トラックやバスに搭載される補助ブレーキには、ジェイクブレーキと排気ブレーキという2つの代表的なシステムがあります。どちらもエンジンブレーキの効果を強化する装置ですが、その作動原理や制動力、使用場面には明確な違いが存在します。この記事では、大型車両のドライバーが知っておくべき両者の違いと、適切な使い分け方法について詳しく解説していきます。
参考)トラックやバンのリターダーとは?排気ブレーキとの違いや使い道…

TEXVOKIE 3163530 エンジン ジェイク ブレーキ フィーラー ゲージ 調整ツール 7MM カミンズ ISX エンジン用 (7MM - 3163530)
ジェイクブレーキは正式には「圧縮開放ブレーキ」と呼ばれ、アメリカのジェイコブス社が開発したエンジンブレーキシステムです。ディーゼルエンジンのシリンダー内で空気を圧縮し、ピストンが上死点に達する直前で排気バルブを開放することで、圧縮した空気の圧力を逃がします。この圧縮行程のエネルギーだけをブレーキ力として利用できるため、通常のエンジンブレーキよりも強力な制動効果を発揮します。
参考)排気ブレーキの仕組み・使い方・修理方法【トラック補助ブレーキ…
シリンダーヘッドに油圧回路を追加し、排気バルブを圧縮行程の終わりで瞬時に開く仕組みになっています。6気筒エンジンであれば、2気筒、4気筒、6気筒と段階的に作動させることで、ブレーキの強さを調整することも可能です。三菱ふそうでは「パワータード」、いすゞと日野では「エンジンリターダー」という名称で呼ばれています。
排気ブレーキは、排気管に設置されたバルブを閉じることで排気ガスの流れを制限し、エンジン内の排気圧を上昇させるシステムです。排気圧が高まることでエンジンの回転が抑えられ、車両の速度を減速させる効果が得られます。ディーゼルエンジン特有の補助ブレーキで、エンジンを作動させて運転席のスイッチを入れることで起動します。
参考)トラックの排気ブレーキの使い方について
空気抵抗によってエンジンのピストン運動を妨げる仕組みで、通常は排気管を通って外に出る排気ガスの流れを意図的に制限します。構造がシンプルで操作が簡単、メンテナンスコストが低いという特徴があります。アクセルペダルから足を離すことで自動的に作動し、エンジンブレーキと連携して減速効果を生み出します。
参考)トラックの排気ブレーキの仕組み、使い方、故障原因も解説!入れ…
制動力の強さには明確な違いがあり、ジェイクブレーキは排気ブレーキよりも強力な減速効果を発揮します。補助ブレーキの中でもリターダーが最も強い制動力を持ち、次いでジェイクブレーキ、そして排気ブレーキという順番になります。中型や大型車両では排気ブレーキだけではエンジンブレーキ力が不足するため、ジェイクブレーキが追加されるケースが多くあります。
参考)2025年最新 排気ブレーキマークとは?意味や使い方を徹底解…
排気ブレーキは中程度の制動力を提供し、下り坂や長時間の減速時においてフットブレーキの負荷を軽減する役割を果たします。一方、ジェイクブレーキはエンジンの圧縮ストローク時に排気バルブを解放して勢いを逃がすため、排気ブレーキ以上に強い効果が得られます。特に急勾配の下り坂や重量物を積載している場合には、ジェイクブレーキの強力な制動力が安全運転に大きく貢献します。
参考)排気ブレーキとは?仕組みや役割、正しい使い方などを解説! -…
ジェイクブレーキの最大のデメリットは、作動時に発生する大きな排気音です。圧縮した空気を上死点前後で一気に解放するため、特有の「ドドドド」という轟音が発生します。この騒音問題により、市街地や住宅街では使用を避けなければならず、使用場所を選ぶ必要があります。北米では、ジェイクブレーキを装備したトラックが都市に入る際には使用制限がかけられることもあります。
参考)ジェイクブレーキ - ナムウィキ
排気ブレーキも騒音を発生させることがありますが、ジェイクブレーキほど大きな音ではありません。信号待ちや交差点では排気ブレーキの使用も控えめにすることが推奨されています。排気ブレーキの入れっぱなしは過剰な振動と騒音を引き起こす可能性があるため、適切なタイミングでのオン・オフが重要です。静粛性を重視する場面では、排気ブレーキの方が適しているといえます。
参考)排気ブレーキの仕組みや使い方、注意点を徹底解説! シーン別の…
排気ブレーキを入れっぱなしにすると、燃費面でデメリットが生じます。排気ガスの流れを常に制限することでエンジンに負荷がかかり、燃焼効率が低下するため、同じ距離を走行するのに通常より多くの燃料を消費します。実際のデータでは、エンジンブレーキのみの燃費を基準とすると、排気ブレーキ1で14%、排気ブレーキ2で25%も燃費が悪化するという結果が出ています。
