空気バネブリヂストンEV電費向上バッテリー保護の特徴

自動車の乗り心地を大きく変える空気バネ。ブリヂストンのEV向け製品は電費向上とバッテリー保護に貢献しますが、一般産業用との違いや選び方のポイントをご存知ですか?

空気バネブリヂストンの特徴

ブリヂストン空気バネの3つの魅力
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EV向け高機能製品

電費の向上とバッテリーの保護に貢献する技術革新を実現

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産業用多様なラインナップ

ファイアストン社製の1山・2山・3山タイプを幅広く展開

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持続可能な社会への貢献

サステナビリティビジネス構想に基づく生産能力の増強

ブリヂストンの空気バネは、自動車用と一般産業用の2つの分野で高い評価を得ています。特に自動車用では、ファイアストン インダストリアル プロダクツ(FSIP)が製造するEV向け製品が注目されており、2021年にはアメリカのウイリアムズバーグ工場で生産能力の増強が実施されました。空気バネはサスペンションとして機能する自動車部品で、乗り心地や操安性といった基本性能に加え、近年は技術イノベーションを通じてEV向けに電費の向上やバッテリーの保護に貢献する製品として開発されています。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E7%A9%BA%E6%B0%97%E3%83%90%E3%83%8D/

一般産業用では、ハイブリッドエアーダンパーやエアーダンパーなど、防振・除振用途に特化した製品群を展開しています。これらの製品は20Hz以下の振動域でも防振効果を大幅に改善し、オリフィス板を設けて内包する空気の減衰効果により共振時の振幅を低く抑える設計となっています。主に金属スプリングで荷重を支持するため、防振ゴムで問題となるクリープ(ヘタリ)がほとんど発生せず、繰り返し振幅による耐久性も高いレベルを維持できるのが特徴です。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%82%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%20%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%BC/

ブリヂストングループは中期事業計画(2021-2023)において、多角化事業についてはコアコンピタンスとシナジーが活きる事業にフォーカスする方針を示しており、FSIPが製造する空気バネはSDGsの達成と持続可能な社会実現への貢献を前提とした「サステナビリティビジネス構想」において、シナジーが最大化される事業と位置付けられています。
参考)ブリヂストン、EVの需要増を見据えてアメリカの「空気バネ工場…

空気バネのEV電費向上効果

EVの電費とは、1kWhあたり何km走行できるかを示す指標で、「走行距離(km)÷充電した電力量(kWh)」の計算式で求められます。ブリヂストンの空気バネは、サスペンションとしての機能を最適化することで、この電費の向上に大きく貢献しています。
参考)電気自動車(EV)の燃費「電費」とは?見方や計算方法、車種別…

空気バネによる電費向上の仕組みは複数あります。まず、空気圧を調整することでバネの硬さを変化させ、路面状況や走行速度に応じた最適な車両姿勢を維持できる点が挙げられます。高速走行時には車高を下げることで空気抵抗を低減し、エネルギー消費を抑えることが可能です。また、密閉された空気の圧力変化を利用したプログレッシブな作動により、通常走行では柔らかく快適な乗り心地を実現しながら、高速旋回時には硬めのバネ特性で車両の姿勢を安定させることができます。
参考)よく見るコイルスプリングだけじゃない! 板バネに空気バネなど…

さらに、EVには回生ブレーキによるエネルギー回収機能がありますが、空気バネによる振動抑制効果が高いほど、減速時のエネルギー回収効率も向上します。ブリヂストンはEVバス専用タイヤの開発において転がり抵抗を2割下げてEV電費の1割向上を実現した実績があり、空気バネにおいても同様の技術開発アプローチで電費向上に取り組んでいます。
参考)EV電費を1割向上 ブリヂストン、驚異の「隠れミゾ」設計に迫…

ブリヂストン公式サイトでは、EV向け空気バネの電費向上技術についての詳細情報が掲載されています
固有振動数が低く設計されているため、低周波数域の防振性能に優れており、路面からの振動を効果的に吸収してエネルギーロスを最小限に抑えます。温度変化による支持バネの変化が極めて少なく、幅広い温度領域で安定した性能が得られることも、EVの電費安定性に寄与しています。
参考)空気バネとは?鉄道における役割と重要性について!

