エンジンブローとは、エンジンが重大なダメージを受けて正常に動作しなくなる状態を指します。ピストンやシリンダーなどの内部部品が損傷し、エンジンが完全に停止してしまうため、車は走行できなくなります。エンジンブローが起こると、修理には高額な費用がかかり、場合によってはエンジン全体の交換が必要になることもあります。近年の車は耐久性が向上しているため発生頻度は低くなっていますが、メンテナンス不足や不具合の放置により発生するリスクがあります。
エンジンブローの代表的な症状として、エンジンから異音が発生します。オーバーヒートが原因の場合は「カリカリ」という音が聞こえ、症状が悪化すると「カンカン」「キンキン」という金属音に変化します。エンジンオイルの不足や劣化が原因の場合は「ガラガラ」「ゴロゴロ」という重い音が特徴的です。タイミングベルトの劣化では「キュルキュル」という甲高い音が聞こえることもあります。これらの異音は、エンジン内部の部品が正常に動作していないことを示す重要なサインです。普段と違う音が聞こえた場合は、すぐに点検を受けることが重要です。異音を無視して走行を続けると、エンジン内部の損傷が進行し、最終的にはエンジンブローに至る可能性が高まります。
エンジンブローの症状として、排気管やエンジンルームから白煙や黒煙が排出されることがあります。白煙は冷却水が燃焼室に入り込んでいる状態を示しており、ヘッドガスケットの破損やエンジンのオーバーヒートが原因となることが多いです。白煙には独特のにおいがあり、冬場の水蒸気とは明らかに異なります。一方、黒煙は燃焼不良やエンジンオイルが燃えている状態を示しています。エンジン内部の部品の摩耗や破損が原因で、オイルが燃焼室に侵入して燃えている可能性があります。エンジンルームから白煙が上がっている場合は、すでにエンジンオイルが燃えている可能性が高く、エンジン自体が焼き付いている危険性もあります。このような症状が見られた場合は、すぐに安全な場所に停車し、エンジンを停止させる必要があります。
エンジンブローの症状として、ダッシュボードの警告灯が点灯することがあります。水温計が「H」付近を指す場合や、水温警告灯が赤く点灯した場合は、冷却水の温度が異常に上昇しておりオーバーヒートの危険性があります。油圧警告灯(エンジンオイルランプ)が点灯した場合は、エンジンオイルの圧力低下や油量不足を警告しており、エンジンの焼き付きが起こる前兆です。これらの警告灯は重要度が非常に高く、表示された場合は即座に運転を中止すべきサインです。警告灯を無視して走行を続けると、エンジンに致命的なダメージを与える可能性があります。安全な場所に速やかに停車し、ロードサービスを呼んで専門家の診断を受けることが必要です。警告灯の点灯は、エンジンが深刻な状態にあることを示しているため、軽視してはいけません。
エンジンブローの症状として、車の走行性能が急激に低下することがあります。アクセルを踏んでも加速しづらくなったり、エンジンの回転が不安定になったりします。エンジンのパワー不足を感じる場合は、エンジン内部の圧縮力が低下している可能性があります。ピストンリングの摩耗やシリンダーの損傷により、燃焼効率が大幅に低下しているためです。また、エンジンが異常に振動したり、アイドリング時にエンジンが止まりそうになったりする症状も見られます。これらの症状は、エンジンブローの初期段階で現れることが多く、早期に対処すれば重大なダメージを防げる可能性があります。走行性能の異常を感じたら、すぐに専門の整備士に診断してもらうことが重要です。エンジンの状態が悪化する前に適切なメンテナンスを行うことで、高額な修理費用を避けることができます。
エンジンブローの症状として、一般的にはあまり知られていませんが、エンジンオイルの消費量が急激に増加することがあります。通常、エンジンオイルは徐々に減少しますが、短期間で大量に減る場合は、エンジン内部でオイルが燃焼している可能性があります。オイルが燃焼すると、排気ガスに独特の焼け焦げたようなにおいが混じります。このにおいはゴムやプラスチックが焼けたような悪臭で、車内にまで侵入することもあります。オイル消費量の急増と異臭が同時に発生している場合は、ピストンリングの摩耗やシリンダー壁の損傷が進行している可能性が高く、エンジンブローの前兆として非常に重要なサインです。定期的にエンジンオイルの量をチェックし、異常な減少が見られた場合は、すぐに整備工場で詳細な点検を受けることをおすすめします。早期発見により、エンジンブローを未然に防ぐことができる可能性が高まります。
