日本の公道で外国ナンバーの車両が走行することは、1949年のジュネーブ条約に基づいて合法的に認められています。この条約は国際的な車両の移動を円滑にするために締結されたもので、条約加盟国同士であれば相互に外国ナンバーでの走行が可能となっています。
具体的には「カルネ」と呼ばれる国際的な車両通関手帳の携帯を条件として、一時輸入された車両という扱いで元のナンバープレートのまま走行できる仕組みです。ただし、この制度は条約加盟国同士に限定されており、例えば日本と中国のように片方または両方が非加盟国の場合は現地での登録が必要になります。
国土交通省自動車局の担当者によると、「ジュネーブ条約で締結している国同士であれば、ほかの国のナンバーでも公道を走行することができます」と明確に説明されています。
各国のナンバープレートには独特のサイズと特徴があり、日本のものと比較すると興味深い違いが見られます。日本のナンバープレートは縦165mm×横330mmですが、アメリカは縦152.4mm×横304.8mm(6インチ×12インチ)、フランスやドイツといったヨーロッパ諸国では縦110mm×横520mmとなっています。
日本のナンバープレートは海外に比べてやや大きく設計されており、さらに「ひらがな」も表記されているため、他国のナンバーと並んでいても容易に識別することができます。この特徴的なデザインにより、日本車は海外でも一目で判別可能となっています。
また、各国のナンバープレートには色彩や文字配置にも特色があり、例えばイギリスの黄色枠に英数字という組み合わせは非常に特徴的です。これらの違いを知っていると、街中で見かけた外国ナンバー車両の出身国を推測する楽しみも生まれます。
外交官ナンバーは外務省が管轄する特殊なナンバープレートで、通称「青ナンバー」「外ナンバー」と呼ばれています。これらの車両は外交特権により、日本の一般的な交通法規の適用を受けない特別な地位を持っています。
外交官ナンバーには4つの種類があります。
興味深いことに、「領」だけは白いナンバープレートに青文字となっており、これは大使館と領事館の機能の違いを明確化するためです。
外交官ナンバーの数字部分には国番号が割り当てられており、例えばイギリスは81、アメリカは82・83・84・87、中国は91・151といった具合に、どの国の車両かを一目で判別できるシステムになっています。
外交官ナンバーの車両は1961年のウィーン条約に基づく外交特権により、交通違反や交通事故を起こしても日本の法律で処罰することができません。この特権は国家の独立性や外交使節団の任務遂行を保護する観点から設けられたものです。
しかし、この特権の濫用が深刻な問題となっています。外務省の発表によると、駐日外交団車両による放置車両確認標章取付(違反)件数は、2018年に3,948件、2019年に2,615件、2020年に1,137件にも上りました。
この状況を受けて外務省は、繰り返し違反を行う車両については個別に注意喚起し、違反金納付をより強く求めるほか、駐日外交官ナンバーのガソリン税免税措置の証明書発給時に反則金の未納状況を確認する措置を取るようになりました。
外交特権により車検も受ける必要がなく、交通違反をした場合でも車から出てきてもらえなければ捕まえることもできないという現実があります。
実際の目撃例として、イギリスナンバー(黄色枠に英数字)のランドローバーが日本の公道を走行し、マクドナルドに立ち寄ってイギリス人らしき2人が食事を取っているという興味深い光景が報告されています。このような光景は、国際化が進む現代日本ならではの風景といえるでしょう。
また、著名な投資家ジム・ロジャーズがアメリカナンバーのまま世界中を旅行したという事例もあり、カルネ制度を活用した国際的な車両移動の実例として注目されています。
一方で、ユーロ圏のユーロナンバーが日本の公道を走行している例は非常に稀とされており、これは地理的距離や輸送コストの問題が影響していると考えられます。
外国ナンバー車両の存在は、日本の国際化の進展を象徴する現象でもあり、街中でこれらの車両を見かけることは、グローバル社会の一端を垣間見る機会でもあります。特に東京などの国際都市では、外交関係者や国際機関職員、長期滞在者による外国ナンバー車両の利用が日常的な光景となっています。
これらの車両は単なる交通手段を超えて、国際関係や外交活動の一部としての役割も担っており、その背景には複雑な国際法や外交慣行が存在しているのです。