空気バネのバッテリー保護機能

EVのバッテリーは振動や衝撃に敏感で、長期使用における劣化や安全性の問題が課題となっています。ブリヂストンの空気バネは、バッテリーを物理的な衝撃から保護する重要な役割を果たしています。
参考)https://www.mdpi.com/2227-9717/11/8/2345/pdf?version=1691134358

空気バネによるバッテリー保護の最大の特徴は、優れた振動減衰性能です。柔らかいゴムバネにより固有振動数を低く設定でき、共振時には防振ゴム内部の空気が空気孔を通って出入りすることで空気減衰力として働き、共振倍率を小さく抑えます。衝撃波についても、衝撃力を小さくできるだけでなく、衝撃後の自由振動を急速に減衰させることが可能です。​
バッテリーは繰り返しの振動による熱暴走(サーマルランナウェイ)のリスクがあり、リチウムイオンバッテリーの安全事故は火災や爆発を引き起こす可能性があります。空気バネは台車と車体の間に設置され、台車の振動を緩和して車体に伝えにくくする構造となっているため、バッテリーが搭載される車体への振動伝達を大幅に低減できます。
参考)https://www.mdpi.com/2073-4352/13/9/1346/pdf?version=1693798397

また、空気バネには固有振動数が存在しないため共振が起きにくく、これもバッテリーの安全性向上に貢献しています。鋼板バネやコイルバネと異なり、低摩擦効果により柔軟なゴム部材が剛性の高い接続点をフレームやサスペンションから分離するため、6つの自由度すべてで自由に動くことができ、バッテリーへの局所的な応力集中を防ぎます。
参考)自動車のメカニズム(スプリング編)|うちくん

空気バネの産業用途と一般自動車への応用

ブリヂストンの空気バネは、自動車以外にも幅広い産業分野で活用されています。一般産業用の空気バネとしては、ファイアストン社製の製品ラインナップがあり、ベローズ形状の違いにより1山タイプ、2山タイプ、3山タイプに分類されます。
参考)ブリヂストン(ファイアストン社製)空気バネ 代替品|株式会社…

産業機器における空気バネの主な用途には、振動ふるい、振動コンベア、コンクリートブロックマシン、エアージェットルーム、業務用洗濯機、遠心分離機、コンプレッサー、真空ポンプ、高速プレスなどの防振があります。精密機器の除振用途としては、露光装置、電子顕微鏡、三次元測定器、レーザー関連試験機、マスクアライナーなどで使用され、高精度な作業環境の維持に貢献しています。​
一般自動車への応用では、高級車を中心にエアサスペンション(エアサス)として採用が増えています。エアサスは空気の圧縮性を利用して車高を調整でき、乗車人数や積載量が変化しても車高を一定に保つことが可能です。この「荷重平準化」機能により、常に最適な乗り心地を維持できます。
参考)エアサスとバネサスの違いや特徴を比較!快適性と耐久性はどちら…

モノタロウでは、ブリヂストンの産業用空気バネ製品を幅広く取り扱っており、仕様比較が可能です
通常のバネサスペンション(バネサス)と比較した場合、エアサスには以下のような違いがあります。

 

エアサスとバネサスの比較

項目 エアサス バネサス
車高調整 可能(自動・手動) 不可能
乗り心地 柔らかく静粛性高い 硬め・振動伝わりやすい
メンテナンス 複雑・高コスト シンプル・低コスト
耐久性 10〜15万km 20万km以上
初期コスト 高い 低い

エアサスの乗り心地の良さは、空気の圧縮特性による滑らかな衝撃吸収と、路面からの振動を直接伝えにくい構造によるものです。一方、バネサスは構造がシンプルで耐久性が高く、メンテナンスコストが低い利点があります。
参考)自動車やバイクのサスペンションに使用する押しバネの役割や設計…

空気バネのメンテナンスと寿命

空気バネの寿命は使用環境や車種によって大きく異なりますが、一般的には10万km〜15万kmが目安とされています。ただし、これはあくまで目安であり、定期的なメンテナンスを怠ると想定より早く劣化する可能性があります。
参考)エアサスの寿命は最大何年?故障の原因や長持ちさせるコツを紹介…

空気バネの主要部品ごとの寿命の目安は以下の通りです。
参考)車のエアサス寿命は何年?交換費用と長持ちさせるコツについても…

空気バネ部品の寿命

部品名 素材 寿命の目安 主な劣化原因
エアバッグ ゴム 約5〜7年 経年劣化・温度変化・紫外線
電磁バルブ 金属 約7〜10年 摩耗・異物の混入
コンプレッサー 金属 約10万km 可動部の摩耗・潤滑不良
エアホース ゴム 約5〜8年 圧力変動・熱劣化