エンジンブローの主要な原因の一つがオーバーヒートです。オーバーヒートはエンジンの冷却システムが正常に機能していない場合に発生します。冷却水の不足や漏れが最も一般的な原因で、ラジエーターやホースからの冷却水漏れにより、エンジンを適切に冷却できなくなります。エンジンが高温になると、金属部品が熱膨張し、ピストンとシリンダーの間の隙間が狭くなります。その結果、部品同士の摩擦が増加し、最終的にはエンジンが焼き付いてしまいます。ラジエーターの損傷や冷却用電動ファンの故障も、オーバーヒートの原因となります。初期症状のうちに停車してロードサービスを呼べば大事には至りませんが、症状が出ても走行を続けると、エンジンに致命的なダメージを与え、修理不能な状態に陥ります。
カーコンビニ倶楽部 - エンジンブローの原因と前兆の詳細解説
エンジンオイルの不足や劣化は、エンジンブローの重大な原因です。エンジンオイルは潤滑、密封、冷却、防錆、洗浄という5つの重要な役割を果たしています。オイルが不足すると、エンジン内部の部品同士の摩擦が増加し、摩擦熱が発生します。この摩擦熱によりエンジンが過熱し、部品が焼き付いてしまいます。また、エンジンオイルが劣化して粘度が上がると、オイルの流動性が低下し、各部品に適切にオイルが行き渡らなくなります。その結果、潤滑不足となり、エンジン内部の摩耗が急速に進行します。エンジンオイルの交換を怠ると、オイルに含まれる汚れや金属片が蓄積し、オイルの性能がさらに低下します。軽自動車なら半年または走行距離6,000km程度、普通自動車なら1年または走行距離10,000〜15,000kmごとの定期的なオイル交換が必要です。
エンジンブローの原因として、異常燃焼も重要な要因です。正常な燃焼サイクルでは、点火プラグのスパークによって燃料が点火されますが、異常燃焼ではこのタイミングがずれます。プレイグニッションは、本来の点火タイミングより前に燃料が自然発火する現象です。この早期着火により、ピストンがまだ上昇中に燃焼圧力がかかり、エンジンに過大な負荷がかかります。デトネーションは、点火プラグによる正常な点火の後に、燃焼室内の別の場所で意図しない爆発的な燃焼が起こる現象です。異常燃焼が繰り返されると、ピストンやシリンダーヘッドに亀裂が入ったり、ピストンリングが破損したりします。低品質な燃料の使用、点火時期の不適切な調整、カーボンの堆積などが異常燃焼の原因となります。
MT車特有のエンジンブロー原因として、シフトミスによるオーバーレブがあります。オーバーレブとは、エンジンの回転数が設計上の安全限界を超えてしまう現象です。高速走行中に5速や6速などのトップギアから誤って2速や3速に入れてしまうと、急激にエンジン回転数が上昇します。エンジンが許容できる回転数を超えると、バルブがピストンに接触してバルブが曲がったり、コンロッドが破損したりする可能性があります。また、クランクシャフトやカムシャフトにも過大な負荷がかかり、これらの部品が破損することもあります。オーバーレブになってもすぐにエンジンブローが発生するわけではありませんが、エンジン内部に微細なダメージが蓄積され、その後の走行でエンジンブローのリスクが高まります。シフトミスを起こした場合は、念のため整備工場でエンジンの状態を点検してもらうことが賢明です。
エンジン部品の経年劣化や摩耗も、エンジンブローの重要な原因です。エンジンは走行中、常に高温・高圧・高速回転という過酷な環境にさらされています。長期間の使用や高走行距離により、ピストンリング、バルブ、カムシャフト、クランクシャフトベアリングなどの部品が徐々に摩耗していきます。ピストンリングが摩耗すると、燃焼室の気密性が低下し、圧縮力が落ちてエンジン性能が低下します。また、オイルが燃焼室に侵入しやすくなり、オイル消費量が増加します。バルブやバルブシートの摩耗により、吸排気の効率が悪化し、エンジンのパワーが低下します。タイミングベルトやタイミングチェーンの劣化も、エンジンブローにつながる危険性があります。これらが破損すると、バルブとピストンのタイミングが狂い、バルブとピストンが衝突してエンジンが重大なダメージを受けます。定期的な点検と適切な時期での部品交換により、劣化による突然のエンジンブローを防ぐことができます。
