道路構造令の基準では、普通自動車の車幅を2.5mとし、これにすれ違いに必要な余裕幅25cm(両側合計)を加算して、単一車線の最小幅を2.75mと定めています。しかし、1車線道路である第3種第5級・第4種第4級の道路では、乗用車相互のすれ違いと消防活動を考慮して、4mという基準が設定されました。
この4mの幅員では、小型車(約1.7m幅)同士であればぎりぎりすれ違いが可能です。参考資料によると、実験的な走行軌跡測定で乗用車の場合は4.0mあれば両側壁がある状態でも通行できることが確認されています。一方、大型車が含まれる場合や、消防活動時の車両配置を考慮すると、6m以上の幅員が相互交通の快適性を確保するために推奨されています。
阪神・淡路大震災の調査結果は、道路幅員と災害時の避難機能の重要性を示しています。調査によると、幅員4m未満の道路では約73%が歩行者通行不可となったのに対し、幅員4~6mの道路では約63%、6~8mでは約33%という結果が得られました。この統計から、4m幅員は最低限の避難通路を確保するボーダーラインであることが理解できます。
市街地火災シミュレーションの研究からも興味深い知見が得られました。道路幅員3mで準耐火造2階建ての建物を建てた場合と、道路幅員4mで防火造2階建ての場合を比較すると、前者でも50分以上の延焼遅延効果が確認されています。つまり、4m幅員だけが唯一の防災基準ではなく、建物の構造や開口部の位置によって、防災性能が大きく変わることが明らかになっています。
建築基準法が適用される際、敷地が接する道路幅員が4mに満たない場合、セットバック制度が適用されます。セットバックとは、道路の中心線から両側にそれぞれ2m後退させて、将来的に4m道路へと段階的に拡幅することを意味します。これは100年以上前の大正時代から続く、日本の都市計画の重要な手法です。
実際の運用では、古い木造密集地帯や路地が多い地域では、この4m基準と既存の狭い道路との調整が課題となっています。東京都世田谷区では「幅員4m確実整備」に向けた30年間の拡幅事業を展開しており、きめ細かな施策で段階的に改善を進めています。清水町などの自治体でも、昭和35年12月24日以前に存在する1.8m以上4m未満の道路を「2項道路」として認定し、一定条件下での建築を許可する柔軟な対応をしています。
道路構造令では、計画交通量に応じて車線数が決定されます。第3種第5級または第4種第4級の普通道路では、車道幅員を4mとする規定がありますが、計画交通量が極めて少なく、かつ地形が特別な理由により必要な場合は3mに縮小できる特例があります。
この柔軟性は、地方の山間部や交通量の少ない地域における実用性を確保するためです。反対に、交通量が設計基準交通量を超える場合は、2車線以上の道路として拡幅が求められます。複数の車線を有する道路では、各車線が3.25m以上の幅員が必要とされ、中央帯や側帯、歩道などを含めた総合的な幅員構成が検討されます。
興味深いことに、採光補正係数の計算結果から、単なる道路幅員4mだけでは、特に総3階建て以上の建築物では採光基準を満たすことが困難なことが判明しています。隣地境界線からの距離が0.5m離しても、2階建ての建物でも総1階部分の採光基準を満たすのが限界です。
隣棟間隔(道路幅員)が3mの場合、3階部分を1m後退させると、1階開口部で584Lx、2階開口部で762Lxの照度が得られます。これを総3階建てと比較すると大幅に改善されます。特に隣棟間隔3mで3階部分を1m後退させた場合と、隣棟間隔4mで総3階とした場合は、ほぼ同等の照度が得られることが確認されており、建物形態の工夫が4m幅員の限界を補完する重要な手法となっています。
参考資料:建築基準法と道路構造令の解説
国土技術政策総合研究所「参考資料」(道路幅員と交通機能、防災性能に関する詳細データ)
国土交通省「道路設計実務資料」第5章幅員構成(車線、中央帯、路肩、歩道の詳細基準)