特にゴム製のエアバッグ(ベローズ)は、紫外線や高温に弱く、時間が経つとひび割れや空気漏れが発生しやすくなります。走行しなくても経年劣化により性能が低下するため、長期間使用しない車両でも注意が必要です。​
メンテナンスのポイントとしては、定期的な点検が最も重要です。エアサスのベローズにひび割れや硬化が見られた場合は早めの交換を検討し、ホースやバルブのエア漏れも寿命を縮める要因となるため早期修理が推奨されます。鉄道車両用空気バネゴムベローズの劣化特性に関する研究では、最大16年間の使用に対してバネ定数などの実用性能は良好な耐久性を示しましたが、ベローズの材質の物性では明確な低下が認められたことが報告されています。
参考)鉄道車両用空気ばねゴムベローズの劣化特性

エアサスの寿命を延ばすための具体的なメンテナンス方法については、専門業者のサイトで詳細に解説されています
エアサスを長持ちさせるためには、運転スタイルの見直しも効果的です。急加速や急ブレーキを避け、段差や凹凸の激しい道路では速度を落として走行することで、空気バネへの負担を軽減できます。また、定期的な消耗品の交換も重要で、コンプレッサーやエア供給ラインなどの部品も劣化や損傷の可能性があるため、定期点検と必要に応じた交換が推奨されます。​
ブリヂストンのハイブリッドエアーダンパーの場合、摺動部がなくメンテナンス性に優れており、空気の供給源なども不要なため、トータルコストが大幅に抑えられる設計となっています。これにより、長期間にわたって安定した性能を維持できます。​

空気バネ選びの重要ポイント

空気バネを選ぶ際には、使用目的と環境に応じた適切な製品選定が重要です。ブリヂストンの空気バネ製品群から最適なものを選ぶためには、以下のポイントを考慮する必要があります。​
まず、自動車用と産業用のどちらが必要かを明確にします。自動車用では、EVか従来のエンジン車かによって求められる性能が異なり、EV向けの場合は電費向上とバッテリー保護機能を重視した製品が推奨されます。産業用では、防振用途か除振用途か、またはアクチュエーター用途かによって適切な製品タイプが変わります。
参考)ブリヂストン、CES 2023へ出展 持続可能な社会を支える…

空気バネの形状選定も重要で、ファイアストン社製の産業用空気バネには1山タイプ、2山タイプ、3山タイプがあり、それぞれ最大ストロークや支持荷重が異なります。1山タイプは最小高さが低くコンパクトな設計で、2山タイプはストロークが長く、3山タイプは最も大きなストロークと支持荷重に対応できます。​
荷重条件の確認も必須です。空気バネは内圧を変えるだけで広い荷重範囲に対応でき、固有振動数(防振効果)はほぼ一定に保たれますが、想定される最大荷重と最小荷重の範囲を事前に把握しておく必要があります。500kPa時の支持荷重や700kPa時の最大外形などの仕様を確認し、使用環境に適したものを選定します。​
空気バネ選定時のチェックリスト
✅ 使用目的(自動車用・産業用・防振・除振)の明確化
✅ ベローズ形状(1山・2山・3山)の選択
✅ 支持荷重範囲の確認
✅ 最大ストロークと設置スペースの検討
✅ 使用温度範囲と環境条件の確認
✅ メンテナンス性とトータルコストの評価
使用環境の温度条件も重要な選定基準です。ブリヂストンの空気バネは温度変化による支持バネの変化が極めて少なく、幅広い温度領域で安定した性能が得られる設計となっていますが、極端な高温や低温環境では特殊な材質や表面処理が必要になる場合があります。
参考)バネの特性を理解して選ぶ!環境別に最適なバネ材料と選定のコツ…

また、メンテナンス性とランニングコストの観点も見逃せません。ブリヂストンのハイブリッドエアーダンパーEZタイプは、摺動部がなくメンテナンス性に優れ、空気の供給源も不要なため、トータルコストが大幅に抑えられます。一方、車両用エアサスの場合は定期的な点検と部品交換が必要になるため、メンテナンス体制も含めて検討することが推奨されます。​
ファイアストン社製空気バネの詳細仕様と代替品情報は、株式会社テックのサイトで確認できます
ブリヂストンの空気バネは、自動車用ではEVの電費向上とバッテリー保護に貢献し、産業用では幅広い防振・除振用途に対応する高性能製品です。適切な製品選定と定期的なメンテナンスにより、長期間にわたって優れた性能を発揮します。
参考)ファイアストン インダストリアル プロダクツの空気バネ工場を…