エンジンブローの前兆として、最も早く現れるのが微細な変化です。エンジンの始動時に普段よりも時間がかかったり、始動音がいつもと違ったりする場合は注意が必要です。アイドリング時のエンジン回転数が不安定になり、時々エンジンが止まりそうになることもあります。また、加速時のレスポンスが鈍くなり、アクセルを踏んでも以前のようにスムーズに加速しなくなります。燃費が急激に悪化することも、エンジン内部の効率が低下しているサインです。これらの初期サインは見逃しやすいですが、複数の症状が同時に現れた場合は、エンジンに何らかの問題が発生している可能性が高いです。早期に整備工場で診断を受けることで、重大なエンジンブローを未然に防ぐことができます。日頃から愛車の状態に注意を払い、わずかな変化も見逃さないことが重要です。
エンジンブローの前兆として現れる異音には、いくつかの特徴的なパターンがあります。「カリカリ」という軽い音は、オーバーヒートの初期段階を示しており、放置すると「カンカン」「キンキン」という金属音に変化します。この金属音は、ピストンとシリンダーの隙間が異常に狭くなっている状態を示しています。「ガラガラ」「ゴロゴロ」という重く鈍い音は、エンジンオイルの不足や劣化が原因で、ベアリングやピストンが適切に潤滑されていない状態です。「カチカチ」という規則的な音は、バルブクリアランスの調整不良やカムシャフトの摩耗を示しています。「キュルキュル」という甲高い音は、タイミングベルトやファンベルトの劣化や張力不足が原因です。異音の種類や発生タイミングによって、エンジンのどの部分に問題があるかをある程度推測できます。異音を感じたら、すぐに専門家に相談することが重要です。
エンジンブローの前兆として、エンジンオイルに関連する変化が現れます。オイルレベルゲージを確認した際に、オイルの量が急激に減少している場合は要注意です。正常な状態では、オイルは徐々にしか減少しませんが、短期間で大量に減る場合は、エンジン内部でオイルが燃焼しているか、外部に漏れている可能性があります。オイルの色や質感の変化も重要なサインです。オイルが真っ黒になっている場合は、劣化が進行しており交換時期を大幅に過ぎています。オイルに金属片や異物が混入している場合は、エンジン内部の部品が摩耗していることを示しています。オイルが乳白色になっている場合は、冷却水がエンジン内部に侵入しており、ヘッドガスケットの破損が疑われます。オイルフィラーキャップの裏側に白いスラッジが付着している場合も、冷却水の混入を示しています。定期的にエンジンオイルの状態をチェックすることで、エンジンブローの前兆を早期に発見できます。
エンジンブローの前兆として、冷却水の温度に関する異常が現れます。水温計が通常よりも高い温度を示している場合は、冷却システムに問題がある可能性が高いです。正常な状態では、水温計の針は中央付近(CとHの中間)を指しますが、H側に近づいている場合はオーバーヒートの危険があります。エンジンをかけてからの温度上昇が通常よりも早い場合も、冷却システムの効率が低下しているサインです。冷却水のリザーバータンクを確認すると、冷却水が減少していたり、変色していたりすることがあります。冷却水が茶色く濁っている場合は、錆や汚れが混入しており、冷却システム内部が劣化している可能性があります。冷却水にオイルが混じっている場合は、エンジン内部で冷却水とオイルの経路が破損していることを示しています。エアコンを使用すると水温が急上昇する場合は、ラジエーターファンの故障が疑われます。
エンジンブローの前兆として、排気ガスの色やにおいに変化が現れます。通常、排気ガスは無色透明ですが、異常がある場合は白煙や黒煙、青白い煙が排出されます。白煙が継続的に出る場合は、冷却水が燃焼室に侵入している可能性があり、ヘッドガスケットの破損やシリンダーヘッドのクラックが疑われます。冬場の始動直後に一時的に出る白い水蒸気とは異なり、エンジンが温まっても白煙が続く場合は深刻な状態です。黒煙が出る場合は、燃料の燃焼が不完全な状態を示しており、燃料噴射システムの不具合やエアフィルターの詰まりが原因となります。青白い煙が出る場合は、エンジンオイルが燃焼室に侵入して燃えている状態で、ピストンリングの摩耗やバルブシールの劣化が原因です。排気ガスから強い焦げ臭やオイル臭がする場合も、エンジン内部で異常燃焼が起きているサインです。これらの症状を無視すると、エンジンブローに至る可能性が高まります。
