軍用車両は大きく分けて装甲戦闘車両(AFV)と非装甲車両(ソフトスキン)の2つのカテゴリに分類されます。装甲戦闘車両には戦車や装甲車などの直接戦闘に使用される車両が含まれ、非装甲車両にはトラックや四輪駆動車などの支援・輸送用車両が含まれます。大部分の軍用車両は野戦運用を想定し、舗装道路外(オフロード)での走行能力を持つよう設計されています。
参考)軍用車両 - Wikipedia
主力戦車(MBT:Main Battle Tank)は、機動性・防護力・攻撃力などの性能を十分なレベルで備え、戦車に求められるあらゆる任務をこなすことができる現代戦車の主流です。第二次世界大戦以降に成立した分類であり、現代の戦車はほとんどが主力戦車に分類され、戦力の要となっています。
参考)主力戦車 - Wikipedia
主力戦車は技術発展に伴い世代で区別されており、現在各国で運用されている主力戦車は第3世代と呼ばれています。第3世代戦車は攻撃力の高い120ミリ級の滑腔砲、鋼鉄やセラミックなど2種類以上の素材を組み合わせた複合装甲を特徴としています。かつては軽戦車、中戦車、重戦車といった様々な分類が存在しましたが、2022年現在ではほとんどの国の戦車が「主力戦車」または「MBT」と呼ばれるものに統一されています。
参考)「世界最強の戦車」はどれ? 専門家が選んだ6車種を徹底比較 …
日本の陸上自衛隊では、61式戦車(戦後初の国産戦車)、74式戦車(第2世代)、90式戦車(第3世代)を経て、現在は最新鋭の10式戦車が配備されています。10式戦車はC4I(指揮・統制・通信・コンピュータ・情報)システムを搭載し、平成23年度より順次部隊配備が進められている最新鋭戦車です。
参考)https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/tk_history.html
装甲車は戦闘用と非戦闘用の2種類に大別され、戦闘用車両の方が装甲は厚くなっています。主な装甲車両には歩兵戦闘車(IFV)、装甲兵員輸送車(APC)、偵察戦闘車(CFV)などがあります。
参考)装輪装甲車 - Wikipedia
歩兵戦闘車(IFV:Infantry Fighting Vehicle)は、装甲兵員輸送車のように歩兵を運ぶだけでなく、積極的な戦闘参加を前提としています。分隊程度の歩兵を車内に収容・輸送する兵員輸送能力、機関砲などによる強力な火力、敵弾を防ぐ装甲防護力、戦車に追随できる戦術機動力を備えています。機関砲により下車した歩兵部隊に直接火力支援を提供するとともに、対戦車榴弾によって敵の軽装甲車両と交戦・撃破し、対戦車ミサイルを装備する車両は敵の主力戦車も撃破可能です。
参考)歩兵戦闘車 - Wikipedia
装甲兵員輸送車(APC:Armored Personnel Carrier)は、車内に人員を乗せて走行する軍用車両で、輸送が主任務です。歩兵戦闘車が積極的な戦闘参加を想定しているのに対し、装甲兵員輸送車はあくまで輸送が主任務である点が異なります。多くの装輪装甲車は、装甲兵員輸送車を基本として、歩兵戦闘車型、機動砲型、迫撃砲搭載型、対戦車ミサイル車型、偵察車型、対NBC装備偵察車型、移動司令部型、火力支援車型、救急搬送型、回収車型、工兵型など多様な派生車種をファミリーとして開発されることが多くなっています。
参考)装甲兵員輸送車 - Wikipedia
軍用装甲車一覧 - Wikipedia
世界各国の軍用装甲車の詳細な一覧が掲載されており、第二次世界大戦前後の装甲車の種類と各国の装備について参考になります。
日本では82式指揮通信車、87式偵察警戒車、89式装甲戦闘車、96式装輪装甲車、軽装甲機動車、16式機動戦闘車などが運用されています。アメリカではLAV-25やストライカー、イギリスではフェレットやサラディン、ロシアではBRDMシリーズやBTRシリーズなど、各国で様々な装甲車が開発・配備されています。
参考)軍用装甲車一覧 - Wikipedia
自走砲(Self-propelled artillery, SPA / Self-propelled gun, SPG)は、大砲を自走可能な車体に射撃可能な状態で搭載した兵器です。装備する大砲の種類によって自走榴弾砲(自走カノン砲)、自走迫撃砲、自走無反動砲、自走対空砲などがあります。21世紀の現在では、単に自走砲と言えば対地目標を砲撃する自走榴弾砲を指すことが多くなっています。
参考)自走砲 - Wikipedia
