ガソリン税暫定税率いつから始まり廃止はいつか

ガソリン税の暫定税率は1974年から50年以上続く上乗せ税率です。2025年の年内廃止を目指す動きが活発化していますが、財源問題や地方財政への影響など様々な課題が残されています。暫定税率の歴史から廃止後の影響まで、運転者が知っておくべきポイントとは?

ガソリン税暫定税率の開始から廃止まで

暫定税率の重要ポイント
📅
1974年導入

田中角栄内閣の下、道路整備財源として2年間の臨時措置でスタート

💰
25.1円の上乗せ

本則税率28.7円に加え、リッターあたり25.1円が暫定税率として課税

2025年内廃止へ

与野党が年内のできるだけ早い時期の廃止で合意、50年の歴史に終止符

ガソリン税暫定税率が1974年に導入された背景


ガソリン税の正体: なぜ値下がりは遅く、二重課税が許されているのか 【ガソリン税】【ガソリン価格】【税金の仕組み】【暫定税率】【二重課税】
ガソリン税の暫定税率は1974年、田中角栄内閣の下で導入されました。第7次道路整備五か年計画(1973〜1977年度)の財源不足が直接的な理由であり、高度経済成長期のインフラ需要増に加え、1973年の第1次オイルショック後の財政悪化も背景にありました。
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この暫定税率は揮発油税の本則税率に上乗せする形で導入され、揮発油税は1954年に道路特定財源化されていたことから、新たに導入された暫定税率による増収分も道路整備を目的とする道路特定財源として位置づけられました。当初は「2年間の臨時措置」とされましたが、その後繰り返し延長され、名前を変えながらも現在に至るまで継続しています。
参考)https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/gasoline-tax/

暫定税率は1979年に引き上げられ、現在の1リットルあたり25.1円となりました。本則税率の28.7円と合わせて、ガソリン税は合計53.8円が課税されています。
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ガソリン税暫定税率の歴史的変遷と名称変更

暫定税率は2008年の「ガソリン国会」で大きな政治問題となりました。当時、参院選で躍進した民主党が暫定税率廃止を強く主張し、2008年3月31日をもって暫定税率は一時的に失効しました。しかし4月30日には衆議院で与党が法案の再可決を強行し、わずか1ヵ月で暫定税率は復活しました。​
2009年4月には道路特定財源制度が廃止され、暫定税率は一般財源となりました。2010年には民主党政権下で暫定税率は形式上廃止されましたが、実質的には「当分の間税率」という名称に変更されただけで、税負担は何も変わりませんでした。
参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/5f07076b8bf39a26ce3780e8ee5890129c2bc266

同年、トリガー条項が創設されました。これはガソリン価格が3ヶ月連続で160円を超えた場合に上乗せ分の課税を停止する仕組みですが、2011年の東日本大震災後に復興財源確保のため凍結され、現在まで発動されたことはありません。
参考)トリガー条項とは

ガソリン税暫定税率廃止の最新スケジュール

2024年秋の衆院選で少数与党となった自民党は態度を軟化させ、暫定税率の廃止方針に合意しました。2025年7月末には自民、公明、立憲民主、日本維新の会、国民民主、共産の与野党6党が年内のできるだけ早い時期にガソリンの暫定税率を廃止することで合意しました。
参考)ガソリン税の旧暫定税率、2025年度内の廃止含め議論 自民党…

8月1日には野党7党が「11月1日からの廃止」を求める法案を衆議院に提出しました。政府・与党は財政の健全化を重視し、補助金という手段で国民負担を抑える方法を優先している状況ですが、政策実現には与党との合意形成が不可欠なため、法案提出後も施行までには多くの課題が残っています。
参考)ガソリン暫定税率廃止はどうなる?ガソリン税の内訳や二重課税に…
​youtube​
自民党の森山裕幹事長は「2025年度でやめることは約束している。25年度で終わるためには12月の税制でしっかり決める」と述べており、2025年度内の廃止を明言しています。10月15日には自民、公明、立憲民主の3党の税制調査会長が会談し、まず3党で原案の作成を目指すことで一致しました。
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ガソリン税暫定税率廃止による価格への影響