走行中にエンジンブローの症状が現れた場合、まず落ち着いて安全確保を最優先にします。急にエンジンが止まったり、異常な音が聞こえたりした場合は、ハザードランプを点灯させて周囲の車に異常を知らせます。MT車の場合はギアをニュートラルに、AT車の場合はシフトレバーをNポジションに切り替えます。その場で急にエンジンを停止させると、ハンドルやブレーキが重くなり制御が困難になるため、エンジンはかけたままの状態で惰性を利用して安全な場所まで移動します。高速道路の場合は路肩、一般道では駐車場や広い空き地など、他の交通を妨げない場所を選びます。安全な場所に停車したら、エンジンを停止させ、三角表示板や発煙筒を設置して後続車に危険を知らせます。絶対にエンジンを再始動させたり、そのまま走行を続けたりしてはいけません。
エンジンブローが発生した場合、自力での解決は困難なため、速やかにロードサービスに連絡します。JAFや自動車保険のロードサービス、カーディーラーの緊急サービスなど、利用できるサービスに連絡します。連絡時には、現在地の詳細な情報(高速道路の場合はキロポスト番号)、車両の状態、発生した症状などを正確に伝えます。ロードサービスが到着するまでの間は、車内や車の近くで待機し、二次災害を防ぐために安全を確保します。高速道路の場合は、ガードレールの外側など安全な場所で待機することが推奨されます。レッカー車で最寄りの整備工場やディーラーまで搬送してもらいます。エンジンブローの修理には専門的な知識と設備が必要なため、信頼できる整備工場に依頼することが重要です。ロードサービスのスタッフに相談すれば、適切な整備工場を紹介してもらえます。
エンジンブローが発生した場合、基本的に応急処置での解決は不可能です。エンジンオイルや冷却水を補充しても、すでにエンジン内部が損傷している場合は効果がありません。無理に応急処置を試みると、かえって状況を悪化させる危険性があります。エンジンオイルが不足している場合でも、エンジンが焼き付いた後にオイルを補充しても意味がありません。冷却水を補充する際も、エンジンが高温の状態でラジエーターキャップを開けると、高温の蒸気が噴き出して火傷する危険があります。エンジンが完全に冷えるまで待つ必要がありますが、その時間があればロードサービスを呼んだほうが安全です。エンジンブローの症状が現れた時点で、エンジン内部にはすでに重大なダメージが発生しているため、専門家による診断と修理が不可欠です。自己判断での対処は避け、必ずプロに依頼することが重要です。
エンジンブローが発生した場合、修理するか車を買い替えるかの判断が必要になります。修理費用の相場は、部品交換のみの軽微な修理で数万円から十数万円、エンジンのオーバーホールで20万円から50万円、エンジン全体の載せ替えで30万円から100万円以上かかります。輸入車や大型車の場合は、さらに高額になる傾向があります。車両の年式や走行距離、市場価値を考慮して判断します。車両の時価が修理費用を大幅に下回る場合は、修理よりも買い替えのほうが経済的です。例えば、修理に80万円かかる車の時価が30万円程度であれば、買い替えを検討すべきです。一方、比較的新しい車や希少車、思い入れのある車の場合は、高額でも修理する価値があるかもしれません。複数の整備工場で見積もりを取り、修理内容と費用を比較検討することが重要です。
エンジンブローが発生した場合、車両保険が適用されるかどうかを確認することが重要です。車両保険の補償対象は、基本的に「衝突事故」や「自然災害」などの外的要因による損傷に限られます。エンジンオイルの不足や劣化、メンテナンス不足など、経年劣化や管理不備が原因のエンジンブローは、保険適用外となるケースがほとんどです。ただし、事故による衝撃でエンジンが損傷した場合や、洪水などの災害で水没してエンジンが壊れた場合は、保険が適用される可能性があります。保険会社によって判断基準が異なるため、エンジンブローが発生したら、まず加入している保険会社に連絡して確認することをおすすめします。保険金が支給される場合でも、免責金額や等級ダウンによる保険料の増加を考慮する必要があります。場合によっては、保険を使わずに自己負担で修理したほうが長期的には得になることもあります。
エンジンブローの修理費用は、損傷の程度によって大きく異なります。軽微な部品交換の場合、エンジンオイル漏れの修理や消耗品の交換であれば、数万円から十数万円程度で済むことがあります。中程度の修理では、ピストンやシリンダーヘッドの交換、冷却水漏れの修理などが含まれ、費用は20万円から50万円程度になります。重度の損傷でエンジンのオーバーホールが必要な場合は、エンジンを完全に分解して内部部品を交換・研磨する作業が必要となり、50万円から80万円程度かかります。最も高額なのがエンジン載せ替えで、エンジン全体を新品または中古のエンジンに交換する場合、部品代と工賃を合わせて30万円から100万円以上かかります。輸入車や高性能車の場合は、部品の入手が困難で価格も高いため、150万円を超えることもあります。修理期間も、軽微な修理なら数日、オーバーホールやエンジン載せ替えの場合は2週間から1ヶ月以上かかることがあります。
