道路使用料と道路占用料は、名称が似ているため混同されやすいですが、実際には根拠となる法律、申請先、目的が全く異なる別々の制度です。道路使用料は正確には「道路使用許可申請手数料」のことで、警察署長に申請する際に一度だけ支払う手数料を指します。一方、道路占用料は道路管理者に対して占用期間中継続的に支払う使用料であり、公共の財産である道路空間を特定の人が排他的に使用することへの対価となります。
参考)道路使用許可と道路占用許可の違いは?
道路使用許可は道路交通法第77条に基づき、道路を交通以外の目的で一時的に利用する際に必要となります。工事や作業、イベント開催など、交通の安全と円滑を確保する観点から警察署長が許可を出します。これに対して道路占用許可は道路法第32条に基づき、道路管理者(国・都道府県・市町村)が道路の管理・保全の観点から許可を出します。
参考)【格安代行】道路使用許可/道路占用許可とは?申請手続きと違い…
両者の最も大きな違いは、道路使用許可が主に「行為」を対象とするのに対し、道路占用許可は継続的・排他的に使用する「モノ」の設置を対象としている点です。例えば、地中にガス管を埋設する工事を行う場合、埋設工事という行為には道路使用許可が、埋設されたガス管そのものには道路占用許可が必要になります。
参考)道路占用料とは?仕訳に使える勘定科目まとめ
道路使用許可を申請する際に必要な手数料は、都道府県によって異なりますが、おおむね2,000円から2,700円程度となっています。東京都では工事・作業に関する申請で2,700円、工事・作業以外の申請で2,100円の手数料が必要です。神奈川県では3号許可(露店等)で2,000円、埼玉県では2,500円となっています。
参考)道路使用許可、道路占用許可にかかる費用は? - 道路使用・占…
この手数料は申請時に支払う審査手数料であり、許可が下りなかった場合でも返却されません。都道府県によって支払い方法が異なり、東京都では納入通知書を会計課で支払う方式ですが、神奈川県や埼玉県では証紙を購入して申請書に貼り付ける方式を採用しています。
参考)【詳しく解説】道路使用許可申請書の書き方と申請方法
道路使用許可は原則として郵送やオンラインでの申請を受け付けておらず、申請書の提出と許可証の受け取りで平日に2回、管轄の警察署へ出向く必要があります。許可が下りるまでの期間は多くの警察署で中2日(土日祝日を除く)となっており、警察署によっては中1日のところもあります。
道路占用料は、公共の財産である道路空間の一部を特定の人が排他的・独占的に使用することに対する対価として、道路管理者が徴収するものです。この占用料は、占用によって占用者が得る利益に着目した性質を持っており、土地の貸付けに係る対価に該当します。
参考)道路占用許可制度について
占用料の徴収は道路法第39条に規定されており、道路管理権に基づくものです。一度徴収した占用料は返還されません。占用期間が1カ月以上の場合は消費税が非課税となりますが、1カ月未満の場合は課税対象となります。また、道路占用を申請する際の申請手数料そのものは、占用期間に関わらず非課税です。
道路占用料の金額は、一般的な土地利用における賃料相当額を徴収するという考え方から、民間における地価水準(固定資産税評価額)及び地価に対する賃料の水準の変動等を反映して決定されます。国土交通省のホームページで公開されていますが、不定期に改訂されるため、最新の情報を確認する必要があります。
参考)道路:道路占用制度 - 国土交通省
道路占用料の計算式は基本的に「道路価格×使用料率×占用面積(×修正率)」により算出されます。この方式は不動産の賃料算定における積算法(土地の時価に期待利回りを乗ずる方法)を参考としています。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/senyou_taika/pdf/2.pdf
道路価格は占用する場所の土地の価値を示し、近隣の土地の時価(固定資産税評価額や相続税路線価)を基に算定されます。使用料率は土地価格に対する年間賃料の割合のようなもので、国や各自治体が定めています。占用面積は占用する物件が占める面積や長さで、1㎡未満や1m未満の端数は切り上げられることが多く、上空の占用でもその真下の道路面への投影面積で計算されます。
具体例として、大阪府で看板設置のため道路占用を行う場合、1㎡あたり1年間の占用料は堺市と東大阪市以外の市で4,400円、堺市と東大阪市で26,000円となっています。占用料の額は物件の種類や地域によって異なり、電柱やガス管、突き出し看板などの「定額物件」と、地下街や高架下建築物などの「定率物件」に分類されます。年額で定められた占用料で1年に満たない期間の場合は月割りで計算し、1月に満たない端数がある場合は1月として計算します。
参考)道路を使用したいとき(道路使用許可・道路占用許可) - 広告…
道路使用許可が必要となるのは、道路において工事や作業を行う場合(1号許可)、石碑・銅像・広告板などを設置する場合(2号許可)、屋台や露店を出す場合(3号許可)、祭礼行事やイベントを行う場合(4号許可)などです。これらはすべて道路本来の目的である通行以外の使い方をする際に該当します。
参考)道路使用許可が必要なケース・不要なケース
申請は使用する道路を管轄する警察署で行い、所定の「道路使用許可申請書」に必要事項を記入して提出します。申請書には案内図、現場写真、道路使用見取図などの添付書類が必要で、通行止めを伴う場合は迂回路図や保安施設図なども必要となります。申請書と添付書類はそれぞれ2部作成して提出する必要があります。
