縁石の高さ基準は、道路設計の歴史とともに進化してきました。1958年の旧道路構造令では、歩道が車両通行部分より高いことだけが定められており、具体的な数値基準がありませんでした。しかし1960年の道路構造令制定時には、当時のタイヤ高さなどを考慮して15~20cm程度が標準とされるようになりました。
その後、2004年に国土交通省により現在の基準が改訂されました。この改訂では、縁石の高さを車道面に対して15cmを標準とする明確な規定が定められ、全国的に統一化されたのです。この基準は、乗用車の前後ドア開口部の高さ(通常25~35cm)や最低地上高(13~16cm)などを総合的に検討した結果です。
現在の基準では、道路環境や交通状況に応じて、複数の縁石高さが設定されています。一般的な市街地の歩道では15cmが採用されており、街中で計測してもほぼこの高さに統一されているのが実情です。一方、高速走行が予想される主要幹線道路では、車両の路外逸脱防止のため20cmの縁石が使用される場合があります。
橋梁やトンネル区間では、構造物保全のために25cm、またはセミフラット形式で対応されます。さらに、植樹帯や塀で歩行者の安全が確保されている場合には、必要に応じて5cm程度まで低減することが可能です。これらの基準は「歩道の一般的構造に関する基準」として、各地方自治体の道路設計でも参考にされています。
縁石の高さ基準15cmが設定された重要な理由の一つは、乗用車のドア開閉を考慮したものです。一般的な乗用車で前後のドアを開いた場合、路面からドアの開口下端部までの高さは25~35cm程度あります。SUVやミニバンはさらに高いため、標準的な15cm縁石であれば、通常の使用状況ではドアが縁石に引っ掛かることはありません。
ただし、車高を大幅に下げるカスタマイズを施したスポーツカーでは注意が必要です。さらに、車道の水はけを良くするため車道の両端が歩道側へ傾斜している場所では、ドアの開閉時に引っ掛かる可能性があります。特にフロントアンダースポイラーなどのエアロパーツを装着した低車高の車両では、危険性が増します。
多くの人が誤解しやすいのが、歩道の縁石と駐車場の車止めの高さです。歩道の縁石が15cmなのに対し、駐車場などに設置されるコンクリート製の車止めは、一般的に9~11cm程度の高さに設計されています。この低さにしているのは、乗用車のボディ先端部分における地上高が15~20cm、最低地上高が13~16cm程度であることを考慮しているためです。
車止めは、ボディの下側に当たらないよう配慮されて造られているわけです。しかし、設計の古い駐車場では、車止めの高さが15cm近くあるケースも存在し、フロントアンダースポイラーやマフラーをぶつけるリスクがあります。ミニバンで満乗車時に重い荷物を積んでいる場合、通常より車高が下がるため注意が必要です。
国土交通省の基準では、特殊な環境条件下での適用例も定められています。橋梁部分ではマウントアップ形式で25cm、またはセミフラット形式で20cmの高さが使用されます。トンネル部分では、構造物保全のため25cmのマウントアップ形式が標準とされているのです。
また、コミュニティ道路など交通量が少ない地域では、積極的に歩車道の高さを同じまたは段差を少なくすることが検討されており、この場合は5cmの低い縁石が使用されます。国道などの主要幹線道路では、高さ15cm以上の縁石使用が義務づけられており、より厳格な基準が適用されます。これらの基準は、歩行者の安全と車両走行の効率のバランスを考慮した、総合的な設計思想を反映しています。
参考情報:歩道の一般的構造に関する基準についての詳細
国土交通省 歩道の一般的構造に関する基準の改正について
参考情報:神戸市の縁石基準における詳細な解説と用途別設定
神戸市 歩車道分離方法における縁石の高さ基準