準天頂衛星システム(QZSS)は、日本が独自に開発・運用する衛星測位システムで、愛称「みちびき」として知られています。 一方、GPSは米国が運用する全球測位システムで、現在30機以上の衛星で世界中をカバーしています。 最大の違いは、GPSが全球規模のシステムであるのに対し、準天頂衛星システムは日本を中心としたアジア・オセアニア地域に特化している点です。
参考)302 Found
準天頂衛星システムは、GPSと同じ周波数の信号を配信するため、両者を一体で利用することができます。 この互換性により、GPSと準天頂衛星を1つの衛星群として扱え、常に高精度で安定した測位が可能になります。 具体的には、準天頂衛星システムとGPSを併用することで、見えている衛星の数が増加し、測位精度が大幅に向上します。
参考)日本版GPS衛星「みちびき」が開く未来
測位精度についても明確な違いがあります。GPS単独では測位の誤差が10m程度とされていますが、準天頂衛星システムの補強サービスを利用すると、誤差を1m以下のサブメーター級や、数cmのセンチメーター級まで縮小できます。 この高精度測位は、準天頂衛星システム独自の強みであり、他国のGNSSにはない特徴です。
参考)準天頂衛星に新機能、スマホ側の変更なしに測位誤差が1mに

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準天頂衛星システムの最大の特徴は、その特殊な軌道にあります。準天頂軌道は、高度約36,000kmの静止軌道を赤道面に対して約40度傾けた楕円軌道で、地上から見ると衛星が「8の字」を描くように動きます。 この軌道設計により、衛星は日本の上空(準天頂)に7~9時間程度滞在し続けることができます。
参考)https://www.jaxa.jp/countdown/f18/overview/orbit_j.html
準天頂軌道の衛星は、軌道傾斜角40度、離心率0.075、軌道周期23時間56分で運用されています。 近地点引数が270度に設定されているため、南側を通過する際は対地速度が速く、北側では遅くなります。 この設計により、日本から見て高仰角の位置に長時間留まるように見えるのです。
参考)準天頂衛星システム - Wikipedia
現在、準天頂軌道の衛星3機(2号機、4号機、1号機後継機)は、互いに120度ずれた位置関係で配置され、交代で日本上空に留まります。 さらに3号機は東経127度の静止軌道から運用されており、4機体制で日本全国をカバーしています。
参考)みちびき(準天頂衛星システム)とは?土木測量プロが知っておく…
準天頂衛星システムの補完機能とは、GPSと同様の測位信号を送信することで、GPS衛星が増加するのと同様の効果をもたらすものです。 日本では山間部が多く、都心部では高層ビルで電波が遮られるため、GPSだけでは必要な4機以上の衛星から電波を受信できない場合があります。
参考)QZSSについて|電子航法研究所
準天頂衛星システムは、日本の真上に長時間滞在する特性を活かし、山間部やビル街でも常に高仰角で衛星信号を受信しやすくします。 GPS衛星だけでは測位できない場所や時間でも、準天頂衛星からの信号を受けることで測位が可能になります。
参考)準天頂衛星システムと複数のGNSS併用時の電波遮蔽の有無によ…
実際の測量現場では、準天頂衛星システムとGPSの併用により、衛星配置に左右されない安定した精度で作業できるようになりました。 特に、電波遮蔽が顕著な地点では、さらに中国のBeiDouを追加した3種類の衛星測位システムの併用が最も高い測位成功率を示しています。
参考)https://service.css24.jp/column/1888
準天頂衛星システムの補強機能は、GPSの精度を向上させる精密な補正信号を送信するサービスです。 補強サービスには、サブメーター級とセンチメーター級の2種類があり、それぞれ異なる精度レベルを実現します。
参考)サブメータ級測位補強サービス|みちびきとは|みちびき(準天頂…
サブメーター級測位補強サービスは、電離層を通過するGPS衛星からの電波を補正することで、測位誤差を1m程度に抑えます。 このサービスは、個人がスマートフォンで利用するナビゲーションやカーナビでも精度改善の恩恵を受けられます。
参考)サブメータ級測位補強サービス|各サービスの仕様|みちびき(準…
センチメーター級測位補強サービス(CLAS)は、準天頂衛星独自のL6信号を用いるサービスで、全国約1,300の電子基準点から得られたデータを準天頂衛星経由で配信します。 これにより測位誤差は数cmまで縮小され、専用受信機が必要ですが、従来実現できなかった高精度な位置情報の利用法が可能になります。
参考)みちびきのCLASとは?準天頂衛星を経由した高精度測位の仕組…
準天頂衛星システムに対応したカーナビは、従来のGPS専用機と比較して大幅な性能向上を実現しています。 高精度な位置情報により、走行している車線まで正確に把握でき、車線変更の指示が出せるようになります。 これは次世代の高度道路交通システム(ITS)を支える重要な要素です。
参考)自動車(ナビゲーション)|利用イメージ|みちびき(準天頂衛星…
衛星数が増加することで、これまで電波が届きにくかった山間部や都市部においても高精度測位を活用できるようになりました。 特に高層ビル街や山間部など、GPS単独では測位精度が低下しやすい環境で、準天頂衛星システムの効果が顕著に現れます。
参考)日本のGPSの精度があがったわけとは?日本版GPS「みちびき…
複数周波の受信機を使用することで、電離層による誤差が解消され、精度数十cmの高精度測位が可能になります。 将来的には、すべての車両に準天頂衛星システムの受信機を搭載し、位置情報を交換し合うことで、車両間の位置を高精度に把握し、自動運転も実現できると期待されています。
参考)日本版衛星測位システムを活用した新たな自動運転の可能性
準天頂衛星システムは、自動運転技術の発展において重要な役割を果たしています。 三菱電機が開発した高精度ロケーターは、準天頂衛星からの情報と高精度3次元地図データを組み合わせることで、濃霧や雪道などレーンがわかりづらい状況でも正確な車両位置を把握できます。
参考)https://jpn.nec.com/solution/space/positioning/index.html
高速道路などの自動運転では、カメラやレーダなどのセンサに加え、準天頂衛星システムの高精度測位によって、より安全な移動が可能になります。 GPSの10倍以上の高精度な位置情報により、自動運転の安全性が大幅に向上すると期待されています。
実証実験では、準天頂衛星システムの災害・危機管理通報サービスを活用し、地震発生時に自動運転バスを安全に停止させるシステムや、走行経路のハザードマップと現在位置に基づいて危険度を表示するシステムが成功しています。 これらの技術は、準天頂衛星システムと最先端技術の組み合わせにより、次世代の交通システムを支える基盤となっています。
参考)みちびきを利用した実証事業
みちびきの必要性について詳しい情報(内閣府準天頂衛星システム公式サイト)
準天頂衛星システムとGPSの詳細な比較(JAXA公式サイト)
カーナビゲーションでの活用事例(内閣府準天頂衛星システム公式サイト)