暫定税率が廃止された場合、ガソリン価格は1リットルあたり25.1円値下がりします。2025年7月30日時点の全国平均ガソリン価格は、政府からの補助なしで184.0円でした。この価格で暫定税率が廃止される場合、ガソリン平均価格は160円弱に抑えられると考えられます。
参考)ガソリン税の暫定税率は2025年内に廃止?残る課題とは - …

ただし、廃止に合わせてガソリン補助金も消失する可能性が高い点に注意が必要です。2025年7月末時点では、補助金によってガソリン価格が1リットルあたり10円抑えられています。この補助金と差し引きすると、実質的な値下げ幅は約25円でなく約15円となります。​
現在のガソリン価格174.2円のうち本体価格は101.8円に過ぎず、残りは税金です。ガソリン価格の約4割が税金にあたり、消費税については本体価格にガソリン税や石油石炭税を加えたものに対して10%が課税されることから、二重課税ではないかという不満も一部に存在します。
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ガソリン税暫定税率廃止による財源問題と地方財政への影響

暫定税率を廃止することで、ガソリン税で約1兆円、同じく暫定税率が存在する軽油引取税で約5000億円の減収となります。政府の試算によると、年度内に約6,000億円の財源不足が生じる見込みで、来年度以降は国と地方を総合して最大1.5兆円の減収が予想されています。
参考)ガソリン代、本当に安くなる?2025年12月廃止で修正協議中…

軽油引取税は地方税であり、地方自治体の重要な収入となっています。村上誠一郎総務相は「暫定税率が廃止された場合、国と地方で1.5兆円の税収減少となり、特に約5000億円が地方の財源の減少分になる」と述べ、懸念を示しました。
参考)村上誠一郎総務相「ガソリン暫定税率廃止で地方財源5千億円減少…

ガソリン税の一部が地方自治体に交付されており、道路の維持・補修などに使われています。暫定税率が廃止されると、自治体の財源が大幅に減り、道路の新設・補修などの事業に支障が出ると懸念されます。不足する分を補うためには、補正予算の編成などにより代替となる財源を確保する必要があり、今後の論点は新たな財源確保の方法が中心になっていくでしょう。
参考)「既に激安」ガソリン税引き下げ阻む不都合な真実 日本の小売価…

ガソリン税暫定税率廃止が自動車ユーザーに与える独自の影響

暫定税率の廃止は、自動車を日常的に使用するドライバーにとって大きな家計負担の軽減となります。特に通勤や業務で頻繁に給油する必要がある人ほど、恩恵が大きくなります。月間100リットルのガソリンを消費する場合、暫定税率廃止により年間約3万円(補助金終了を考慮すると約1万8千円)の節約が見込めます。​
しかし、代替財源の確保に過度に固執すると、家計支援効果が相殺される可能性があることに注意が必要です。たとえ暫定税率が廃止されたとしても、環境対策の名目で他の税を引き上げたり、車体課税の強化などで減収分を補填すれば、家計の負担が全体として減るとは限りません。​
また、暫定税率廃止によってガソリン価格が下落すれば、ガソリン消費が促進され、脱炭素の流れに逆行するとの指摘もあります。価格低下を見込んだ買い控えや低下後の需要急増等で、ガソリンスタンドなど現場に混乱が生じる可能性もあるため、政府は補助金の段階的拡充によって価格を段階的に低下させる対応を検討しています。
参考)ガソリン税暫定税率は“隠れカーボンプライシング”だったのか?…

🚗 参考リンク(道路整備財源の詳細について)
第一生命経済研究所 - 暫定税率とはなにか -歴史的経緯と今後の課題-
📊 参考リンク(トリガー条項の仕組みについて)
公明党 - トリガー条項とは
💡 参考リンク(最新の廃止スケジュールについて)
日本経済新聞 - ガソリン減税、自民・公明・立民で原案作成へ