エンジンブローの修理費用を抑えるには、いくつかの方法があります。まず、複数の整備工場やディーラーで見積もりを取り、価格を比較することが重要です。同じ修理内容でも、工場によって工賃や部品価格に差があります。新品部品ではなく、リビルト部品(再生部品)や中古部品を使用することで、部品代を大幅に削減できます。特にエンジン本体の交換が必要な場合、中古エンジンやリビルトエンジンを選択すれば、新品の半額以下に抑えられることもあります。ただし、中古部品やリビルト部品を使用する場合は、品質や保証内容を十分に確認する必要があります。損傷の程度が軽微な場合は、エンジン全体を交換せず、必要な部品のみを交換する部分修理を選択することで費用を抑えられます。また、修理費用が車両の時価を大幅に上回る場合は、修理せずに廃車にして新しい車を購入したほうが経済的な場合もあります。
エンジンブローの修理費用は、車種によって大きく異なります。軽自動車や小型車の場合、エンジンの構造が比較的シンプルで部品も小さいため、修理費用は比較的低く抑えられる傾向があります。普通乗用車の場合、車種やエンジンの種類によって費用が変わりますが、国産車であれば部品の入手が容易で価格も比較的安価です。大型車やSUV、ミニバンなどは、エンジンサイズが大きく部品も高価なため、修理費用が高額になります。輸入車の場合は、部品を海外から取り寄せる必要があることが多く、部品代と輸送費が高額になります。また、専門的な知識と技術が必要なため、対応できる整備工場が限られ、工賃も高くなる傾向があります。高性能スポーツカーや旧車の場合、部品の入手が非常に困難で、特注や加工が必要になることもあり、修理費用が200万円を超えるケースもあります。車種によっては、修理よりも買い替えのほうが現実的な選択肢となることもあります。
エンジンブローの修理費用の見積もりを依頼する際は、いくつかのポイントに注意が必要です。まず、正確な見積もりを得るために、発生した症状や経緯を詳しく説明します。異音の種類、白煙や黒煙の有無、警告灯の点灯状況、直前に行ったメンテナンスの内容などを伝えることで、整備士が原因を特定しやすくなります。見積もりには、部品代、工賃、消費税、その他の諸経費が含まれているかを確認します。追加費用が発生する可能性があるかどうかも事前に確認しておくことが重要です。修理方法について、複数の選択肢(新品部品、リビルト部品、中古部品など)を提示してもらい、それぞれのメリットとデメリット、保証内容を比較検討します。修理期間の見込みや、代車の提供が可能かどうかも確認します。見積もりは必ず書面で受け取り、内容を精査してから修理を依頼します。不明な項目があれば遠慮なく質問し、納得した上で修理を開始してもらうことが大切です。
エンジンブローの修理費用は非常に高額ですが、定期的な予防メンテナンスを行うことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。エンジンオイル交換の費用は、軽自動車で3,000円から5,000円程度、普通車で4,000円から8,000円程度です。年に1〜2回のオイル交換を行えば、年間1万円程度の費用でエンジンブローのリスクを大幅に軽減できます。冷却水の交換は、2年に1回程度で5,000円から1万円程度かかります。エアフィルターやオイルフィルターの交換も、数千円程度の費用です。法定点検や車検時に、エンジンの状態をチェックしてもらうことで、異常を早期に発見できます。これらの予防メンテナンスにかかる年間費用は、多く見積もっても3万円から5万円程度です。一方、エンジンブローの修理費用は最低でも20万円、高額な場合は100万円以上かかります。予防メンテナンスの費用は、エンジンブロー修理費用の数十分の一であり、費用対効果は非常に高いといえます。
