日産パスファインダーは現在、第5世代となる新型モデルが海外市場で展開されています。2021年にフルモデルチェンジを受けた現行モデルは、北米市場を皮切りに世界各地で販売が開始されました。
北米市場では2022年モデルとして発売され、S、SV、SL、Platinumの4グレード構成となっています。価格帯は約366万円から527万円と幅広く設定されており、2WDと4WDの両方が用意されています。
特に注目すべきは、2024年の北米での販売実績です。前年比12.8%増の8万915台を記録し、日産の北米事業を支える重要なモデルとなっています。この好調な売れ行きは、新型パスファインダーの商品力の高さを物語っています。
中国市場では2024年3月に発売が開始され、独自のデザインを採用した中国専用モデルとして展開されています。価格は約499万円からとなっており、中国の消費者からも高い評価を得ています。
新型パスファインダーは、日産の最新技術を結集したフラッグシップSUVとして位置づけられています。パワートレインには、最高出力284ps、最大トルク351Nmを発生する3.5リッターV型6気筒直噴ガソリンエンジンを全グレードに搭載しています。
このエンジンには、新開発の9速ATが組み合わされ、滑らかで力強いダイレクト・レスポンスを実現しています。従来のCVTから9速ATへの変更により、燃費性能と走行性能の両立を図っています。
4WDモデルには、7種類の走行モードを選択できるドライブ&テレインモードセレクターを備えた新型インテリジェント4WDを採用。ノーマル、スポーツ、エコ、スノー、サンド、マッド/ラット、トーイングの各モードから選択可能で、あらゆる路面状況に対応できます。
安全装備では、日産セーフティシールド360を全車標準装備し、上級グレードにはProPILOT Assistも搭載されています。特にPlatinumグレードには、ナビゲーションの地図情報を活用するProPILOT Assist with Navi-linkが装備されています。
現在のところ、日産は新型パスファインダーの日本導入について公式な発表を行っていません。しかし、いくつかの要因から日本発売の可能性を検討することができます。
まず、パスファインダーの歴史的背景を考慮する必要があります。初代パスファインダーは1986年に日本で「テラノ」として発売され、2002年まで販売されていました。テラノは日本のSUVブームの火付け役の一つとして、多くのファンに愛されていました。
現在の日本のSUV市場は非常に活況を呈しており、大型SUVへの需要も高まっています。エクストレイルよりもワンランク上の位置づけとなるパスファインダーは、日本市場でも一定の需要が見込めると考えられます。
ただし、日本導入には課題もあります。全長5004mm、全幅1978mmという大型ボディサイズは、日本の道路事情や駐車場事情を考慮すると、ターゲット層が限定される可能性があります。
また、日本では電動化への移行が加速しており、純ガソリンエンジンのみのパスファインダーが日本市場でどの程度受け入れられるかは不透明な部分もあります。
中国市場向けのパスファインダーは、他の地域とは異なる独自の戦略で展開されています。2023年4月の上海モーターショーで公開されたパスファインダーコンセプトをベースに開発され、中国の消費者の嗜好に合わせたデザインが採用されています。
興味深いのは、中国仕様のパスファインダーには日本でe-POWERの発電専用エンジンとして使用されているVCターボエンジンが搭載されていることです。このエンジンは可変圧縮比技術を採用しており、燃費性能と動力性能を高次元で両立しています。
中国市場では、6人乗りと7人乗りの両方が設定されており、価格は智尚版が約499万円、智駕版が約582万円となっています。しかし、中国では電動車への優遇措置が強化されており、純ガソリン車であるパスファインダーは厳しい競争環境に置かれています。
特に大都市では非EVに対するナンバープレートの発給制限が設けられており、パスファインダーのような純ガソリン車には不利な状況となっています。
新型パスファインダーの成功は、日産の海外事業戦略において重要な意味を持っています。特に北米市場での好調な売れ行きは、日産の経営再建に向けた明るい材料となっています。
日産は「Nissan NEXT」という事業構造改革を推進しており、その一環として製品ラインナップの変革を進めています。新型パスファインダーは、この戦略の成功例の一つとして位置づけられています。
今後の展開として注目されるのは、電動化への対応です。現在のパスファインダーは純ガソリンエンジンのみですが、将来的にはハイブリッドやe-POWERなどの電動化技術が導入される可能性があります。
また、自動運転技術の進化に伴い、ProPILOT Assistのさらなる高度化も期待されています。日産は自動運転技術のリーディングカンパニーとして、パスファインダーにも最新の技術を順次導入していくと考えられます。
日本市場への導入については、SUV市場の拡大や消費者ニーズの多様化を背景に、将来的には検討される可能性があります。ただし、その際には日本の市場環境に合わせた仕様変更や価格設定が必要になるでしょう。
パスファインダーの成功は、日産だけでなく日本の自動車業界全体にとっても重要な意味を持ちます。海外市場での競争力強化は、日本の自動車メーカーにとって喫緊の課題であり、パスファインダーの事例は他社にとっても参考になる取り組みと言えるでしょう。