戦車との主な違いは、戦車が見通しできる距離での直接射撃による戦闘に対応しているのに対し、自走砲は見通し外への間接射撃に対応している点です。戦車の砲弾は比較的近距離の低伸弾道を高速で飛翔して短時間のうちに目標に弾着することを想定していますが、自走砲の砲弾は遠距離かつ放物線を描く弾道で発射されます。戦車の砲塔はほとんどが全周旋回が可能ですが、自走砲では車体前方の限られた範囲しか砲を動かせないものや、砲塔そのものを持たないものも存在します。
参考)https://dic.pixiv.net/a/%E8%87%AA%E8%B5%B0%E7%A0%B2
野砲や対空機関砲などを備える自走砲は、遠距離への曲射が可能で、水平を基準とした上向きの角度(仰角)が戦車よりも大きく取れるようになっています。大口径砲を搭載する自走砲では、車体後部に駐鋤(スペード)を備えて車体の動揺を抑制し命中率を上昇させるものも存在します。
第二次世界大戦で大量に使用されたウィリス・ジープは、1941年から生産・実戦投入された軽量偵察車で、軍用4WD車の代名詞となりました。砂漠の長距離パトロール、除雪、電話線敷設、運搬車両、消防ポンプ車、戦地での救急車、トラクターなどその使い道は幅広く、ホイールを付け替えれば線路を走ることもできました。堅牢なラダーフレームにリーフリジッドサスペンション、台形ホイールアーチにシンプルなオープンボディというエクステリアは、機能優先ながらほどよい道具感や愛嬌さえ感じられる魅力的なデザインでした。
参考)同一車両でよく似た名前、「ハマー」と「ハンヴィー」何が違う?…
現代版ともいえる車両がハンヴィー(HMMWV:High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle)で、「高機動多用途装輪車両」を意味します。1985年からM151(ケネディジープ)の更新用車両としてアメリカ軍に配備が始まりました。ハンヴィーはケネディジープM151よりふた回りほど大きく、大きいゆえに武装や装甲、内部装備の追加や改造の余地が大きいのが特徴です。
参考)ハンヴィー - Wikipedia
ハンヴィーとは?性能やジープとの違いについても解説! - カーモビー
ハンヴィーとジープの違い、性能の詳細について、積載力や武装能力の観点から分かりやすく解説されています。
M151では大型・長射程の無反動砲や対戦車ミサイルを運用するのに弾薬や誘導装置、人員で2台必要でしたが、ハンヴィーは2台のM151を1台で補える積載力を持っています。荷物の輸送、兵員の移動、軽武装攻撃、偵察任務など幅広い用途に対応するためのバリエーションがあり、防弾仕様や医療救護車両、指揮通信車両など特定の任務に特化したモデルも存在します。その多用途性と信頼性により、軍用車両としてだけでなく民間市場でもハマーH1として人気を博しました。
参考)ハンヴィーとは?性能やジープとの違いについても解説!
youtube
日本の陸上自衛隊は発足当初、独特な車両の呼称を使用していました。1954年に発足した自衛隊は、憲法第9条で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記された中で、朝鮮戦争の勃発により急遽国防組織を作る必要に迫られました。このため、明らかに国防軍を意識した組織でありながら、警察の補助という名目で「警察予備隊」として発足し、戦争をする組織ではないことを強調しました。
参考)「戦車」じゃなくて「特車」です 自衛隊内の独特な呼称 今はそ…
アメリカ軍から迫撃砲や戦車の供給を受けた警察予備隊は軍隊にしか見えなくなり、政府はイメージ戦略として名称を変更しました。「兵隊、兵士」は「普通科」に、「砲兵・法兵科」は「特科」、「戦車」は「特車」と名前を変更したのです。導入当初、M24軽戦車は「M24特車」、M4中戦車は「M4特車」、M41軽戦車は「M41特車」と呼ばれていました。
参考)陸上自衛隊の装備品一覧 - Wikipedia
陸上自衛隊の車両装備は多岐にわたり、戦車以外にも装甲車両として82式指揮通信車、87式偵察警戒車、89式装甲戦闘車、化学防護車、96式装輪装甲車、軽装甲機動車、NBC偵察車、16式機動戦闘車などが配備されています。これらの車両は日本の地形や防衛ニーズに合わせて独自に開発されたものが多く、世界的に見ても高い技術力と実用性を備えています。
軍用車両の分類と種類は非常に多様で、各国の軍事戦略や地形、技術力によって異なる特徴を持つ車両が開発されてきました。現代では装甲戦闘車両から非装甲車両まで、用途に応じた幅広い車両が運用され、軍事作戦の成否を左右する重要な装備となっています。
参考)軍用車両とは - わかりやすく解説 Weblio辞書