エンジンブローを予防するための最も重要なメンテナンスは、適切なエンジンオイル管理です。エンジンオイルの交換時期は、軽自動車なら半年または走行距離6,000km程度、普通自動車なら1年または走行距離10,000〜15,000kmごとが目安です。ターボ車や悪路走行が多い「シビアコンディション」の車は、オイルの劣化が早いため、より短い間隔での交換が必要です。オイル交換の際は、オイルフィルターも同時に交換することが推奨されます。定期的にオイルレベルゲージでオイル量を確認し、不足している場合は補充します。オイルの色や粘度もチェックし、真っ黒になっていたり、異常に粘度が高くなっていたりする場合は、交換時期に達していなくても早めに交換することが重要です。使用するオイルの粘度グレードは、車両の取扱説明書に記載されている推奨グレードを使用します。高品質なオイルを使用することで、エンジンの保護性能が向上し、エンジンブローのリスクを軽減できます。
エンジンブローを防ぐためには、冷却システムの定期的な点検と管理が不可欠です。冷却水のリザーバータンクの水位を定期的に確認し、MINとMAXの間に保たれているかをチェックします。冷却水が不足している場合は、推奨される種類のクーラント(冷却水)を補充します。水だけを補充すると、防錆効果や不凍性能が低下するため、必ず規定のクーラントを使用します。冷却水は2年に1回程度の交換が推奨されており、長期間交換しないと防錆効果が低下し、ラジエーター内部に錆や汚れが蓄積します。ラジエーターやホースからの冷却水漏れがないかを定期的に確認します。エンジン下部に緑色や赤色の液体が漏れている場合は、冷却水が漏れている可能性があります。ラジエーターキャップの密閉性も重要で、劣化している場合は交換が必要です。冷却ファンが正常に作動しているかも確認します。エンジンが高温になったときにファンが回らない場合は、ファンモーターやサーモスタットの故障が考えられます。
エンジンブローを予防するためには、日常的な運転習慣も重要です。エンジンを始動した直後は、エンジンオイルがまだ十分に循環していないため、いきなり高回転で走行するとエンジンに負担がかかります。始動後は1〜2分程度アイドリングし、エンジンが温まってから走行を開始することが推奨されます。急加速や急減速を避け、スムーズな運転を心がけることで、エンジンへの負荷を軽減できます。高速道路での長時間の高回転走行も、エンジンに熱負荷をかけるため、適度な休憩を取りながら走行することが重要です。MT車の場合は、シフトミスによるオーバーレブを避けるため、シフトチェンジは慎重に行います。特に高速走行中のシフトダウン時には、エンジン回転数を確認してから操作することが大切です。渋滞や信号待ちなどで長時間停車する場合は、エンジンへの負担を軽減するためにアイドリングストップを活用することも有効です。
エンジンブローを確実に予防するためには、プロによる定期点検が不可欠です。法定点検や車検の際には、エンジンの状態を専門家がチェックしてくれます。エンジンオイルの状態、冷却水の量と質、ベルト類の張りと劣化状態、ホース類のひび割れや劣化、各種センサーの動作状況などを総合的に点検してもらいます。異常が発見された場合は、早期に対処することで重大なトラブルを未然に防ぐことができます。定期点検では、エンジン内部の圧縮圧力を測定することで、ピストンやバルブの状態を確認できます。圧縮圧力が規定値より低い場合は、内部部品の摩耗が進行しており、早めの対処が必要です。また、エンジンの異音や振動についてもプロの目と耳でチェックしてもらうことで、素人では気づかない微細な異常を発見できます。点検費用は数千円から1万円程度ですが、この投資によってエンジンブローという高額なトラブルを防げるため、費用対効果は非常に高いといえます。
エンジンブローを予防するためには、ダッシュボードの警告灯に適切に対応することが重要です。エンジンチェックランプ(エンジン警告灯)が点灯した場合は、エンジンの電子制御システムに何らかの異常が検出されています。点灯したまま走行を続けると、エンジンに重大なダメージを与える可能性があるため、速やかに点検を受ける必要があります。油圧警告灯が点灯した場合は、エンジンオイルの圧力が低下しており、エンジンが焼き付く危険性があります。この警告灯が点灯したら、直ちに安全な場所に停車し、エンジンを停止してオイル量を確認します。水温警告灯が点灯した場合は、エンジンがオーバーヒートしている状態です。すぐに停車し、エンジンが冷えるまで待ってから冷却水の量を確認します。これらの警告灯は、エンジンの異常を早期に知らせてくれる重要な機能です。警告灯を無視して走行を続けることは、エンジンブローへの最短ルートといえます。警告灯が点灯したら、必ず対処することが大切です。