています。
新型コンパクトミニバンは、現行ノートシリーズと同じ「CMF-B」プラットフォームをベースとして開発されています。このプラットフォームは日産の小型車戦略の中核を担う技術で、軽量化と高剛性を両立した設計が特徴です。
ボディサイズについては、ホイールベースや全高がミニバン仕様に最適化される予定で、現行ノートよりも室内空間が大幅に拡大されると予想されます。デザイン面では、クロスオーバー的な力強いスタンスを採用し、ボンネットはやや高めに設定される模様です。
パワートレインには、日産が誇るe-POWERシステムの搭載が有力視されています。e-POWERは電気モーターで駆動し、エンジンは発電専用として使用するシリーズハイブリッドシステムで、静粛性と燃費性能に優れています。セレナe-POWERで実証された技術をコンパクトサイズに応用することで、シエンタハイブリッドやフリードハイブリッドを上回る燃費性能を実現する可能性があります。
現在のコンパクトミニバン市場における主要競合車種との比較を見てみましょう。
トヨタ シエンタ(3代目)
ホンダ フリード(2代目)
日産の新型コンパクトミニバンは、これらの競合車種に対して差別化を図るため、以下の要素が重要になると考えられます。
新型コンパクトミニバンの価格設定は、市場での成功を左右する重要な要素です。現在の競合車種の価格帯を考慮すると、主力グレードで270万円~280万円程度に設定することが必要とされています。
日産としては、以下の価格戦略が考えられます。
エントリーグレード
上級グレード
市場戦略としては、日産の強みである技術力を前面に押し出し、「電動化技術のパイオニア」としてのブランドイメージを活用することが重要です。特にe-POWERの走行フィールは他社にない独自性があり、これを体感できる試乗キャンペーンなどの展開が効果的でしょう。
日産の新型コンパクトミニバンには、同社が培ってきた独自技術の投入が期待されています。特に注目すべきは、電動化技術とコネクテッド技術の融合です。
ProPILOT Park(プロパイロット パーク)
日産が開発した自動駐車支援システムで、狭い駐車場でも安心して駐車できる機能です。コンパクトミニバンのような大きめの車体でも、この技術により駐車の不安を解消できます。
NissanConnect(ニッサンコネクト)
スマートフォンアプリと連携し、遠隔でのエアコン操作やドアロック確認などが可能です。ファミリー向けの車種として、子供を迎えに行く前に車内を快適な温度に調整しておくなど、実用的な機能が充実しています。
インテリジェント アラウンドビューモニター
上空から見下ろすような映像で周囲の状況を確認できるシステムで、狭い道路での運転や駐車時の安全性を大幅に向上させます。
将来的には、日産が開発を進めている固体電池技術の応用も視野に入れており、2030年代には完全電動化されたコンパクトミニバンの投入も計画されているとされています。これにより、環境性能と実用性を高次元で両立した次世代ミニバンの実現が期待されます。
また、海外展開も重要な戦略の一つで、インド市場向けに開発されているコンパクトミニバンの技術を日本市場にも応用することで、開発コストの最適化と品質向上の両立を図る計画です。
日産の新型コンパクトミニバンは、単なる競合車種への対抗馬ではなく、同社の電動化戦略とコネクテッド技術を結集した次世代モビリティとして位置づけられており、2027年の登場が大いに期待されています。