参考)トラック排気ブレーキの入れっぱなしは危険?リスクと対策と…
理屈から言えば、排気ブレーキでも普通のブレーキでも使わないように走るのが最も燃費が良くなります。ブレーキをかけるのは走っているエネルギーを無駄にすることだからです。ジェイクブレーキについても、常時作動させるとエンジンに余分な負荷がかかり、燃料消費が増加する可能性があります。燃費を考慮するなら、必要な場面でのみ補助ブレーキを使用し、平坦な道では極力使わないことが重要です。
参考)省燃費運転マニュアル(運転テクニック編)
排気ブレーキの故障で多い原因は、排気ブレーキを制御する電子部品の不具合です。電子部品が不具合を起こすと起動しなくなり、制動力が弱くなってしまいます。もう一つの主な原因は、排ガス浄化装置に汚れが溜まることです。DPF再生機能が作動すると排気バルブが閉じて排ガス温度を上昇させ、排気ブレーキが常に稼働する状態になり、効率よく動かせなくなります。
参考)トラックの排気ブレーキが故障!対処法や原因について解説|トラ…
排気ブレーキバルブのバタフライ部分にススなどの燃えカスが付着すると、蓄積して動きが悪くなります。シャフト部分にススが堆積し無理やり始動させると、シャフトの根本部分にガタが生じて正常な動作ができなくなります。完全に閉まらなくなると、少しの隙間から排気が漏れ出てブレーキ効果が低下します。ジェイクブレーキも油圧回路や排気バルブの開閉機構に不具合が生じると、正常な制動力が得られなくなります。
参考)【いすゞ・エルフ】排気ブレーキが効かない!?ココを見れば原因…
使用場面によって、ジェイクブレーキと排気ブレーキを適切に使い分けることが重要です。ジェイクブレーキは強力な制動力を発揮するため、郊外の長い下り坂や山間部の急勾配で効果的に活用できます。ただし騒音が大きいため、市街地や住宅街では使用を控える必要があります。一方、排気ブレーキは中程度の制動力で、一般道や市街地での減速に適しています。
長い下り坂が続く場合は、早めに排気ブレーキを作動させることでフットブレーキの温度上昇を抑え、ブレーキフェードを防ぐことができます。積載時の減速では、車両の重量が増すため、排気ブレーキを併用してフットブレーキの負荷を軽減すべきです。適切なギアを選択することも重要で、低めのギアを使用するとエンジンの回転数が高まり、ブレーキ効果が強化されます。クラッチを切ったりニュートラルに入れた状態では効果が得られないため、常にエンジンとギアが繋がった状態で使用する必要があります。
参考)トラックの排気ブレーキの入れっぱなしはNG|故障を防ぐコツを…
ジェイクブレーキを搭載した車両では、シリンダーヘッドの油圧回路と排気バルブの開閉機構が追加されているため、これらの部品の定期的な点検が必要です。油圧系統のオイル漏れや圧力低下がないか確認し、排気バルブの動作が正常かどうかをチェックすることが重要です。気筒別に作動させる機能があるため、各気筒の作動状況を個別に確認する必要もあります。
排気ブレーキについても、排気バルブやその周辺部品の摩耗が加速するため、頻繁に点検や交換が必要になる可能性があります。排気ブレーキシステムの各部品、特に排気バルブや関連する機械部品の状態を定期的にチェックすべきです。どちらの補助ブレーキも、過度な使用は通常のブレーキシステムの部品にも間接的な影響を与えるため、ブレーキパッドやローターの摩耗パターンにも注意が必要です。頑丈な排気ブレーキでも不具合が起こる場合は、トラックの寿命に近づいている可能性があるため、修理より買い替えを検討することも選択肢の一つです。
補助ブレーキの種類と特性を理解した上で、使用シーンに合わせて適切に活用することが大切です。
トラックやバンのリターダーとは?排気ブレーキとの違いや仕組みなど - トラックファイブブログ
各種補助ブレーキの詳しい比較や、リターダーなど他の補助ブレーキについても解説されています。
排気ブレーキの仕組み・使い方・修理方法【トラック補助ブレーキ】 - トラック買取専門店
排気ブレーキとジェイクブレーキの原理や仕組みについて、図解を交えて詳しく説明されています。

フィーラーゲージ ジェイクブレーキツールセット 0.2mm - 4.2mm フィーラーゲージ ボルボ マック MP7 MP8 MP10 D12 D13 D16エンジン対応 交換用 85111377 8880052 8880053 排気バルブ調整キット(15個)