参考)道路使用の手続/神奈川県警察
県内2以上の管轄にわたる道路使用については、出発地を管轄する警察署、または主に道路使用行為をする場所を管轄する警察署に申請します。道路使用許可と道路占用許可の両方が必要な場合には、各申請書を所轄警察署長または道路管理者の一方の窓口に一括して提出することができます。ただし、申請書の訂正や添付書類の不備がある場合には、改めて窓口に出向く必要が生じる可能性があります。
参考)道路使用許可申請手続 - 群馬県警 - 群馬県ホームページ(…
道路占用許可が必要となる代表的なケースは、電気・電話・ガス・上下水道などの管路を道路の地下に埋設する場合です。これは地下空間を継続的に使用するため、道路占用に該当します。また、建物から看板や日よけ、アーケードなどを道路の上空に突き出して設置する場合も道路占用許可が必要です。
参考)道路使用許可申請、道路占用許可申請とは?|サポート行政書士法…
工事用の足場や仮囲いを道路に一時的に設置する場合も、その期間中は道路を継続的に占用するため許可が必要となります。さらに、電柱、変圧塔、郵便ポスト、広告塔などの地上施設や、地下街の建設のように道路の上下の空間を使用する場合も含まれます。
参考)道路の占用について - 群馬県ホームページ(道路管理課)
道路占用許可を得るためには、占用しようとする物件が道路の構造・交通に著しい支障を与えないものであることなど、占用許可基準に適合していることが必要です。例えば、看板を突き出して設置する場合、最下部と路面との距離が車道で4.5メートル以上、歩道で2.5メートル以上という高さの基準があり、出幅は官民境界から1メートル以内という制限があります。
参考)道路占用について
道路占用許可の申請は、国が管理する道路の場合、書面による申請と道路占用システムを利用したオンライン申請のいずれかの方法で行うことができます。地方公共団体が管理する道路については、各自治体の窓口に直接または郵送で提出する方法が一般的です。
参考)道路占用許可申請についてhref="https://www.city.tsukubamirai.lg.jp/jyumin/soudan-service/page006583.html" target="_blank">https://www.city.tsukubamirai.lg.jp/jyumin/soudan-service/page006583.htmlamp;nbsp;
申請の一般的な流れは、まず現場の測量を行い、次に道路管理者の窓口で事前相談を実施します。その後、道路占用許可申請書に必要書類を添付して提出し、審査を経て許可書が交付されます。許可が下りた後、占用料が発生する場合は占用料を納入し、工事を伴う場合は完了後に道路占用工事完了届を提出します。
参考)【道路使用許可・占用許可】申請の流れ
許可が下りるまでには時間がかかるため、占用しようとする1か月前までに申請書を提出することが推奨されています。自身で初めて申請する場合は4週間から6週間程度、専門家に依頼する場合は3週間から4週間程度が目安となります。交通規制を行う場合は、道路工事実施協議書(警察署宛て)や道路工事届出書(消防署宛て)の提出も必要になります。
工事用足場の設置や道路掘削を伴う埋設工事など、一部のケースでは道路使用許可と道路占用許可の両方が必要になります。例えば、地中にガス管を埋設する工事を行う場合、ガス管の敷設に関しては占用期間に応じた道路占用料が必要ですが、埋設工事という行為に関しては道路を使用する日数に応じた道路使用料(申請手数料)も必要になります。
申請の順序は一般的に道路使用許可、道路占用許可の順となりますが、地域や道路管理者によっては道路占用許可、道路使用許可の順になる場合もあります。事前に道路占用希望場所の道路管理者に問い合わせて確認することが重要です。都内の場合、市道は市役所、都道は建設事務所、国道は国土交通省が道路管理者となります。
両方の許可が必要な場合、各申請書を所轄警察署長または道路管理者の一方の窓口に一括して提出できる制度があります。この制度を利用すれば、複数の窓口を回る手間を省くことができます。ただし、申請内容に不備があった場合は、改めて各窓口に出向く必要が生じる可能性があるため、事前の準備を十分に行うことが大切です。
日常的な道路の利用については道路使用許可は不要です。歩行者や車両の通常の通行など、道路本来の目的に従って道路を使用する「一般的使用行為」の場合は許可を必要としません。また、火災や事故など緊急事態に対応するための活動は、迅速な対応が求められるため許可を取得する必要がありません。
住宅前のごく短時間の清掃や軽微な補修作業など、短期間かつ軽微な工事や作業も許可が不要となる場合があります。ただし、これらの作業でも交通に影響を及ぼす可能性がある場合は、事前に確認することが望ましいです。
会計処理の面では、道路占用料を支払った場合、業務上必要な費用であれば経費として計上できます。仕訳に使用する勘定科目は「賃借料」や「地代家賃」が一般的で、金額が少ない場合は「雑費」の勘定科目を用いることもあります。道路占用料は土地の貸付けに係る対価に該当するため、占用期間が1か月以上の場合は消費税が非課税となります。
参考)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/05/01.htm
国土交通省の道路占用制度ページ - 占用料の基本的な考え方と最新の制度情報が掲載されています
警察庁の道路使用許可の概要ページ - 許可が必要なケースと申請手続きの詳細が確認できます